著者
池上 将永 荒木 章子 増山 裕太郎 空間 美智子 佐伯 大輔 奥村 香澄 高橋 雅治
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.223-231, 2020 (Released:2020-10-01)
参考文献数
32

遅延時間に伴う報酬価値の割引を遅延割引と呼ぶ.遅延割引は即時小報酬への選好を予測することから,衝動性の指標とされている.本研究では,ADHD児およびASD児の衝動性を評価するために,児童用遅延割引質問紙を用いてADHD児とASD児の遅延割引率を測定した.また,得られた割引率の妥当性を確認するために,日常場面における自己制御質問紙と割引率の関連性を検討した.自己制御質問紙において即時小報酬を選択した参加児は遅延大報酬を選択した参加児よりも有意に高い割引率を示し,割引率の妥当性が確認された.ADHD群とASD群の割引率に有意な差はみられなかったが,定型発達児で報告されている値よりも大きいことから,ADHD児とASD児は衝動性が高い傾向があると考えられた.ADHD群において割引率は年齢と負の相関を示し,加齢とともに割引率が低下する可能性が示唆された.本研究の結果,ADHD児やASD児の衝動性を評価する際に,割引率が有用な指標となることが示唆された.
著者
高橋 雅治
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.9-28, 1997-06-30

本論文では、選択行動に関するオペラント研究における最近の展開が概観される。特に、対応法則、遅延低減仮説、セルフ・コントロール、および、リスク選択に関連する研究に重点が置かれる。これまでに提案された選択行動のモデルのいくつかは、人間以外の動物(ほとんどの場合、ハト)を被験体として行われた研究から得られたデータをうまく記述することができるように思われる。だが、人間を被験者として行われた研究から得られたデータのなかには、それらのモデルによって説明することができないものもある。従って、選択行動の定量的なモデル化に関する今後の研究は、人間と人間以外の動物の差異の説明に取り組んでいかなければならないことが示唆される。