著者
高橋 明子 石田 敏郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_69-I_79, 2011 (Released:2012-03-30)
参考文献数
18

建設業での死亡災害事例を分析した先行研究により,建設作業現場におけるコミュニケーションエラーの発生パターンは記号化・メッセージ型,媒体型,理解型に分類された.これらの結果を基とし,本研究では建設作業従事者を対象とした質問紙調査を実施することにより,建設作業従事者のコミュニケーションエラーのリスクの程度に関する認識と職位間の認識の差異の検討を行った(n=811,管理者149名,職長208名,作業員454名).その結果,管理者はコミュニケーションエラーの全パターンのリスクを比較的高く評価した.一方,職長及び作業員は比較的類似した評価をし,パターンによってリスクの評価が異なった.また,コミュニケーションエラーの背後要因に関しては,「作業前の打ち合わせ不十分」「確認不足」が全パターンに共通して回答率が高く,職位間に認識の差異は見られなかった.さらに,職位間で回答率に有意差の見られた複数の背後要因について作業員の認識の低さが指摘された.建設作業現場における労働災害防止に役立てるためには,管理者がコミュニケーションエラーのリスクに関して職位間で認識が異なることを理解し,コミュニケーションエラー防止対策を検討する必要性がある.