著者
高﨑 博司
出版者
日本徒手理学療法学会
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.9-13, 2021 (Released:2021-04-16)
参考文献数
27

臨床推論の能力は徒手的理学療法の効果を左右する大きな因子である。臨床推論の枠組みは大きく分けて,medical modelとsigns and symptoms model(SSモデル)がある。Medical modelにおいては,病態解剖学的diagnosisの確立が,予後予測や治療を決める上で必須であると考える。一方で,SSモデルは病理解剖学的なdiagnosisを必要とせずに,パターン認識や臨床所見や症状に基づいた仮説演繹推論によって介入を計画し,反芻していく。SSモデルの臨床推論能力を高めることは,本邦における卒前・卒後教育で今後重視されていくと考えられる。そこで,本稿ではSSモデルの臨床推論能力を高めるのに有益であるstratified care modelを取り上げた。まず,stratified care modelとはなにかについて概説し,腰痛に対するKeele STarT Backスクリーニングツールについても簡単に紹介した。そして,stratified care modelにおける研究課題について概説した。
著者
三木 貴弘 高﨑 博司 寒川 美奈 竹林 庸雄
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.825-830, 2021-06-20 (Released:2021-06-20)
参考文献数
32

腰痛は世界や本邦において大きな問題となっており,非特異的腰痛は7割程度が4~6週で改善すると言われている一方で,残りの30%ほどは慢性化する.慢性化する非特異的腰痛において,構造的或いは機能的な問題に加えて,心理社会的因子が慢性化や改善の遅延化の原因であることが広く知られている.そこで,生物心理社会モデルに基づいて非特異的腰痛を考えることが必要である.また,腰痛をひとつの病態として捉えるのではなく,特徴ごとにsubgroup化し,それにより特異的な介入の方向性を見極めるclassificationやstratified careの概念が発展している.生物心理社会モデルに基づく非特異的腰痛に対する理学療法マネジメントは罹患期間により異なる戦略が取られ,慢性期においてはより多面的な戦略が必要である.近年提唱されている新たな介入として,“Making Sense of Pain”,“Exposure with Control”,“Lifestyle Change”の三つの構成からなる多面的な介入方法であるcognitive functional therapy(CFT)があり,一定の有効性が報告されている.腰痛における8割が手術の必要がない非特異的腰痛であることからも,理学療法の進化は腰痛に苦しむ人達の大きな一助となる可能性がある.
著者
松永 綾華 三木 貴弘 近藤 貴弘 高﨑 博司
出版者
日本徒手理学療法学会
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.3-8, 2021 (Released:2021-04-16)
参考文献数
15

14の腰椎不安定性の臨床症状の有無を問うLumbar Spine Instability Questionnaire(LSIQ)は,認知行動療法に比べてモーターコントロールトレーニングの方が治療効果が高くなる者の予測に役立つという報告がある。そこで本研究では,国際的な質問紙票の異文化適応ガイドラインに準拠してLSIQの日本語版を作成することを目的とした。仮日本語版作成までの過程では,LSIQの表現で不明確な箇所があり,LSIQの元となった2006年のデルファイ法研究の記述を元に一部改編し,各質問の内容を失わずにより日本語として理解しやすく自然な表現を心掛けた。腰痛関連の愁訴をもつ30名によるパイロットテストを行った結果,意味が分からないというコメントは420(30人×14質問)回答中1件であり,パイロットテストで使用した原稿が最終的な日本語版LSIQとなった。最終的に,腰痛を持つ幅広い方が理解できる日本語版LSIQが作成され,今後の研究での活用が期待できる。