著者
藤原 和典 福原 隆宏 北野 博也
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.87-90, 2014 (Released:2014-08-07)
参考文献数
13

頭頸部領域におけるロボット支援手術は,ロボット支援下経口的咽喉頭癌とロボット支援下甲状腺切除術があげられ,海外では徐々に普及し,良好な成績が報告されている。しかし,本邦においては,薬事は未承認の状態である。そこで現在,鳥取大学,東京医科大学,京都大学の3施設が共同して,先進医療Bのもとでロボット支援下経口的咽喉頭癌切除術に対する臨床研究の準備を行っており,最終的には,薬事申請を行い,頭頸部癌での適応拡大を目指している。ロボット支援下経口的咽喉頭癌切除術とロボット支援下甲状腺癌切除術では術後の嚥下機能などの機能温存が可能である点や外切開をさけられる点などの利点があり,薬事承認後は,本邦でも積極的に導入される手術であると考えられる。
著者
矢嶋 裕樹 間 三千夫 中嶋 和夫 河野 淳 硲田 猛真 嶽 良弘 榎本 雅夫 北野 博也
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.149-156, 2004-06-28 (Released:2010-08-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本研究の目的は, 難聴高齢者における聴力低下に伴うストーレス・イベント, 聴力低下に伴うストレス認知, 精神的健康の関連性を検討することであった。調査対象は, 和歌山日本赤十字医療センターを利用していた難聴高齢者235名であった。面接調査は, 聴覚言語療法士によって実施された。構造方程式モデリングによる解析の結果, 性, 年齢, 聴力損失レベルと聴力低下に伴うストレス・イベントのあいだに有意な関連性が認められた。さらに, ストレス・イベントは, ストレス認知を経由して, 間接的に精神的健康に影響を与えていた。なお, ストレス・イベントと精神的健康のあいだには直接的な関連性はみられなかった。これらの結果は, 聴力低下に起因するストレス・イベントやストレス認知から精神的健康に対する効果の軽減を目指した専門的介入策を確立することによって, 聴力低下による精神的健康の悪化を予防できる可能性を示唆するものである。
著者
中西 豊 竹内 英二 北野 博也 矢沢 代四郎 北嶋 和智
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.429-433, 1996-04-01
被引用文献数
3 1

We treated a 20-year-old man with a blind bullet wound of the left temporal bone and perforating bullet wounds of the right temporal legion, the right upper arm and right femur.<br>Following physical examination, X-P, and CT, a bullet was detected in the left temporal bone. However, other wounds did not contain bullets. Emergency surgery was performed. The bullet was suspected to have entered through the posterior part of the mastoid tip, pass through the mastoid cavity and stopped at the tympanum. The facial canal was partially broken at the vertical portion, however the facial nerve was not damaged. The bullet was removed after resecting the posterior external auditory canal. Tympanoplasty type i combined with external canal wall drilling-down technique was performed.<br>The patient showed left facial palsy after surgery. However, this gradually improved. The postoperative course in his left ear was good without infection, although the patient was deaf in that ear.
著者
瀬野 悟史 嶽 良博 硲田 猛真 齊藤 優子 池田 浩己 北野 博也 北嶋 和智 榎本 雅夫
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.232-239, 2002-03-20
被引用文献数
5 3

近年花粉症の治療として, 従来のメディカルケアに加えてセルフケアの重要性が認識されてきている. 飛散花粉観測より得られる情報は, セルフケアに重要であるが, 特にリアルタイムの花粉情報はよりきめ細やかなセルフケアに役立つ可能性がある. リアルタイム花粉モニターは, リアルタイムの飛散花粉情報が得られること, 簡便に飛散花粉数を測定することができることから今後普及していくと考えられる. 今回このリアルタイム花粉モニター (KH-3000) の精度などについて検討した. 和歌山市において, 2001年2月2日から4月26日までに観測された飛散花粉を対象とし, ダーラム型花粉捕集器とリアルタイム花粉モニターの結果について比較検討を行った. スギ花粉飛散のピークとなる3月のスギ花粉の相関係数はr=0.69, ヒノキ科花粉飛散のピークとなる4月のヒノキ科花粉の相関係数はr=0.89であり, 良好な相関関係が認められた. しかし, リアルタイム花粉モニターの結果には, 花粉ではないピークも認められた. 検討の結果その原因は雪やそれ以外の可能性が考えられた. 現在本機器に, 改良品として雪対策も行われており, スギ・ヒノキ科花粉のリアルタイム測定には, 本モニターが有用であると考えられた.
著者
鈴木 幹男 北西 剛 山名 高世 北野 博也 矢澤 代四郎 北嶋 和智
出版者
Japan Otological Society
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.526-530, 1998-12-25 (Released:2011-06-17)
参考文献数
16
被引用文献数
1

