著者
赤羽根 良和 永田 敏貢 齊藤 正佳 篠田 光俊
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.109-114, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
12

【目的】肩関節周囲炎に続発する夜間痛の臨床的特徴を明らかにするため,非夜間痛群,夜間炎症群,夜間拘縮群で比較検討した。【対象】対象は肩関節周囲炎100 例であった。対象の肩関節X 線正面像からAHI,HHD,AHI/HHD 比,GHA を測定し,肩関節可動域は屈曲,外旋,内旋角度を測定し,それぞれで比較した。【結果】AHI,HHD,肩関節屈曲可動域は3 群間で有意差を認めなかった。非夜間痛群と比較して夜間拘縮群は外・内旋域が減少し,GHA が増大していた。また,非夜間痛群と比較して夜間炎症群はAHI/HHD 比が減少し,GHA が増大していた。夜間炎症群と比較して夜間拘縮群はGHA が増大していた。【結論】夜間炎症群および夜間拘縮群は肩甲骨が下方回旋位となっていた。また,夜間痛の発症が炎症を起因とした場合は,肩関節可動域の回旋域が比較的保たれていた。しかし,拘縮を起因とした場合は,肩関節の回旋可動域が減少することがわかった。
著者
赤羽根 良和 永田 敏貢 齊藤 正佳 篠田 光俊
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11080, (Released:2016-12-22)
参考文献数
12

【目的】肩関節周囲炎に続発する夜間痛の臨床的特徴を明らかにするため,非夜間痛群,夜間炎症群,夜間拘縮群で比較検討した。【対象】対象は肩関節周囲炎100 例であった。対象の肩関節X 線正面像からAHI,HHD,AHI/HHD 比,GHA を測定し,肩関節可動域は屈曲,外旋,内旋角度を測定し,それぞれで比較した。【結果】AHI,HHD,肩関節屈曲可動域は3 群間で有意差を認めなかった。非夜間痛群と比較して夜間拘縮群は外・内旋域が減少し,GHA が増大していた。また,非夜間痛群と比較して夜間炎症群はAHI/HHD 比が減少し,GHA が増大していた。夜間炎症群と比較して夜間拘縮群はGHA が増大していた。【結論】夜間炎症群および夜間拘縮群は肩甲骨が下方回旋位となっていた。また,夜間痛の発症が炎症を起因とした場合は,肩関節可動域の回旋域が比較的保たれていた。しかし,拘縮を起因とした場合は,肩関節の回旋可動域が減少することがわかった。
著者
服部 潤 赤羽根 良和 永田 敏貢 齊藤 正佳 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.130, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 梨状筋症候群とは、坐骨神経をはじめとする末梢神経が骨盤出口部で梨状筋により絞扼や圧迫などの侵害刺激を受けることで、疼痛や痺れが惹起される病態である。また、障害される神経は、教科書的には坐骨神経とされているが、実際の臨床では後大腿皮神経や下殿神経の症状も呈することが多い。そのため、臨床症状が多様化ことも少なくない。今回、末梢神経障害を臨床症状から分類し、その割合について検討を行ったので報告する。【対象】 対象は、2012年1月から6月までに梨状筋症候群と診断された25例(男性8例、女性17例、右13肢、左11肢、左右1肢)である。平均年齢は54.3±19.7歳であり、発症から来院までの期間は平均52.7±66.0日であった。【方法】 末梢神経障害の識別方法について述べる。後大腿皮神経(第1-3仙骨神経)は、感覚枝のみを有する。そのため、臀部下部から大腿後面における神経領域内に疼痛及び感覚障害を認めた場合とした。総腓骨神経(第4腰神経-第2仙骨神経)と脛骨神経(第4腰神経-第3仙骨神経)は感覚枝と運動枝を有する。そのため、前者は、下腿外側から足背における疼痛及び感覚障害と長母趾伸筋の筋力低下を認めた場合とし、後者は、下腿後面から足底における疼痛および感覚障害と長母趾屈筋の筋力低下を認めた場合とした。上殿神経(第4腰神経-第1仙骨神経)と下殿神経(第5腰神経-第2仙骨神経)は運動枝のみを有する。前者は、中殿筋の筋力低下や萎縮を認めた場合とし、後者は、大臀筋の筋力低下や萎縮を認めた場合とした。 また、それぞれを単独例と合併例に分類した。【結果】 神経別に分類すると、総腓骨神経障害は22/25例(88.0%)、後大腿皮神経障害は21/25例(84.0%)と多く認められ、下殿神経障害は3/25例(12.0%)、上殿神経障害は2/25例(8.0%)となった。脛骨神経障害の症例は、0/25例(0%)であり、今回の検討では認めなかった。 症状別に分類すると、後大腿皮神経+総腓骨神経16/25例(64.0%)、後大腿皮神経+下殿神経1/25例(4.0%)、後大腿皮神経+総腓骨神経+上殿神経群1/25例(4.0%)、後大腿皮神経+総腓骨神経+下殿神経群1/25例(4.0%)、後大腿皮神経+総腓骨神経+上殿神経+下殿神経群が1/25例(4.0%)であった。単独例は、総腓骨神経3/25例(12.0%)、後大腿皮神経2/25例(8.0%)であった。【考察】 梨状筋症候群は、坐骨神経の障害とされているが、今回の調査では主に総腓骨神経と後大腿皮神経による障害を多く認める結果となった。また、少数ではあるが下殿神経と上殿神経障害も認められた。つまり、梨状筋症候群の病態把握や治療には、坐骨神経のみならず、他の末梢神経障害の合併も考慮した複合的な病態把握が重要と考えられる。
著者
赤羽根 良和 永田 敏貢 齊藤 正佳 服部 潤 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

