著者
土屋 敦 大畑 尚子 渡部 麻衣子 高田 史男
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.47-57, 2008-09-21

本稿では、全国社会意識調査(N=3402)から、エンハンスメント論の中でも特に主題となることの多い、「体力や身体能力」「頭のよさ(知能)」「老化」の各カテゴリーに対する日々の日常的関心度および遺伝学的エンハンスメント(Genetic Enhancement)に対する意識の度合いを従属変数とし、基礎属性・家族変数、及び遺伝意識変数(遺伝子決定感)の因子分析結果を独立変数とする二項ロジットモデル(比較モデル)を組み立て、遺伝子技術利用のエンハンスメント領域への活用に対する意識の特性を析出した。結果、日常的関心度には性別・年齢・学歴がその意識の形成・規定要因として大きく寄与していた一方で、遺伝学的エンハンスメントには、性別および就業形態の影響が高いという意識の構造的差異が析出された。また、遺伝学的エンハンスメントに対しては、遺伝子決定感に関する「身体・外面性因子(第一因子)」および「医療因子(第四因子)」がその意識の形成・規定要因として寄与している、という、遺伝子決定感内部での効果の差異が明らかになった。