著者
齋藤 智也
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.244-252, 2016-08-15 (Released:2016-08-15)
参考文献数
40

オリンピックのようなマスギャザリングは,公衆衛生危機管理の重要課題である.注目度が高く,テロのリスクにも備える必要がある.生物剤によるテロは,可能性は低いが,社会的影響は非常に大きい.マスギャザリングはその対策を見直しつつ,中長期的な対応能力を底上げする良い機会である.サーベイランスは,中核的対応能力の一つである.社会的関心が高い故,より低い閾値で,より素早い対応が求められる.特に「何も起きていないことの確認」が最大の課題となる.なお,サーベイランス能力の開発は,感染症のみならず,全ての健康危機管理を念頭に置くべきである.テロ対策の文脈では,公衆衛生機関に様々な機関との連携が求められる.特に,治安部局とのリスク・脅威評価の共有や,初動対応部局との統合的運用能力が重要であり,演習による強化が不可欠である.
著者
齋藤 智也 田辺 正樹 平川 幸子
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.42-51, 2017-12-25 (Released:2019-09-12)
参考文献数
18

新型インフルエンザ等発生時には,都道府県においてそれぞれの流行状況を踏まえて対策を判断する必要がある.本研究では,地域における医療従事者と行政が連携を強化するための研修・訓練のためのシミュレーション&ゲーミングを開発し,研修会形式で実施した.医療従事者(医師または感染管理看護師)と地方自治体の担当者が5~6名の班に分かれ,それぞれファシリテーターを決め,ビデオ等によって付与されたシナリオの中で付与された課題を検討,発表,ブリーフィングを行った.アンケートでは,回答者すべてが本研修は「新型インフルエンザ等対策の強化」「行政と医師・看護師の連携強化」に資すると評価した.シミュレーション&ゲーミングは,新型インフルエンザ等対策のような健康危機管理の合意形成型の意思決定を,短時間に多数の局面について疑似体験可能であり,マルチステークホルダーの連携強化に有用である.
著者
齋藤 智也 福島 和子 阿部 圭史 氏家 無限 梅木 和宣 大塚 憲孝 松本 泰治 難波江 功二 中谷 祐貴子 中嶋 建介
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.105-114, 2015

わが国では,エボラ出血熱は,感染症法の一類感染症に位置づけられている.しかしながら,平成11年の感染症法の施行以降,これまで一類感染症であるウイルス性出血熱の感染が疑われる患者検体の検査を国立感染症研究所で実施することはあったものの,国内で感染が確認された患者はいない.<BR> 平成26年の西アフリカでのエボラ出血熱流行に対しては,厚生労働省でも3月のギニアからの第一報から情報収集を継続して状況を注視し,対応を行っていたが,8月より検疫対応及び国内対応の強化を開始した.10月末にはエボラ出血熱等対策関係閣僚会議が設置され,政府一丸となった対応を開始するに至った.一連の対応は,国内発生が非常に稀なウイルス性出血熱のような輸入感染症に対する対応体制を大きく底上げした一方で,様々な教訓を残した.今回の流行が終息したとしても,国際的なウイルス性出血熱のアウトブレイク発生リスクは今後も変わらない.今回の知見と経験を踏まえ,国内対応の観点からは,マニュアル等の改善,継続的な訓練の実施による一類感染症等に対する感染症危機管理体制の維持・向上のほか,国際的な対応への貢献という観点からも,人材育成等を推進していくことが重要である.
著者
齋藤 智也
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.244-252, 2016

<p>オリンピックのようなマスギャザリングは,公衆衛生危機管理の重要課題である.注目度が高く,テロのリスクにも備える必要がある.生物剤によるテロは,可能性は低いが,社会的影響は非常に大きい.マスギャザリングはその対策を見直しつつ,中長期的な対応能力を底上げする良い機会である.サーベイランスは,中核的対応能力の一つである.社会的関心が高い故,より低い閾値で,より素早い対応が求められる.特に「何も起きていないことの確認」が最大の課題となる.なお,サーベイランス能力の開発は,感染症のみならず,全ての健康危機管理を念頭に置くべきである.テロ対策の文脈では,公衆衛生機関に様々な機関との連携が求められる.特に,治安部局とのリスク・脅威評価の共有や,初動対応部局との統合的運用能力が重要であり,演習による強化が不可欠である.</p>
著者
齋藤 智也 福島 和子 阿部 圭史 氏家 無限 梅木 和宣 大塚 憲孝 松本 泰治 難波江 功二 中谷 祐貴子 中嶋 建介
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.105-114, 2015-06-25 (Released:2016-02-27)
参考文献数
27

わが国では,エボラ出血熱は,感染症法の一類感染症に位置づけられている.しかしながら,平成11年の感染症法の施行以降,これまで一類感染症であるウイルス性出血熱の感染が疑われる患者検体の検査を国立感染症研究所で実施することはあったものの,国内で感染が確認された患者はいない. 平成26年の西アフリカでのエボラ出血熱流行に対しては,厚生労働省でも3月のギニアからの第一報から情報収集を継続して状況を注視し,対応を行っていたが,8月より検疫対応及び国内対応の強化を開始した.10月末にはエボラ出血熱等対策関係閣僚会議が設置され,政府一丸となった対応を開始するに至った.一連の対応は,国内発生が非常に稀なウイルス性出血熱のような輸入感染症に対する対応体制を大きく底上げした一方で,様々な教訓を残した.今回の流行が終息したとしても,国際的なウイルス性出血熱のアウトブレイク発生リスクは今後も変わらない.今回の知見と経験を踏まえ,国内対応の観点からは,マニュアル等の改善,継続的な訓練の実施による一類感染症等に対する感染症危機管理体制の維持・向上のほか,国際的な対応への貢献という観点からも,人材育成等を推進していくことが重要である.