著者
三好 真琴 宇佐美 眞 藤原 麻有 青山 倫子 前重 伯壮 高橋 路子 濵田 康弘
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.915-921, 2013 (Released:2013-08-23)
参考文献数
23
被引用文献数
1

近年、腸内フローラは肥満やメタボリックシンドロームに関与する環境因子として注目されている。腸内フローラは、未消化食物成分を代謝し、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸などを宿主に供給しており、その機序の一つとして腸内分泌細胞のI細胞やL細胞上の栄養受容体が関与している。脂肪酸レセプターは、短鎖脂肪酸がGPR41、GPR43、中鎖、長鎖脂肪酸がFFAR1、GPR120と近年同定された。特に腸内フローラの代謝物である短鎖脂肪酸はレセプターやトランスポーターMCT-1を介して多様な機能を発揮し脂質代謝へも効果を及ぼすと考えられている。さらに、短鎖脂肪酸の代謝仮説に基づいて腸内フローラと脂質濃度の関連を解析した我々の結果を交えて、腸内細菌と脂質代謝について概説する。腸内フローラと多価不飽和脂肪酸の関連が新たに得られ、更なる検討が必要であろう。
著者
高橋 路子 高橋 裕
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

私たちは新規アディポカインとしてケマリンを同定した。ケマリンはChemR23のリガンドで炎症を制御するケモカインでもあることが明らかにされている。一方アディポカインとしての代謝調節作用もあり、代謝と炎症を結びつける因子として注目を集めている。ノックアウト(KO)マウスの解析から、ケマリンが膵β細胞におけるグルコース依存性インスリン分泌、肝臓、筋組織におけるインスリン感受性、脂肪組織における炎症を調節することにより糖代謝において重要な役割を果たしていること、さらに日本人糖尿病患者において血中濃度が低下しており、ヒトにおいても糖尿病発症に関連している可能性を報告してきた。本研究では主にケマリンKOマウスを用いて代謝と炎症の調節機構を解明するとともに、患者検体を用いて炎症性疾患における脂質メディエーターとの関連および炎症の収束機転におけるケマリンの役割を明らかにすることを目的とする。ケマリンの受容体であるChemR23を共通の受容体としているレゾルビンE1をはじめとする脂質メディエーター等を神戸大学質量分析総合センターの液体クロマトグラフ質量分析システム(Sciex 6500Qtrap)や脂肪酸の分離に優れた極性の高いカラム(SIGMA-ALDRICH SP2560カラム)を実装したガスクロマトグラフ質量分析装置(島津製作所QP2010Ultra)を用いて測定、解析している。その結果、ノックアウトマウスの血中、白色脂肪組織中には炎症性のプロスタグランジンD2とE2が上昇し、白色脂肪組織において抗炎症性のレゾルビンD1が低下していることが明らかとなった。現在はヒトにおいてもケマリンの代謝、炎症性疾患における脂質メディエーターとの関連および炎症の収束機転におけるケマリンの役割について解明をすすめている。