著者
高野 岳彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.119-140, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

本論では2008年漁業センサスの漁業地区別統計を主に使用して,東北地方太平洋岸の漁業の地域特性を分析した.同地域の漁業は2011年の大津波によって壊滅的被害を受け,現在復興が進められている.その復興プロセスは震災前の各地域の漁業生産のあり様とどう関連するのかについては地理学研究の主題となると考える.本分析はそのための基礎資料として企図された.分析においては,初めに漁業の種類,経営形態,経営規模,販売額,兼業状況,労働力状況等に関する諸指標を分布図化してその地域性を確認した.次いで,それらの23変数×77漁業地区のデータ行列に対して主成分分析を適用し,4つの解釈可能な主成分を抽出した.さらにその成分得点から77 地区を類型分類し,都市漁港,自立養殖漁村,小規模・兼業養殖漁村,共同経営・定置網漁村の主要4類型を見出した.最後に,それらの地域特性は今後の復興プロセスのあり方とどう関連するのかについて考察を行った.
著者
八木 浩司 高野 岳彦 中村 靖 村山 良之 檜垣 大助
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.161-180, 1991-08-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

東北地方のスキー場についてその開発過程を整理し, いくつかの視点から立地特性を検討して類型化を行い, スキー場の特徴の包括的な把握を試みた。東北地方における初期 (主に1950年代) のスキー場は温泉集落に付属するものが多数を占めたが, 1960年代には夏型観光地の田沢湖高原や磐梯山などにもスキー場が開かれた。また国体の開催を機にするもの、幹線交通路に接するもの, 都市近郊に開設されたものなど, 立地要因が多様化してきた。1974年以降はリフトの増設は低調になり, 温泉地スキー場の廃棄が目立った。1978年以後, スキー場開発は以前にないほど活発化かつ大規模化し, 人込み客数は急増した。これは, 高速交通体系の整備とレジャー時間の拡大に伴うものといえる。次にスキー場の類型把握のため, (1) 地形的条件, (2) 社会的条件, (3) 規模, (4) 開発経営主体の4点を整理検討した。はじめに, (1) によって以下の3つの自然立地的グループを設定した: i) 山麓型, ii) 山地中腹型, iii) 脊陵主稜型。次いでこれらと (2) を合わせて以下の7つの基本類型を設定した: i)…温泉地型, 集落近隣型, 都市近隣型, ii)…夏季観光地型, 交通依存型, iii)…景勝地亜高山型, 非景勝地脊梁型。これらと (3) (4) との対応から, 各類型の特徴を明確にした。