著者
小澤 啓子 鈴木 亜紀子 髙泉 佳苗 岩部 万衣子 松木 宏美 赤松 利恵 岸田 恵津
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.205-216, 2016 (Released:2016-11-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2

目的:夜遅い食事と肥満との関連を把握すること.方法:PubMedおよびCINAHLデータベースを用いて,検索式には「食事」,「夜・時間」,「食行動」,「肥満・MetS」を示すキーワードを組み合わせ,2005年以降10年間に英語で報告された論文を検索した.596件の表題と抄録を精査し,本研究の採択基準(①原著,資料や短報など,②健常な幼児以上のヒト,③「夜遅い食事」か「夜食」を含む,④「肥満」か「MetS」を含む,⑤基礎研究でない)を満たさない535件を除外した.さらに本文を精読し,最終的に11件の論文を採択した.結果:採択論文は,縦断研究が2件,横断研究が7件,介入研究が2件であった.研究対象者は,成人のみ対象が10件,成人と子ども対象が1件であった.5件で夜遅い食事(夜食含む)を摂取する者は,肥満(body mass index: BMI 30 kg/m2以上)の割合が高い,BMI値が高い,もしくは体重増加量が有意に多い結果であった.その一方,残り6件のうち5件は,夜遅い食事(夜食含む)と肥満(体脂肪率などの体組成を含む)との関連はなく,他の1件は,夜遅い食事を摂取する者は,摂取しない者よりもMetSのリスクが有意に低かった.結論:夜遅い食事と肥満との間に正の関連,負の関連を示すもの,関連を示さないものが混在しており,一貫した結果がみられなかった.その理由として,交絡因子としてエネルギー摂取量調整の有無が関わっている可能性がある.
著者
髙泉 佳苗 原田 和弘 中村 好男
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.63-73, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
20
被引用文献数
4

目的:食生活リテラシーと食情報源(利用回数,信用度)および食情報検索バリアとの関連を検討した.方法:社会調査会社の登録モニター(20~59歳)を対象に,ウェブ調査による横断研究を実施した.解析対象は1,252人(男性631人,女性621人)であった.食生活リテラシーと食情報源(利用回数,信用度)および食情報検索バリアとの関連は重回帰分析(強制投入法)を用いた.結果:食生活リテラシーと正の関連が認められた食情報源は,男性では「医療従事者・専門家」(利用回数:β=0.12,p<0.01),「友人・知人」(信用度:β=0.14,p=0.01),「インターネット」(信用度:β=0.23,p<0.01)であった.女性では「インターネット」(利用回数:β=0.17,p<0.01,信用度:β=0.19,p<0.01),「友人・知人」(信用度:β=0.13,p=0.01)であった.食生活リテラシーと関連が認められたバリアは,「自分で検索した食情報は難しすぎて理解できない」(男性:β=-0.23,p<0.01,女性:β=-0.25,p<0.01),女性では「食情報を検索していると欲求不満や苛立ちを感じる」(β=-0.11,p=0.01)であった.結論:食生活リテラシーが低くなるほど,特定の食情報検索バリアが高くなる可能性が示された.食生活リテラシーに影響を与えている可能性がある食情報源は,男性女性ともに「友人・知人」,「インターネット」であり,さらに男性においては「医療従事者・専門家」も含まれていた.
著者
岩部 万衣子 小澤 啓子 松木 宏美 髙泉 佳苗 鈴木 亜紀子 赤松 利恵 岸田 恵津
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.151-167, 2017-08-31 (Released:2017-09-07)
参考文献数
32

目的:夜遅い食事及び夜食と肥満との関連を成人と子どもに分けて把握すること.方法:医学中央雑誌及びCiNiiを用いて,2005年以降の10年間に報告された論文を検索した.検索式には「夜遅い食事・夜食」と「肥満・MetS」を示す検索語を用いた.本研究の除外基準に基づき314件の表題と抄録を精査し234件を除外し,次に採択基準に基づき本文を精査して21件の論文を採択した.結果:21件中,縦断研究1件,横断研究18件,両方を含めたもの1件,介入研究1件であった.研究対象者は成人が15件,子どもが6件であった.成人では夜遅い食事を12件が調査し,7件で夜遅い食事の摂取者に肥満が多い等の正の関連があり,2件で性別等により肥満との関連の有無が異なり,3件で関連がなかった.夜食は10件で調査され,4件で夜食の摂取者に肥満が多く,3件で性別等により肥満との関連の有無が異なり,3件で関連がなかった.一方,子どもでは夜遅い食事の調査は1件と限られ,肥満との関連はなかった.夜食は6件で調査され,3件で関連なし,2件でBMIの高い者で夜食の割合が低く,1件で夜食の摂取者に肥満が多かった.結論:成人では夜遅い食事が肥満と正の関連を示し,子どもでは夜食が肥満と関連しないか負の関連を示した報告が多かった.しかし,多くは横断研究であり,交絡因子を調整した報告も少なかった.
著者
髙泉 佳苗
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.210-218, 2023-10-01 (Released:2023-11-23)
参考文献数
27

