著者
高江洲 頼子 狩俣 繁久
出版者
沖縄大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

この研究は、琉球語諸方言のなかから個別の方言を選び、それぞれ担当者が文法について調査・研究することを目的とした。調査地点はこの研究期間をとおして、文法調査が可能な方言話者の存在、これまで文法の記述がされていない方言という条件等から最終的に、沖縄県渡名喜島方言、沖縄県宮古市城辺字保良方言、鹿児島県大島郡大和村方言、鹿児島県徳之島伊仙町方言、沖縄県今帰仁村謝名方言、名護市幸喜方言にしぼりこまれた。実際の調査においては、方言話者の減少、方言の使用場面の減少、方言の急速な変化が、難しい丈法の記述をさらに困難にした。被調査者の理解と協力によって、体系的な形態論の記述をすることができ、研究報告としてまとめることができた。調査の内容は、動詞、形容詞について活用の全体のシステム、各文法形式の作り方、文法的な意味・用法を、用例とともに記述することである。とくに形態論的なカテゴリーの中核をになう動詞を中心に調査・研究をすすめた。研究のおくれている文法の分野において、消滅の危機に瀕している方言のうち、6地点について文法の体系的な記述をすることができた。形容詞については、今回はまとまった調査資料の収集が可能な方言について、報告することとした。琉球語の研究は、今後、ますます調査が困難になり、資料が得られなくなると予想される。この研究では、用例をできるだけ収集し、今後の研究にも提供するものでありたいと考えた。また、当初、収集した資料のデータベース化と公開について考えていたが、これについては今後の課題としたい。