著者
高橋 邦行
出版者
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌 (ISSN:21880077)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.63-68, 2019

<p>悪性外耳道炎とは,壊死性外耳道炎,高齢糖尿病患者,緑膿菌感染を3徴とする難治性感染症として知られていた.現在では細菌感染が側頭骨を中心に周囲に拡大,さまざまな脳神経症状を呈し,致死的となることから,頭蓋底骨髄炎と呼ばれる. </p><p>本疾患の症状は強い頭痛が多く,CRP値などの炎症反応が高くなりにくいことに注意する.他疾患との鑑別が重要であり,悪性腫瘍,結核性中耳炎,ANCA関連血管炎性中耳炎は常に念頭におく.画像所見では骨条件CTで皮質骨の連続性の破綻,MRI T1強調画像で骨内部の低信号化が特徴に挙げられる.治療は6~8週程度の抗菌薬静脈投与を基本とするが,さらに長期の抗菌薬投与も行われる.本疾患は高齢者に多く発症することから,全身状態を考慮した抗菌薬の選択や,長期入院加療による日常生活動作,認知機能の低下にも注意が必要であり,薬剤師,看護師,理学療法士,ソーシャルワーカーなどとの連携も重要である. </p>
著者
高橋 邦行
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = Niigata medical journal (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.132, no.11, pp.369-375, 2018-11

側頭骨は聴覚,平衡覚のセンサーなどの精密器官や,重要な神経,血管を内部に含む.一方で中耳炎などの炎症疾患が生じやすい部位であり,炎症制御や聴力改善を目的とした手術が行われる.側頭骨手術は,術野が狭い顕微鏡下の手術であること,一度重要構造物を損傷すると不可逆的になることなどの理由から,手術を行う際には三次元的な解剖の熟知が必須であり,難易度の高い手術と考えられていた.しかし近年,さまざまな模擬手術を行うことができるデバイスが発展し,実際の手術以外からも側頭骨解剖を学ぶことができる機会が増えてきた.現在ではカダバー,バーチャルリアリティー,3Dモデルを使用した側頭骨手術トレーニング,シミュレーションが可能であるが,それぞれ利点,欠点が存在する.そのうち3Dモデルは特に有用であり,高いトレーニング効果がみられる.コスト面や手間の問題が解決されることで,3Dモデルは今後さらに普及することが予想され,安全で確実な側頭骨手術に貢献できると期待される.