- 著者
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中田 正夫
奥野 淳一
横山 祐典
長岡 信治
高野 晋司
前田 保夫
- 出版者
- 日本第四紀学会
- 雑誌
- 第四紀研究 (ISSN:04182642)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.4, pp.315-323, 1998-10-31 (Released:2009-08-21)
- 参考文献数
- 31
- 被引用文献数
-
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西九州には,縄文前期から縄文中期の水中遺跡が存在する.最終氷期の大陸氷床の融解に伴うハイドロアイソスタティックな地殻傾動は,これらの遺跡の沈水を定量的に説明することができる.これらの水中遺跡の分布は,地球の約250kmまでの深さの粘性構造に敏感に対応した事実を示している.この地域の海面変化の観測値と理論値を比較検討した結果,観測値を説明しうる粘性構造は,リソスフェアの厚さが30~50km,リソスフェア下200kmのアセノスフェアの平均的な粘性率が(8~20)×1019Pa sであることが判明した.つまり,アセノスフェアとその下の上部マントルとの粘性率のコントラストは有意ではなく,日本列島のような島弧域においても,発達した低い粘性率のアセノスフェアは存在しないことが示唆される.さらに,ハイドロアイソスタティックな地殻傾動に規定された後氷期の海水準変動は,空間・時間的に変化し,先史時代の居住地や生活様式を規定した可能性がある.