著者
米井 嘉一 八木 雅之
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.596-601, 2012 (Released:2013-10-01)
参考文献数
8

抗加齢(アンチエイジング)医学の観点から、加齢に伴う疾患や退行性変化に関わる糖化ストレスの概念を紹介する。抗加齢医療実践機関では、老化度を筋年齢・血管年齢・神経年齢・ホルモン年齢・骨年齢といった機能年齢として、老化を促進する危険因子を免疫ストレス・酸化ストレス・心身ストレス・糖化ストレス・生活習慣として評価している。糖化ストレスは酸化ストレスと並び重要な老化危険因子として位置づけられる。 果糖やブドウ糖などの還元糖と蛋白を構成するリジンやアルギニンが非制御的、非酵素的に結合して中間体を生成、さらに反応が進むと糖化最終産物(advanced glycation end products; AGEs)を形成する。AGEsは組織に沈着するほか、AGEs受容体(Receptor for AGEs; RAGE)と呼ばれる受容体に結合し、炎症を惹起する。また過剰のブドウ糖はTCAサイクルの障害を起こし、生じたフマル酸によって蛋白を構成するシステインと反応し、蛋白変性を生じる。脂質やアルコール由来のアルデヒドも同様の蛋白翻訳後修飾を起こす。糖化ストレスとはこれらを総合的に捉えた概念である。 たとえばアテローム動脈硬化は、酸化や糖化ストレスによってLDLコレステロールから生じた修飾物をマクロファ-ジが貪食した結果、泡沫細胞となって血管内腔に集積して形成される。皮膚ではコラーゲン線維が糖化により架橋形成を起こし、線維間が固定される結果、皮膚弾力性の低下や硬化が生じる。 若くて健康な状態を保つためにはこれらの危険因子の管理が重要である。糖化ストレスを減らす方法として、(1)食後高血糖や急激なインスリン分泌を避ける食生活、(2)果糖ブドウ液糖など異性化糖を避ける、(3)加齢に伴って衰える筋肉量や内分泌機能を維持、(4)AGEs生成抑制物質など抗糖化物質の利用が挙げられる。本領域の研究が発展することで、抗加齢療法の新たな展開が期待できる。
著者
八木 雅之 髙部 稚子 石崎 香 米井 嘉一
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.67-73, 2018 (Released:2019-09-02)
参考文献数
55
被引用文献数
1

糖化(glycation)はアミノ酸やタンパクと還元糖の非酵素的な化学反応で生体内のさまざまなタンパクに起こる。糖化したタンパクはカルボニル化合物を中心とする糖化反応中間体を経て,糖化最終生成物(advanced glycation end products: AGEs)に至る。糖化ストレス(glycative stress)は還元糖やアルデヒドによる生体へのストレスと,その後の反応を総合的にとらえた概念である。糖化ストレスの評価には糖化反応の過程で生じるさまざまな物質がマーカーとなる。糖化ストレスマーカーには,血糖,糖化タンパク,糖化反応中間体,AGEsがある。抗糖化作用の評価には,タンパクと還元糖を含むリン酸緩衝液中に試料を添加して反応させた後,生成したAGEsや糖化反応中間体の量を測定する。既に,多くの食品,化粧品素材に抗糖化作用が見つかっている。我々はこれらの素材を利用することで糖化ストレスによる老化や疾患を予防できる可能性がある。
著者
米井 嘉一 八木 雅之 髙部 稚子 今 美知
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.83-90, 2019-06-20 (Released:2019-06-21)
参考文献数
25
被引用文献数
1

皮膚の老化の機序を考える上で光老化による酸化ストレスと糖化ストレスは大きな要因となっている。紫外線は活性酸素やフリーラジカルを介して皮膚に酸化ストレス障害を惹起し,色素細胞のメラニン産生刺激と角化細胞の遺伝子損傷はシミ形成に,線維芽細胞刺激はシワ形成に関わる。糖化ストレスは次に大きな皮膚老化の原因である。これは還元糖,脂質や酒由来のアルデヒドによる蛋白修飾が主反応で,カルボニル化蛋白ならびに糖化最終産物(advanced glycation end-products: AGEs)を生成,さらにはRAGE(receptor for AGEs)に結合して炎症性サイトカイン産生を促す。RAGE は免疫応答細胞のみならず皮膚線維芽細胞にも存在する。コラーゲン糖化は皮膚弾力性低下,エラスチンの糖化はたるみを惹起する。近年,AGEs が色素細胞を刺激してメラニン産生を助長することが明らかになった。すなわちシミ形成にも関与する可能性がある。糖化ストレス対策化粧品の開発はきわめて重要であり,今後の発展が期待される。
著者
西村 六郎 八木 雅之 山川 宏二
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.1186-1191, 1996-11-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
7
被引用文献数
1

The effects of carbon dioxide on corrosion rate, polarization curve and hydrogen content have been investigated for carbon steels in acetate solutions and sodium carbonate solution with a pH range of 2 to 9 at 313K under carbon dioxide and nitrogen atmospheres. In the acidic solutions less than pH4 both general corrosion and hydrogen content are accerated by the existence of carbon dioxide. In the solutions more than pH7 little corrosion is observed with or without carbon dioxide, where as hydrogen content is detected only at the existence of carbon dioxide. The anodic and cathodic polarization curves with or without carbon dioxide show that their reaction overpotentials are affected by carbon dioxide, effect of which changes depending upon pH. The results obtained are qualitatively explained in terms of the formation of iron carbonate, the adsorption of carbonate ions and so on.