著者
鈴木 菜生 岡山 亜貴恵 大日向 純子 佐々木 彰 松本 直也 黒田 真実 荒木 章子 高橋 悟 東 寛
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.255-259, 2017 (Released:2017-07-12)
参考文献数
18
被引用文献数
3

【目的】不登校児の発達特性と転帰に影響する因子を検討した. 【方法】2007年から2009年に当センターを受診した不登校児80名の発達障害や精神疾患の有無, 在籍学級, 転帰等を調査した. 【結果】不登校児の57%が広汎性発達障害や注意欠陥/多動性障害などの発達障害を, また24%が不安障害などの精神疾患を有していた. 87%が不登校になって初めて発達障害と診断された. 91%に睡眠障害や頭痛などの身体愁訴を認めた. 不登校となった誘因は複数混在し, 対人関係の問題を契機とする例が最も多かった. 1年後の転帰は完全登校48%, 部分登校26%, 不登校26%だった. 小学生は60%が完全登校に至ったが, 中学・高校生は41%に留まった. 1年後不登校の割合は, 発達障害をもたない児で42%であったのに対し発達障害を有する児では17%で, 特別支援学級へ転籍した児では1例もなかった. 【結論】不登校児は発達障害や精神疾患を背景に持つことが多く, 登校転帰の改善には発達特性の把握と教育的・心理的な支援が有用である可能性が示唆された.
著者
池上 将永 荒木 章子 増山 裕太郎 空間 美智子 佐伯 大輔 奥村 香澄 高橋 雅治
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.223-231, 2020 (Released:2020-10-01)
参考文献数
32

遅延時間に伴う報酬価値の割引を遅延割引と呼ぶ.遅延割引は即時小報酬への選好を予測することから,衝動性の指標とされている.本研究では,ADHD児およびASD児の衝動性を評価するために,児童用遅延割引質問紙を用いてADHD児とASD児の遅延割引率を測定した.また,得られた割引率の妥当性を確認するために,日常場面における自己制御質問紙と割引率の関連性を検討した.自己制御質問紙において即時小報酬を選択した参加児は遅延大報酬を選択した参加児よりも有意に高い割引率を示し,割引率の妥当性が確認された.ADHD群とASD群の割引率に有意な差はみられなかったが,定型発達児で報告されている値よりも大きいことから,ADHD児とASD児は衝動性が高い傾向があると考えられた.ADHD群において割引率は年齢と負の相関を示し,加齢とともに割引率が低下する可能性が示唆された.本研究の結果,ADHD児やASD児の衝動性を評価する際に,割引率が有用な指標となることが示唆された.
著者
荒木 章子 大日向 純子 鈴木 菜生 岩佐 諭美 雨宮 聡 田中 肇 藤枝 憲二
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:18847668)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.370-374, 2008

北海道旭川市において, 3歳児健診受診児の保護者に対し, 子どもの睡眠習慣に関するアンケート調査を行った. 受診者450名のうち404名 (90.4%) から回答を得た. 就床時刻は平均21.4時で, 22時以降は36%であった. 起床時刻は平均7.5時であった. 夜間睡眠時間は平均10.1時間で, 就床時刻が22時以降の児は22時以前と比べて, 有意に夜間睡眠時間が短かった (p<0.01). 午睡をとる児の12%は終了時刻が17時以降で, それらの児の平均就床時刻は22.1時であった. 就床時刻の遅延は, 食欲低下やカッとなって怒りっぽいという愁訴と関係があった (いずれもp<0.05). 保護者は就床環境に対して高い意識を示すが, 日中の活動性や午睡への意識は低かった. 25%の保護者は子どもの睡眠に問題を感じていたが, 医師への相談はわずか3%であった. 睡眠リズムの確立は, 心身の健全な発達と関係があり, 医療機関は積極的に啓発活動する必要がある.
著者
安齊 祐美 荒木 章子 牧野 昭二 中谷 智広 山田 武志 中村 篤 北脇 信彦
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.74-85, 2012-02-01
被引用文献数
1

本論文では,音源信号のスパース性に基づき,時間周波数バイナリマスク(BM)を用いる音源分離手法におけるミュージカルノイズの低減を目的とした,分離音声のケプストラムスムージング(CSS)を提案する。CSSは,近年提案されたスペクトルマスクのケプストラムスムージング(CSM)で用いられるケプストラム領域でスムージングする考え方と,ケプストラム表現による音声特性の保持の制御という観点では,マスクではなくBMによって得られた分離音声を直接スムージングする方が好ましいという仮説とに基づいている。また,従来法(CSM)や提案法(CSS)と他のミュージカルノイズ低減手法の性能を実験により比較する。CSSでは,CSMと同程度のミュージカルノイズ低減性能を有し,更に目的音声の歪の小さい分離信号が得られた。
著者
澤田 宏 荒木 章子 牧野 昭二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.292-296, 2008-04-01
被引用文献数
4

音源分離技術は,実環境におけるハンズフリー音声認識やコンピュータによる音環境理解のために必要不可欠な技術である.音源の位置や話者の特徴など,事前知識を必要としない,いわゆるブラインド処理に関する技術がこの10年で大きく進展した.本稿では,独立成分分析やスパース性など,ブラインド音源分離に必要な基本技術を分かりやすく解説し,研究動向や現状での到達点を述べる.