<b>【目的】 </b>外傷性頚部症候群(WAD)とは、交通外傷後の包括した臨床症状を意味し、我々はこれまでに、頭頚部移行部障害に対する運動療法の有効性について報告してきた。<br> 今回、WAD後に頚胸椎移行部障害(CTD)を呈した症例に対し、当院で実施している運動療法を行った結果、良好な経過が得られたので、その方法論について紹介する。<br> 尚、本研究は患者に対して十分な説明と了解を得た上で実施した。<br><b>【対象】 </b>2009年4月から2012年4月までに、交通外傷により頚(C)・胸椎(T)を損傷し、当院を受診した症例のうち、対象の選定を全て満たした20例(男性16例、女性4例、年齢39.6±13.4歳)を対象とした。<br> 対象の選定は、①臨床症状の主体は頚背部痛であること②頚部の伸展時痛を認めること③両肩関節の拳上時痛を認めること④C7/T1を徒手で固定すると、頸椎の伸展時痛や両肩関節の拳上時痛が消失すること⑤C7/T1の椎間関節に圧痛を認めること⑥第1肋骨(R1)に圧痛を認めること⑦消炎鎮痛剤の投与や物理療法を実施するも3ヶ月以上明らかな変化を認めないことである。これらを全て満した場合をCTDと判断した。<br><b>【方法】 </b>運動療法は患者を側臥位にさせて実施した。<br> 椎間関節に対する治療は、PTの一方の手でC7棘突起を固定し、他方の手でT1棘突起を把持する。そこから他方の手でT1を尾側方向に滑らせ、椎間関節を離解する。つづいて、深層筋群を収縮することでT1を頭側方向に滑らせ、椎間関節を閉塞する。この操作を繰り返し行うことで、椎間関節の可動域を増大させていく。<br> R1に対する治療は、PTの一方の手で患者の肩関節を拳上させる。他方の手で、中斜角筋と前鋸筋が結合するR1を尾側に押し込みながら各筋のIb抑制を行う。この操作を片方ずつ実施する。R1に圧痛が消失することを目的に実施する。<br><b>【結果】 </b>椎間関節の圧痛が消失した推移は、4週以内が13名、8週以内が20名、12週以内が20名であった。R1の圧痛が消失した推移は、4週以内が12名、8週以内が18名、12週以内が20名であった。頸椎の伸展時痛が完全に消失した推移は、4週以内が10名、8週以内が16名、12週以内が20名であった。<br><b>【考察】 </b>WADでは、頚背部痛を呈することが多く、3ヶ月以上持続すると、慢性化することも少なくない。<br> 生理学的に、頚部の屈曲運動は上位頸椎が主体であるが、伸展運動は頚椎間のみならず、可動域の少ない頚胸椎移行部間でも生じる。また、両肩関節の拳上時には頚胸椎移行部での屈曲運動とR1の拳上運動が生じる。そのため、CTDを呈すると、これらの一連の運動は制限され、疼痛が誘発される。その一方で、C7/T間を徒手で固定すると、これらの疼痛は消失する。この検査はCTDを見極めるための重要な所見であり、また、椎間関節の圧痛も、そこに病態が潜んでいるのか判断するに有効である。<br> 運動療法の目的は、椎間関節の滑り運動の誘導と、R1に付着する筋の柔軟性を獲得することである。これにより、CTDとR1の生理的な連結運動が再獲得できたことが、症状消失に至ったと考えられる。<br><b>【結論】 </b>WADでは頚背部痛を呈することが多く、その中の一つの病態であるCTDは、我々の実施している運動療法が有効と考えられた。