【目的】食生活リテラシーと食環境の認知(食品へのアクセス,情報へのアクセス)および食行動との因果関係を明らかにすることを目的とした。【方法】社会調査会社に登録している30~59歳のモニターから9,030人を層化抽出し,web調査による縦断研究を実施した。ベースライン調査は2018年10月に実施し,追跡調査は2019年10月に実施した。ベースライン調査と追跡調査を回答した解析対象者は2,331人(男性1,200人,女性1,131人)であった。食生活リテラシー得点,食品へのアクセス得点,情報へのアクセス得点,食行動得点の変化量(2019年-2018年)を算出し,因果モデルを作成してパス解析を行った。【結果】男性の食生活リテラシー得点は2018年から2019年で有意に減少していた(p=0.027)。食生活リテラシー得点の変化量は,食品へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.07,p<0.01)と情報へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.14,p<0.001),食行動得点の変化量(パス係数=0.07,p<0.05)に影響していた。女性の食生活リテラシー得点は有意な経時変化を認めず(p=0.47),食生活リテラシー得点の変化量は,情報へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.10,p<0.01)と食行動得点の変化量(パス係数=0.13,p<0.001)に影響していた。【結論】食生活リテラシー得点の向上が食環境の認知得点と食行動得点の向上に及ぼす影響度は強くないが,食生活リテラシーは食環境の認知および食行動の促進要因の一つであることが示された。
著者
髙泉 佳苗
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.113-125, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
29
被引用文献数
1

【目的】食生活リテラシー尺度と食環境の認知および主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度との関連を検討し,食生活リテラシーが主食・主菜・副菜がそろう食事に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】社会調査会社のモニターである30~39歳の9,356人を対象にウェブ調査を実施した。解析対象は2,000人(男性1,018人,女性982人)であった。食生活リテラシー尺度と主食・主菜・副菜がそろう食事の関連は,外食・持ち帰り弁当・惣菜の利用頻度と食環境(食物へのアクセス,情報へのアクセス)の認知を調整したロジスティック回帰分析を行い,その結果から食生活リテラシー尺度,食環境の認知,主食・主菜・副菜がそろう食事の因果モデルを作成し,パス解析を行った。【結果】男性は,食生活リテラシー尺度から「食物へのアクセス」と「情報へのアクセス」の認知に有意なパスが確認された。さらに,「食物へのアクセス」の認知から,主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度に影響していた(GFI=0.999,AGFI=0.997,CFI=1.000,RMSEA=0.000,χ2 値=1.2)。女性は,食生活リテラシー尺度から「食物へのアクセス」と「情報へのアクセス」の認知に有意なパスが認められ,その認知から主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度に影響していた(GFI=0.999,AGFI=0.986,CFI=0.998,RMSEA=0.041,χ2 値=2.7)。【結論】食生活リテラシーは食環境の認知を通じて,主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度に影響を及ぼしている可能性が示された。
著者
髙泉 佳苗
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.54-64, 2019-02-01 (Released:2019-05-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1

【目的】30歳代を対象に,現在の食生活リテラシー尺度と子どもの頃の共食状況および子どもの頃に家庭で受けた食教育との関連を検討した。【方法】社会調査会社のモニター(30~39歳)9,356人を対象に,2017年1月27日~29日の3日間でウェブ調査を実施した。分析対象は2,000人(男性1,018人,女性982人)であった。子どもの頃の共食状況と子どもの頃に家庭で受けた食教育は回想法により調査した。共食状況との関連はロジスティック回帰分析を用いた。食教育との関連は重回帰分析(強制投入法)を用いた。【結果】男性では子どもの頃に朝食(調整オッズ比:1.48(95%CI: 1.12~1.95))または夕食(調整オッズ比:1.90(95%CI: 1.29~2.81))を大人と一緒に共食している者の食生活リテラシー尺度が高かった。女性では朝食および夕食の共食と食生活リテラシー尺度に関連は認められなかった。食生活リテラシー尺度に好影響を示した子どもの頃に受けた食教育は,男性では「好き嫌いせずに食べるように言われていた(β=0.11,p=0.015)」,「食事づくりを手伝っていた(β=0.11,p=0.008)」であった。女性では,「主食,主菜,副菜のそろった食事だった(β=0.08,p=0.047)」,「食事づくりを手伝っていた(β=0.11,p=0.006)」であった。【結論】男性では子どもの頃に大人と一緒に共食すること,また男女共に,子どもの頃の家庭における特定の食教育が,成人期の食生活リテラシーを形成する要因になっている可能性が示唆された。