著者
ウイライ サン 須貝 悦治 黄色 俊一
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.265-270, 1990

末期の雌蛹を高温密閉条件で処理し, 羽化後これに正常雄を交配すると, 産下卵の多くが不着色死卵となるが, 十分な空気の供給下では不着色死卵は殆んど発現しない。蛹1頭当りの空気容量が9ml又は20mlの場合には, 35℃で12時間処理すると100%が不着色死卵となった。また, 空気容量を58mlにすると, 不着色死卵の発現はかなり遅れ, 18時間処理で100%となった。このような不着色死卵の多くは正常精子と受精はするが, 核分裂の初期段階で致死し, 胚盤葉形成まで発育しているものはなかった。これに対し, 処理区に混在する着色卵では, 多くのものが孵化能力を有し, 次代への遺伝的影響は認められなかった。
著者
阿部 広明 大林 富美 原田 多恵 嶋田 透 横山 岳 小林 正彦 黄色 俊一
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.196-200, 1996

CSD-1系統はカイコ支137号 (<i>nsd-1</i>/<i>nsd-1</i>) に日137号 (+<sup><i>nsd-1</i></sup>/+<sup><i>nsd-1</i></sup>) の濃核病ウイルス1型 (DNV-1) 感受性遺伝子 (+<sup><i>nsd-1</i></sup>) が所属する第21連関群を導入し, 継代, 維持している。このためCSD-1系統は, 第21連関群について, 日137号の染色体と支137号の染色体を一本ずつもつ<i>nsd-1</i>/+の雌に, 支137号の雄を交配し, 蛾区内でDNV-1感受性個体 (<i>nsd-1</i>/+) とDNV-1非感受性 (完全抵抗性) 個体 (<i>nsd-1</i>/<i>nsd-1</i>) が1:1で分離するようにしてある。本研究は, +<sup><i>nsd-1</i></sup>遺伝子に連関しているランダム増幅多型DNA (RAPD) を利用し, CSD-1系統内よりDNV-1を接種することなく, 幼虫ならびに成虫のDNV-1感受性を診断する方法について検討した。PCRの鋳型となるゲノムDNAを, 幼虫の場合は切断した腹脚2本から, 成虫の場合は切断した脚2本から, それぞれ抽出し, 特定のプライマーを使用してPCRを行い, RAPDの有無を調べた。その結果, RAPDによる診断結果とDNV-1感染の有無が一致した。この方法により, ウイルスを使用することなくDNV-1感受性個体を検出し, その個体から次代を得ることが可能となった。
著者
小林 正彦 真浦 正徳 前川 秀彰 藤原 晴彦 島田 順 黄色 俊一
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

1.精細胞の移植について、飼育条件による有核精子と無核精子の割合の変化を調べた。その結果、低温暗催青した非休眠性幼虫では無核精子の割合が休眠性幼虫に比べて多いことが明らかになり、現在使用しているB系統に二化性の遺伝子を導入し低温暗催青することにより、より効率のよいドニーの系統をえられることが判明した。2.カイコの分散型反復配列BMCI多重遺伝子族をベクターとし、クロラムフェニコールアセチル化酵素遺伝子をマーカーとし、熱ショック蛋白質遺伝子のプロモーターをもつプラスミドpBmhscatを構築し、カイコの培養細胞にリン酸カルシュウム共沈法により導入した。その結果、比較的効率よくゲノムDNAと組換えを起こしていることが明らかになった。これを精細胞に応用し、組換え精細胞および組換え体カイコが得られる高い可能性が示唆された。3.カイコの前胸腺刺激ホルモン遺伝子と休眠ホルモン-PBAN遺伝子について多型を検索し、それぞれ遺伝子座位を決定した。カイコの前胸腺刺激ホルモン遺伝子は第22連関群の2.7に占座し、精細胞移植法によりホモ致死個体が救出されたskuと同一の連関に属し、移植の指標に使えることが明かになった。4.異種間細胞の移植のため、エリサンの精巣をカイコに移植し移植適性を調べた。その結果、移植された精巣は体液中では消化されるが、精細胞の移植では細胞が健在であることが明らかになった。5.種間雑種を作り出すため、カイコの培用細胞とマウスの培養細胞の融合条件を検索した。その結果、400v/cmの至適の条件では効率よく融合細胞が得られることが明らかになった。6.遺伝子導入と細胞融合に用る電気細胞穿孔法の精原細胞への影響を調べた結果、300v/cm以下では精細胞まで分化し移植が可能であった。