Several point mutations of mitochondrial DNA have recently been identified as a cause of hearing loss. In Japan, there are considerable number of patients with A-to-G mutations at nucleotide position 3243 and at 1555. We investigated the prevalence of these mutations in patients with hearing loss using polymerase chain reaction method (PCR). We identified 3243 point mutation in 2 of 72 patients (2.8%) and 1555 point mutation in one of 57 patients (1.8%). The clinical neuro-otologic findings in patients with point mutations were consistent with those previously reported. The number of patients examined was composed of 9% of a total in our outpatient clinic. Therefore, we estimated 0.4% of patients in our clinic have a point mutation at nucleotide position 3243 or 1555.
著者
齊藤 優子 田中 里江子 硲田 猛真 間 三千夫 船越 宏子 池田 浩己 芝埜 彰 輿田 茂利 夜陣 真司 北野 博也 榎本 雅夫
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.236-241, 2005-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
15

Waardenburg症候群は内眼角と涙点の側方偏位, 広く高い鼻根, 正中部眉毛過形成, 虹彩異色症, 先天性感音難聴, 前頭部白髪の6主徴を特徴とする常染色体優性遺伝形式をとることが多い遺伝性疾患である。本邦でも多くの報告がなされているが症状の発現や程度は様々である。今回, 新生児聴覚スクリーニング検査から発見されたWaardenburg症候群1型の2例 (父子症例) を経験し, 遺伝カウンセリング, 聴力所見を中心に難聴の浸透率や難聴の表現型などについて検討した。父子の症例であるが感音難聴, 虹彩異色の発現及びその程度に違いが認められた。父親には難聴はみられなかったが, 患児は暗一側性の高度難聴を認めた。
著者
鈴木 幹男 小川 富美雄 北野 博也 矢澤 代四郎 北嶋 和智
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.879-884, 2000-08-20
被引用文献数
2 4

音刺激の聴覚野への交叉性投射を調べる目的で単音節刺激時の聴覚野脳活動をfunctional MRIを用いて検討した.対象は聴力正常な成人6名(右利き)である.1秒間に1個の単音節(95dBSPL)を呈示し,OFF-ONパラダイム(OFF;音刺激なし,20秒,ON;音刺激あり,20秒)を4回繰り返した.機能画像は1.5テスラMRI装置(GE社製Signa Horizon)でグラジエントエコーエコープラナー画像(EPI)として得た.EPIはワークステーション上でSPM99bを使用し解析を行い,聴覚野賦活部位を測定した.<br>予備実験としてEPI撮像時の騒音を測定した.ERI撮像時の騒音は97dBSPLであったが,MR対応のヘッドホンを使用することにより80dBSPLまで減少させることが可能であった.片耳単音節刺激により主に反対側の1次聴覚野,両側の聴覚連合野に広い賦活部位が観察された.賦活は一次聴覚野より聴覚連合野に著明であった.右耳に単音節刺激を与えた際は左聴覚野に,左耳に与えた際は右聴覚野に有意に広い賦活部位がみられた.このパターンは被験者全員に観察された.この結果から単音節聴取時の音情報は両側の聴覚野に入力されるが,刺激対側の聴覚野に反応が強く交叉性投射が確認された.撮像時の騒音を減少させれば聴覚刺激による反応をfunctional MRIで測定することが可能であり今後臨床応用できると結論した.
著者
北野 仁 斎藤 春雄 北嶋 和智 竹田 泰三 矢沢 代四郎 松原 秀春 北野 眞由美 北野 博也 児玉 章 水上 千佳司
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10special, pp.2370-2378, 1981-10-25 (Released:2011-11-04)
参考文献数
7

Meniere's disease is represented by episodic vertigo (vestibular symptom), tinnitis and hearing loss (cochlear symptom). It is possible to devide patients with Meniere's disease into three groups; those with cochlear and vestibular symptoms starting at the same time, and those with the vestibular symptoms starting before or after cochlear symptoms: In this presentation, we studied the clinical differences of these three groups. The following results were obtained.1. In the case of cochlear Meniere's disease, the cochlear symptom is slight and it is easy to acquire the vestibular symptom. The cause of cochlear Meniere's disease was considered to be the existence of endolymphatic hydrops. Compared with frequency of bilateral Meniere's disease, bilateral cochlear Meniere's disease was more found.2. In the case of vestibular Meniere's disease, the vestibular symptom is slight and it is difficult to acquire the cochlear symptom. The cause of vestibular Meniere's disease, in all cases was not considered to be the existence of endolymphatic hydrops.3. In the case of Meniere's disease with vestibular symptoms starting after the cochlear symptoms, both the vestibular symptoms and cochlear symptoms are heavy. In the case of Meniere's disease with vestibular symptoms starting before the cochlear symptoms, both symptoms are slight.
著者
藤原 和典 福原 隆宏 北野 博也
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.887-892, 2014-07-20 (Released:2014-08-08)
参考文献数
18

早期の咽喉頭癌に対して, 化学放射線治療に代わる治療として, ロボット支援下経口的咽喉頭癌切除術 (TORS: Transoral Robotic Surgery) が海外において普及しており, 良好な成績や機能温存が報告されている. しかし, 残念ながら, 本手術は本邦では薬事未承認である. 現在, 早期の薬事承認を目指し, 鳥取大学, 東京医科大学および京都大学による多施設共同臨床研究の準備を進めている.