著者
大槻 郁人 高桑 一登 佐藤 順一 高橋 広巳 荒川 穣二
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.11, pp.941-946, 2013-11-15 (Released:2014-01-07)
参考文献数
9

症例は慢性血液透析中の83歳の男性。意識消失のため午前2時に当院へ救急搬送された。搬入時の血糖値は22mg/dlと低値であり,50%ブドウ糖を20ml静脈内投与した。血糖値は128mg/dlへ上昇し意識状態の改善を認めた。糖尿病の既往はなく,精査加療目的に入院した。入院後10%ブドウ糖を20ml/hrで持続投与していたが,入院5時間後再度意識障害が出現し血糖値は32mg/dlと低血糖を認めた。内服薬についてかかりつけ医に問い合わせたところ,当院搬入10日前の透析中に心室頻拍が出現したため,透析患者には禁忌と認識していたが,危険な不整脈に対して使用する旨を本人に説明しコハク酸シベンゾリン(以下CZ)100mgを5回分頓用で処方していた。来院時には全て内服しており,CZによる薬剤性低血糖を疑い,より高用量のブドウ糖の持続投与を行った。ブドウ糖投与とともに血糖値は上昇し意識障害は改善した。第8病日に来院時のCZ血中濃度は1,330ng/mlと異常高値であることが判明し,CZによる低血糖と診断した。CZの血中濃度が中毒域を下回り,重篤な低血糖を来さなくなるまで5日間を要した。CZは透析で除去されにくいとされており,本症例も12日間の入院管理が必要であった。慢性血液透析患者におけるCZ中毒は低血糖などの副作用が遷延する可能性があり,入院による厳重な管理を要する。
著者
升田 好樹 七戸 康夫 表 哲夫 高橋 広巳 小瀧 正年 並木 昭義
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.777-780, 1992 (Released:2008-12-11)
参考文献数
9

キシロカインゼリー®によるアナフィラキシーショックを経験した.症例は51歳男性,中咽頭腫瘍術後,下顎骨骨折のため観血的整復術を予定した.既往に麻酔薬によるアナフィラキシーショックがあった.挿管困難が予測され,経鼻挿管のため鼻腔内にキシロカインゼリー®を注入し,経鼻用エアウェイを挿入したところショック状態となった.気管内挿管を試みたが心室細動となり,ただちに輸状甲状間膜切開を行ない,直流除細動により心拍再開し,なんら後遺症なく回復した.皮内テストではメチルパラベンが疑陽性,カルボキシメチルセルロースナトリウムが陽性であり,アレルギー反応の原因として添加物を考慮する必要性を痛感した.