著者
八木 雅之 髙部 稚子 石崎 香 米井 嘉一
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.67-73, 2018 (Released:2019-09-02)
参考文献数
55
被引用文献数
1

糖化(glycation)はアミノ酸やタンパクと還元糖の非酵素的な化学反応で生体内のさまざまなタンパクに起こる。糖化したタンパクはカルボニル化合物を中心とする糖化反応中間体を経て,糖化最終生成物(advanced glycation end products: AGEs)に至る。糖化ストレス(glycative stress)は還元糖やアルデヒドによる生体へのストレスと,その後の反応を総合的にとらえた概念である。糖化ストレスの評価には糖化反応の過程で生じるさまざまな物質がマーカーとなる。糖化ストレスマーカーには,血糖,糖化タンパク,糖化反応中間体,AGEsがある。抗糖化作用の評価には,タンパクと還元糖を含むリン酸緩衝液中に試料を添加して反応させた後,生成したAGEsや糖化反応中間体の量を測定する。既に,多くの食品,化粧品素材に抗糖化作用が見つかっている。我々はこれらの素材を利用することで糖化ストレスによる老化や疾患を予防できる可能性がある。
著者
米井 嘉一 八木 雅之 髙部 稚子 今 美知
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.83-90, 2019-06-20 (Released:2019-06-21)
参考文献数
25
被引用文献数
1

皮膚の老化の機序を考える上で光老化による酸化ストレスと糖化ストレスは大きな要因となっている。紫外線は活性酸素やフリーラジカルを介して皮膚に酸化ストレス障害を惹起し,色素細胞のメラニン産生刺激と角化細胞の遺伝子損傷はシミ形成に,線維芽細胞刺激はシワ形成に関わる。糖化ストレスは次に大きな皮膚老化の原因である。これは還元糖,脂質や酒由来のアルデヒドによる蛋白修飾が主反応で,カルボニル化蛋白ならびに糖化最終産物(advanced glycation end-products: AGEs)を生成,さらにはRAGE(receptor for AGEs)に結合して炎症性サイトカイン産生を促す。RAGE は免疫応答細胞のみならず皮膚線維芽細胞にも存在する。コラーゲン糖化は皮膚弾力性低下,エラスチンの糖化はたるみを惹起する。近年,AGEs が色素細胞を刺激してメラニン産生を助長することが明らかになった。すなわちシミ形成にも関与する可能性がある。糖化ストレス対策化粧品の開発はきわめて重要であり,今後の発展が期待される。