- 著者
-
高田 毅士
- 出版者
- 日本信頼性学会
- 雑誌
- 日本信頼性学会誌 : 信頼性 = The journal of Reliability Engineering Association of Japan (ISSN:09192697)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.2, pp.84-89, 2010-03-01
- 参考文献数
- 10
構造物,設備や部品から観測データや試験データが入手できれば,これらの性能の評価精度は向上する.これにはベイズの更新理論(Bayesian Updating Theory)が有効であることはよく知られている.具体的には,対象物の保証試験(Proof test)による試験データあるいは無被害データ(大きな力を受けても壊れなかったという事実)を有効に利用できる.また,構造物に作用する外荷重の評価においても建設地点固有の観測データが得られれば容易にベイズ更新理論を応用してより精度の高い予測を行うことができる.本解説ではこれらの応用例を紹介する.まず,保証截荷試験を構造信頼性理論の視点から論じ,構造部材の耐力に関する試験データという新しく獲得された情報を用いて対象部材の信頼性を評価した場合,試験実施の効果について論じている.ベイズの更新理論の応用例として,近年,高密度に配備されてきた全国地震観測網で観測される地震動データを活用して,観測点固有の地震動予測式を構築することができ,その有用性について紹介している.いずれの応用においても,貴重なデータを最大限に活用しようとする試みであり,試験や観測実施のインセンティブとなることを願っている.