著者
瀬野 悟史 嶽 良博 硲田 猛真 齊藤 優子 池田 浩己 北野 博也 北嶋 和智 榎本 雅夫
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.232-239, 2002-03-20
被引用文献数
5 3

近年花粉症の治療として, 従来のメディカルケアに加えてセルフケアの重要性が認識されてきている. 飛散花粉観測より得られる情報は, セルフケアに重要であるが, 特にリアルタイムの花粉情報はよりきめ細やかなセルフケアに役立つ可能性がある. リアルタイム花粉モニターは, リアルタイムの飛散花粉情報が得られること, 簡便に飛散花粉数を測定することができることから今後普及していくと考えられる. 今回このリアルタイム花粉モニター (KH-3000) の精度などについて検討した. 和歌山市において, 2001年2月2日から4月26日までに観測された飛散花粉を対象とし, ダーラム型花粉捕集器とリアルタイム花粉モニターの結果について比較検討を行った. スギ花粉飛散のピークとなる3月のスギ花粉の相関係数はr=0.69, ヒノキ科花粉飛散のピークとなる4月のヒノキ科花粉の相関係数はr=0.89であり, 良好な相関関係が認められた. しかし, リアルタイム花粉モニターの結果には, 花粉ではないピークも認められた. 検討の結果その原因は雪やそれ以外の可能性が考えられた. 現在本機器に, 改良品として雪対策も行われており, スギ・ヒノキ科花粉のリアルタイム測定には, 本モニターが有用であると考えられた.
著者
榎本 雅夫 大西 成雄 嶽 良博 齊藤 優子 池田 浩己 十河 英世 船越 宏子 芝埜 彰 瀬野 悟史 硲田 猛真
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.488-492, 2002-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1

アレルギー性鼻炎における環境調整はメディカルケアへの依存を軽減し, これのみで症状が改善する例もしばしば経験し, 治療を行う上で有意義な方法である0したがって, 鼻アレルギー診療ガイドラインにも室内ダニ除去が推奨され, その具体的方法が示されている。しかし, これらの主要アレルゲンであるDer p (f) 1, Der p (f) 2は水溶性であるにもかかわらず, ガイドラインには洗濯の励行の重要性が記載されていない。本報告では, 洗濯の効果があるのかについて検討した。各種布地による溶出時間とDer 1溶出量, 溶出率, 実際の洗濯によるダニアレルゲン減少度, 漬け置き洗濯の効用などについて検討した。その結果, 布質によってダニアレルゲン吸着度は大いに異なること, 溶出率もそれにより異なること, 漬け置き洗いがより効果的であることなどが明らかになった。これらのことは, 日常の患者指導をする上で直接役立っ事項と考身ている.
著者
齊藤 優子 田中 里江子 硲田 猛真 間 三千夫 船越 宏子 池田 浩己 芝埜 彰 輿田 茂利 夜陣 真司 北野 博也 榎本 雅夫
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.236-241, 2005-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
15

Waardenburg症候群は内眼角と涙点の側方偏位, 広く高い鼻根, 正中部眉毛過形成, 虹彩異色症, 先天性感音難聴, 前頭部白髪の6主徴を特徴とする常染色体優性遺伝形式をとることが多い遺伝性疾患である。本邦でも多くの報告がなされているが症状の発現や程度は様々である。今回, 新生児聴覚スクリーニング検査から発見されたWaardenburg症候群1型の2例 (父子症例) を経験し, 遺伝カウンセリング, 聴力所見を中心に難聴の浸透率や難聴の表現型などについて検討した。父子の症例であるが感音難聴, 虹彩異色の発現及びその程度に違いが認められた。父親には難聴はみられなかったが, 患児は暗一側性の高度難聴を認めた。
著者
山本 紗規子 吉田 哲也 齊藤 優子 佐々木 優 矢野 優美子 小林 正規 佐藤 友隆
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.193-197, 2015 (Released:2015-08-27)
参考文献数
11

スナノミ症はTunga penetransと呼ばれるスナノミが感染して生じる寄生虫性皮膚疾患である.スナノミはアフリカ,南米,西インド諸島を含む熱帯,亜熱帯の乾燥した砂地に生息する.雌の成虫が宿主の皮膚に侵入し“ネオゾーム”と呼ばれる腫大した構造を呈し,これがスナノミ症を引き起こす.スナノミ症の好発部位は足の爪周囲や趾間であり,症状は刺激感や瘙痒,疼痛を生じることが多い.治療はノミの除去である.スナノミ症は細菌による二次感染をおこすため,感染に対しては抗生剤の投与を行う.スナノミ症は通常,蔓延地域への渡航歴や,特徴的な臨床所見,病変から虫体や虫卵を確認することで診断できる. KOH直接鏡検法を用いて虫体や虫卵を確認し診断に至ったスナノミ症の1例を報告する.患者は67歳男,タンザニア連合共和国に仕事で滞在中,左足第�趾爪囲の色調の変化に気がつき急遽日本に帰国し当科を初診した.初診時,左足第�趾の爪は一部爪床から浮いており爪周囲は暗紫色調を呈し浮腫状であった.趾先部の中心に黒点を伴う角化を伴った黄白色の結節を認め,スナノミ症を疑い変色部位を爪とともに一塊に切除した.自験例では皮膚の変性,壊死が強く臨床的には虫の存在は明らかではなかったが,KOH直接鏡検法を用いたところ虫体の一部と多数の虫卵を認めることができスナノミ症と診断した.病理組織でも虫体構造物を確認した.感染部位を摘出後,軟膏による潰瘍治療と抗生剤の内服で軽快,治癒した. 病変部位から虫がはっきりと見えない場合,KOH直接鏡検法はスナノミ症の診断に有用である.