- 著者
-
三木 貴弘
高﨑 博司
寒川 美奈
竹林 庸雄
- 出版者
- 一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
- 雑誌
- Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.6, pp.825-830, 2021-06-20 (Released:2021-06-20)
- 参考文献数
- 32
腰痛は世界や本邦において大きな問題となっており,非特異的腰痛は7割程度が4~6週で改善すると言われている一方で,残りの30%ほどは慢性化する.慢性化する非特異的腰痛において,構造的或いは機能的な問題に加えて,心理社会的因子が慢性化や改善の遅延化の原因であることが広く知られている.そこで,生物心理社会モデルに基づいて非特異的腰痛を考えることが必要である.また,腰痛をひとつの病態として捉えるのではなく,特徴ごとにsubgroup化し,それにより特異的な介入の方向性を見極めるclassificationやstratified careの概念が発展している.生物心理社会モデルに基づく非特異的腰痛に対する理学療法マネジメントは罹患期間により異なる戦略が取られ,慢性期においてはより多面的な戦略が必要である.近年提唱されている新たな介入として,“Making Sense of Pain”,“Exposure with Control”,“Lifestyle Change”の三つの構成からなる多面的な介入方法であるcognitive functional therapy(CFT)があり,一定の有効性が報告されている.腰痛における8割が手術の必要がない非特異的腰痛であることからも,理学療法の進化は腰痛に苦しむ人達の大きな一助となる可能性がある.