- 著者
-
黒田 晴之
- 出版者
- 松山大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
昨年度の「今後の研究の推進方策」でも示したように、The Klezmaticsの創設メンバーFrank London氏を5月に招聘し、東京藝術大学・立教大学・広島市立大学・大阪大学・京都大学とのコンソーシアム形式で、「東欧ユダヤ人の音楽「クレズマー」をめぐる対話」と題して、国内の研究者・関係者も加わり、かつ一般市民・学生にも開かれた、研究成果報告会・講演・ワークショップ・実演の場をもった。この機会にLondon氏が書かれた文章や、ご本人から直接伺ったことを元に、クレズマー・リヴァイヴァルを集中的に調査した成果を、「クレズマー・リヴァイヴァル再考」と題して、京都人類学研究会のシンポジウム『共同体を記憶するーユダヤ/「ジプシー」の文化構築と記憶の媒体』(京都大学の岩谷彩子氏がコーディネイト)で口頭発表した。この内容をまとめて、同研究会のオンライン・ジャーナル「コンタクト・ゾーン」に、「クレズマー、あるいは音の記憶の分有 クレズマー・リヴァイヴァルまでの道のり」として投稿した(現在査読中)。「新移民」が録音した音楽は、"ethnic recordings"というカテゴリーに区分され、かれら以外のポピュラー音楽とは明確に区別された。これからの研究調査ではそうした新移民の音楽が、アメリカのフォーク音楽の規範に吸収されなかった事情を、Alan Lomaxらが対象にしたいわゆる「アメリカン・ルーツ」の音楽などと対照させながら、音楽をめぐる言説から裏付けていく作業を進める。これらの研究と平行してギリシアの音楽「レベティコ」についても、従来の研究を歴史学の立場から総括した単著の翻訳を開始し、ミュンヘン大学教授の著者Ioannis Zelepos氏に現地でヒアリングを行なうとともに、頻繁に意見・情報を交換していることを付言しておく。