著者
柴田 博仁 高野 健太郎 田野 俊一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.2131-2141, 2016-09-15

本稿では,タッチ操作可能なタブレット端末での読みの評価をとおして,テキストをポインティングしたりなぞったりする行為(テキストタッチと呼ぶ)が,読みに与える影響を分析する.特に,文書内容を批判的に考察するアクティブリーディングにおけるテキストタッチの効果を検討する.最初の実験では,紙文書とタブレット端末での校正読みのパフォーマンスを比較する.結果として,タブレット端末よりも紙文書で読むほうが多くの誤りが検出された.ビデオ分析の結果,参加者は紙で読む際に頻繁にテキストタッチを行っており,テキストタッチの頻度と誤り検出率に正の相関が観察された.このことから,テキストタッチは校正読みを効果的に支援しており,タブレット端末ではテキストタッチが促進されないために誤り検出率が低下したことが考えられる.この仮説を検証するため,第2の実験では,紙文書へのインタラクションを制限して文書校正を行う実験を行った.結果として,文書に自由に触りながら読むことが許される条件に比べて,文書に触らずに読む条件で有意に誤り検出率が低下し,テキストタッチは読みのパフォーマンスに影響を与える重要な要因であることが分かった.この結果をふまえ,タッチ操作可能なタブレット端末でのアクティブリーディングの支援方法を議論する.
著者
高野 健太郎 大村 賢悟 柴田 博仁
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.4, pp.1-8, 2011-01-14
被引用文献数
3

本稿は,電子書籍端末の読みやすさを評価することを狙いとする.26 名の被験者に紙の書籍,iPad,Kindle,ノート PC を用いて短編小説を読んでもらい,読書速度,読書時の認知負荷,メディアに対する主観評価の観点から読みやすさを比較した.結果として,第 1に,ページめくりを含まない場合は 4 種類のメディアでの読書速度は同水準であり,ページめくりを含む場合は Kindle とノート PC に比べて紙の書籍と iPad での読みは有意に速かった.第 2に,NASA-TLX を用いた読書時の認知負荷の測定の結果,4 種類のメディア間に認知負荷の有意な差は認められなかった.最後に,メディアに対する主観評価では,iPad の評価は表示品質,操作性,読書端末としての総合評価では肯定的な評価であり,読書時の疲労やメディアの重量に対しては否定的な評価であった.一方,Kindle の評価は表示品質や読書時の疲労,メディアの重量に対しては肯定的な評価であったが,操作性や読書端末としての総合評価では否定的な評価であった.また,いずれの主観評価項目でも紙の書籍は,異なるメディアのなかで最も高い評価を得た.This paper aims to evaluate readability of electronic books. Twenty six subjects read short stories using paper books, iPad, Kindle, and a notebook PC. We evaluated readability through an experiment comparing reading speed, cognitive load, and subjective evaluation. At first, no significant differences were found in the reading speed between the four media in the case of reading without turning pages. However, in the case of reading that includes turning pages, subjects read with paper books significantly faster than the case of Kindle and the notebook PC. Second, we measured the cognitive load of reading in each media using NASA-TLX, but we could not find significant differences between the four media. Finally, subjective evaluation shows that iPad had a positive score in the overall evaluation as a reading device, display quality, and usability, but it had a negative score as for fatigue during reading and the weight of the device. On the other hand, Kindle had a positive score as for display quality, fatigue during reading, and the weight of the device, but it had a negative score in the overall evaluation as a reading device and usability. As a total, paper books were evaluated highest between the media in almost all criteria of subjective evaluation.