著者
髙橋 千晶 奥寺 敬
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-8, 2017 (Released:2018-03-01)
参考文献数
11

目的:交通事故の傷病者の救護を含めた日本の救急医療の現場では、迅速に患者の状態を伝達する方法の一つとしてコーマスケールが使用されてきた。Japan Coma Scale(JCS)が国内で最も普及されているが、評価者間のばらつきなどの問題が指摘されており、新たなコーマスケールの開発が望まれていた。2003年に、これらの問題点を改善したEmergency Coma Scale(ECS)が開発され、普及されつつあるが、そのスケールがJCSの問題点を解決できているのか、多施設合同比較研究を行い検証を行った。方法:研究では評価者間のスコアの一致性(STEP I)と、評価スコアの正確性(STEP Ⅱ)の2つの側面から検証を行った。STEP Iでは救急外来での実際の患者の意識レベルの評価を3つのコーマスケール〔ECS、JCS、Glasgow Coma Scale(GCS)〕を用いて複数の評価者で行いそのスコアの一致率を解析した。STEP Ⅱでは意識障害のある模擬患者の動画を視聴して、参加者が3つのコーマスケールを用いて評価し、その正解率を検証した。結果:STEP Iでは評価者全体でECSにおいて評価者間一致率が高かった。STEP ⅡではECSにおいて正解率が最も高い結果を示したが、コーマスケールの使用経験のない医学部4年生で評価法の複雑なGCSで正解率が著明に低かった。考察:両研究の結果を総合すると、ECSはさまざまな職種の医療スタッフだけでなく一般人にも簡潔で、解釈しやすいスケールであり、救急診療の現場によく適合し、非常に有用な評価手段であると考える。
著者
森 菜穂子 大髙 景子 丹代 菜々 髙橋 千晶
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部研究紀要クロスロード (ISSN:1345675X)
巻号頁・発行日
no.24, pp.67-77, 2020-03

弘前大学教育学部附属学校園において,2019年6 月から9 月までの期間に行った児童生徒等の熱中症に関する調査と暑さ指数モニタリングシステムによって観測された校舎内外の暑さ指数の評価から「熱中症疑い」の発生状況と暑熱環境の実態を明らかにした。その結果,「熱中症疑い」は附属学校園全体で73件発生し,小学校が最も多く41件で半数以上を占めた。また,全体としては屋外の発生が多かったが,中学校においては教室等,屋内で発生する傾向にあった。暑さ指数危険度別にみると28℃以上31℃未満の「厳重警戒」が32件で最も多く,次いで25℃以上28度未満の「警戒」が17件,21℃以上25℃未満の「注意」が14件であった。校舎内外13か所の暑さ指数(日最高WBGT)は, 6月は「注意」, 7月は「警戒」, 8月は「厳重警戒」及び「危険」, 9 月は「警戒」の場所及び日数が最も多かった。特に7月後半から9月前半にかけて,多くの場所が「厳重警戒」や「危険」に達したことから,学校行事等の開催時期や熱中症対策を再検討する必要がある。