著者
藤林 勢世 深田 真宏 村瀬 勝俊 久野 真史 東 敏弥 田中 善宏 奥村 直樹 高橋 孝夫 松橋 延壽
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.496-503, 2023-09-01 (Released:2023-09-28)
参考文献数
22

症例は66歳の男性で,膵尾部の神経内分泌腫瘍に対して腹腔鏡下膵尾部切除術を施行した.術後2日目に突然の背部痛が出現し,緊急造影CTにて右前腎傍腔の血腫と前下膵十二指腸動脈瘤を認めた.術前には認めなかった腹腔動脈起始部狭窄(celiac axis stenosis;以下,CASと略記)が出現しており原因と考えられた.腹部血管造影下に上腸間膜動脈からアプローチをして前膵十二指腸動脈に対して選択的にコイル塞栓術を施行した.再出血なく術後33日目に退院となった.術後3か月の造影CTではCASは消失しており急性正中弓状靭帯症候群(acute median arcuate ligament syndrome;以下,AMALSと略記)の発症が疑われた.今回,我々は腹腔鏡下膵尾部切除術後にAMALSが原因と考えられるCASにより前膵十二指腸動脈瘤破裂の1例を経験したため報告する.
著者
坂下 文夫 高橋 孝夫 田中 秀典 小森 充嗣 松井 聡 長田 真二
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1262-1265, 2007-05-25

今回, 血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP) の治療中に発生した気腫性胆嚢炎の1例を経験した. 患者は57歳の男性. 動揺性の意識障害, 溶血性貧血, 血小板減少, 腎障害をきたし, TTPと診断した. 血漿交換, 血液濾過透析, ステロイドパルス療法を中心とする集学的治療にて状態は改善し, その後安定していた. 入院30日目の朝, 心窩部痛にて目が覚めた. 鎮痛剤を使用したが腹痛は持続し, 腹膜刺激症状が出現してきた. CTにて気腫性胆嚢炎と診断して, 経皮経肝胆嚢ドレナージ (PTGBD) を施行した. しかし, ドレナージ後も全身状態が悪化していったため, 胆汁性腹膜炎を併発していると診断して緊急手術を行った. 開腹し, 暗赤色に緊満した胆嚢を摘出し腹腔内のドレナージを行った. 術後は順調に経過して, 術後11日目に血液内科に転科した.