著者
中田 正夫 奥野 淳一
出版者
日本地形学連合
雑誌
地形 = Transactions, Japanese Geomorphological Union (ISSN:03891755)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.327-331, 2011-07-25
参考文献数
4
被引用文献数
1

During the growth of an ice sheet the continental crust beneath and near the ice sheet subsides, while in the decay period of glacier ice the crust is unloaded and rebounds. The process is called glacio-isostasy. The volume of sea water decreases during ice growth, while it increases during ice decay. The changing water load causes the vertical movement of the oceanic crust. The process is referred to as hydro-isostasy. These two processes combined are involved in glacio-hydro isostasy, i.e., the Earth's response to changes in ice and water loading during glacial cycle. The outline of a model for glacio-hydro isostasy is described and an application of the model to the northwestern Kyushu area is briefly introduced.
著者
中田 正夫 前田 保夫 長岡 信治 横山 祐典 奥野 淳一 松本 英二 松島 義章 佐藤 裕司 松田 功 三瓶 良和
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.361-368, 1994-12-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
12
被引用文献数
13 14

西九州には縄文早期の鷹島遺跡や数多くの縄文前期から中期の水中遺跡が存在する. これらの遺跡が水没したおもな原因は, 最終氷期の大陸氷床の融解に伴うハイドロアイソスタシーに帰すことができる. 本論文では, このことを定量的に示した. この研究をさらに進めることは, 両極の氷床モデルや地殻とマントルのレオロジーを推定するのに非常に有益である.
著者
中田 正夫 奥野 淳一 横山 祐典 長岡 信治 高野 晋司 前田 保夫
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.315-323, 1998-10-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
31
被引用文献数
9 16

西九州には,縄文前期から縄文中期の水中遺跡が存在する.最終氷期の大陸氷床の融解に伴うハイドロアイソスタティックな地殻傾動は,これらの遺跡の沈水を定量的に説明することができる.これらの水中遺跡の分布は,地球の約250kmまでの深さの粘性構造に敏感に対応した事実を示している.この地域の海面変化の観測値と理論値を比較検討した結果,観測値を説明しうる粘性構造は,リソスフェアの厚さが30~50km,リソスフェア下200kmのアセノスフェアの平均的な粘性率が(8~20)×1019Pa sであることが判明した.つまり,アセノスフェアとその下の上部マントルとの粘性率のコントラストは有意ではなく,日本列島のような島弧域においても,発達した低い粘性率のアセノスフェアは存在しないことが示唆される.さらに,ハイドロアイソスタティックな地殻傾動に規定された後氷期の海水準変動は,空間・時間的に変化し,先史時代の居住地や生活様式を規定した可能性がある.
著者
鈴木 貞臣 竹中 博士 清水 洋 中田 正夫 篠原 雅尚 亀 伸樹 茂木 透
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究実績は大きく分けて2つに分類される。第1は1999年9月末より10月上旬まで、九州西方海域で行われた地殻構造の大規模な調査であり、第2は自然地震の走時データを用いたトモグラフィーの研究である。第1の研究は本研究最大の実績ともいうべきもので、九州西方海域での地殻構造調査の成功とそのデータ解析結果である。平成11年度9月末より10月上旬まで、発破とエアガンを使った地殻構造の大規模な調査を行った。まず地殻構造調査においては,海底地震計で得られたデータは見かけ速度の変化に富んでいて、地殻上部の構造の複雑さを示していた。得られた地震波速度構造モデルでは、堆積層は二層に分けられ。上部層はP波速度1.7〜1.9km/sの垂直速度勾配が小さい厚さ200〜500mの層であり、下部層は2.0〜3.5km/sの垂直速度勾配がやや大きい層が800〜3500m存在する。上部地殻は二層に分けられ、第一層の上面のP波速度は3.0〜4.9km/sと水平方向に大きく変化している。この層の下面のP波速度は4.2〜5.3km/sである。第二層として、上面のP波速度は5.6〜5.9km/sの層が存在する。この層の下面のP波速度は6.0〜6.2km/sである。海面から上部地殻と下部地殻の境界までの深さは約10kmである。下部地殻の上面のP波速度は6.5〜6.7km/sのである。モホ面の深さは海面から約26kmと求められ、マントル最上部のP波速度は7.7〜7.8km/sと求められた。沖縄トラフで、モホの深さやマントル最上部のP波速度がこのように正確に求められたのは初めてのことである.第2の成果として、地震トモグラフィーの研究を上げられる。平成12年度はその結果を使って、特に背弧上部マントルの低速度異常領域について調べた、これはマントルのマントルアップウエリングとの関係で注目される。