著者
高橋 方子 布施 淳子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1_49-1_60, 2014

目的:在宅療養高齢者の終末期医療における意思の尊重は重要であるが,意思を尊重するうえで,自己表現を十分なし得ない高齢者の意思を如何に把握するかが今後の課題である。本研究は,在宅療養高齢者の終末期医療の意思把握に訪問看護師が必要なコア情報の特定を目的とした。 方法:訪問看護師5人に対する面接調査結果およびバリューズヒストリーの内容をもとに,意思把握に必要な情報として57項目を抽出し,訪問看護師756人を対象に郵送法にて調査を実施した。有効回答率は14.2%(107人)だった。これらの情報について探索的因子分析を行い,得られた結果をもとに高次モデルを作成して,検証的因子分析により適合度を検討しコア情報の特定を行った。 結果:探索的因子分析の結果,11項目3因子が抽出された。意思把握を二次因子,抽出された3因子を一次因子とする高次モデルを仮定したところ,適合度指数はGFI= .909,AGFI= .835,CFI= .947,RMSEA= .057と良好な値であった。 結論:本研究の結果, "悔いなき終焉" "つつがない暮らし" "生き方の手がかり" の3因子がコア情報とてして特定された。
著者
鈴木 康宏 菅谷 しづ子 高橋 方子
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University Bulletin of Chiba Insitute of Science (ISSN:24362565)
巻号頁・発行日
no.15, pp.15-22, 2022-03-28

【目的】看護観に対する看護理論の影響に関する看護師の認識とその理由について明らかにすることである。【方 法】病院で働く看護師を対象とし2019年2月~3月にMicrosoft formsを用いたWeb調査を実施したアールアンドディの病院年鑑2018年版の東日本版で一般病床数200床以上の施設から無作為に200施設選び依頼し承諾があり配布可能数が確認できた9施設計970名に配布した質問項目は年代,経験年数,性別,資格,看護師養成課程,学習した看護理論,看護観に対する看護理論の影響に関する看護師の認識(「看護理論はあなたの看護観に影響を与えたと思いますか?」)その回答理由(自由記述),看護理論以外に看護観に影響を与えたもの(自由記述), 看護 観(自由記述),単純集計およびχ2検定を行い自由記述の分析はKH Coderを用いて分析した倫理的配慮として研究者所属機関で倫理審査を受け回答により研究同意とみなすことを書面にて説明した。【結果】131名分のデータを用いて分析した「看護理論はあなたの看護観に影響を与えたと思いますか?」という設問に対して「思う」,「思わない」,「わからない」と答えた3群を背景によりχ 2検定した結果統計的な違いは認められなかった看護理論以外に影響している特徴語は〈患者〉,〈経験〉,〈先輩〉,〈関わり〉,〈体 験〉,〈臨床〉,〈家族〉,〈自分〉,〈実習〉であった。【考察】対象の背景により看護観に対する看護理論の影響に関する看護師の認識に統計的な違いは認められなかったが、理由について特徴的な語が明らかとなった それぞれの回答の理由より看護師本人の解釈が回答に影響していたと考えられる。【結論】看護観に対する看護理論の影響に対する看護師の回答の割合と対象の背景には統計的な違いは認められなかった。看護理論が看護観に影響を与えた理由についての特徴的な語が明らかとなった.
著者
高橋 方子 菅谷 しづ子 鈴木 康宏 石津 みゑ子 布施 淳子 高橋 和子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.5_771-5_782, 2017-12-20 (Released:2017-12-27)
参考文献数
31

目的:本研究はわが国の事情に即したバリューズヒストリーの開発を目的とした。バリューズヒストリーは終末期医療の意思決定の根拠となる価値観を示す価値観歴である。方法:訪問看護師に対する面接調査および米国のバリューズヒストリーから作成した項目について,デルファイ法による質問紙調査を実施した。対象は訪問看護認定看護師397人・在宅看護専門看護師21人の合計418人とした。結果:「健康上の問題と向き合う姿勢」「健康上の問題に対する医師からの説明内容」「余命についてどう思っているかとその理由」「自分の意思決定の特徴」「自分のコミュニケーションの特徴」など35項目が日本版バリューズヒストリーとして選択された。考察;日本版バリューズヒストリーは,病名や病気の見通しなどについて本人に事実を伝えるとは限らないわが国の状況や,周囲の人の状況や調和を優先するといった日本人の意思決定の特徴が反映されていると推察された。