著者
高谷 幸
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.124-140, 2009-06-30 (Released:2010-08-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

1990 年代頃から議論されるようになった「公共圏」論は,同一性を基盤としない政治空間の可能性を模索してきた.この中で,マイノリティによる支配的な社会構造への対抗を強調する対抗的公共圏や同一性を基盤としない共同性である創発的連帯のあり方が議論されてきた.しかしこのような創発的連帯が,あるカテゴリーにもとづく対抗的公共圏として現象することは,いかに可能だろうか.本稿で検討した,非正規滞在移住労働者を組織化してきた全統一では,創発的連帯と脱国民化された公共圏は,一方で移住労働者の生活にかんする要求を充たす社会圏と,移住労働者に「労働者」としての規範を内面化させる親密圏を基盤にすることで成立していた.つまり社会圏に集まる数多くの移住労働者は,規範の共有にかかわらず公共圏に「動員」される.同時に,親密圏の位相で「労働者」の規範を内面化した少数の移住労働者は公共圏に現れ,脱国民化された「労働者」という対抗性を表現していた.こうして全統一では,同一性を基礎としない創発的連帯が公共圏内部で生み出されながらも,外部から見れば「労働者」の脱国民化された対抗的公共圏が現象していた.つまりアイデンティティ・ポリティクスに陥らないかたちでの対抗的公共圏は,複数性と対抗性が公共圏の内部と外部で区分されることで可能になっている.
著者
高谷 幸司
出版者
社団法人日本鉄鋼協会
雑誌
鐵と鋼 : 日本鐡鋼協會々誌 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.90, no.10, pp.751-757, 2004-10-01
参考文献数
41
被引用文献数
8

電磁撹〓と電磁ブレーキは,その基本的な動作として,電磁撹〓は能動的で流動促進作用,電磁ブレーキは受動的で流動抑制作用を特徴とするが,両者ともに近年の連続鋳造設備の多くに設置され,高生産性かつ高品質の鋳片製造に効果を発揮している。その選択は状況次第であるが,その動作特性から考えて,薄スラブマシンに代表されるより高速な連続鋳造の実現には電磁ブレーキ,表面品質が問題となる比較的低速なマシンにはメニスカス電磁撹〓の採用が適切な選択と考えられる。また,浸漬ノズルの形状についても,今なお多くの改善が継続されており,ノズル閉塞防止技術と併せて今後の進展が期待される。さらに,今後の技術として軟接触鋳造の商用化に期待がかかるものの解決すべき課題は多い。<BR>適切な流動制御を行うには,磁場の効果を含めて,鋳型内の流動・伝熱現象と鋳片に発生する種々の欠陥との定量的関係のさらなる解明が必要である。複雑な現象の解明と新たなアイデアで,更なる高生産性かつ高品質な鋳片製造技術が確立されることを願ってやまない。