著者
キム ヒョンジン ハン ソンヨン 佐々木 浩 安藤 元一 Kim Hyeonjin Sungyong Han Hiroshi Sasaki Motokazu Ando 東京農業大学大学院農学研究科畜産学専攻 Korean Otter Research Center 筑紫女学園大学短期大学部幼児教育科 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 Department of Animal Science Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Korean Otter Research Center Department of Early Childhood Education Chikushi Jogakuen University Junior College Department of Human and Animal-Plant Relationships Faculty of Agriculture Tokyo University of Agriculture
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.29-38,

ユーラシアカワウソLutra lutraが経済成長に伴う環境変化からどのような影響を受けるのか調べることを目的に,工業集積の進む韓国慶尚南道の海岸における本種の生息痕を1982年,1991-94年,2002年および2009年にわたってモニタリングした。慶尚南道馬山地域における糞密度は,1990年代には減少傾向を示したが,2000年代後半には回復傾向に転じた。回復傾向は釜山市などでも見られた。本種が安定的に生息する海域のCODは約4mg/L以下のレベルであった。糞が多く見られたのは,岬の湾口にある磯海岸,海岸近くの小島,河川の人工湖などであり,これらは餌資源の多いことや,隠れ場所として適していることが共通していた。本種は人工護岸のわずかな隙間や,沖合の水産養殖イカダの上をサインポストとして利用しており,人工環境への適応力も備えていた。調査期間中に調査地の陸域における各種経済指標は高い伸びを示したが,湾奥部におけるカワウソが生息しない地域が若干広がったことを除くと,陸域における経済発展や開発は本種の生息に直接的な影響は与えないことがわかった。Distribution of otter spraints along sea coasts at Masan area of Gyeongsangnam-do, Korea was monitored for 27 years from 1982, 1991-94, 2002 to 2009. Densities of spraints once decreased in the 1990's. In the late 2000's, however, this turned to a tendency to increase, although recovery was insufficient. Similar recovery was also identified in Busan. Spraints were not found at areas that were far from the closed-off section of the bay by 0-9km. The otters were able to inhabit up to the vicinity of industrialized area. At coasts where otter spraints were regularly found, COD level was around 4mg/L. Spraints were often found at rocky coasts along capes, heads of bays, small islets and reservoirs, indicating that prey fish was abundant in those areas. At coasts with steep artificial walls, otters managed to find landing places by locating narrow gaps and harbors. Otherwise, they used coastal fishpens as signposts, indicating their adaptability to artificial environments. Economic indicators in the land area of the investigation place heightened considerably during the monitoring period. The above findings indicate that terrestrial economic growth does not necessarily lead to the decrease of the otter population.
著者
キム ヒョンジン ハン ソンヨン 佐々木 浩 安藤 元一 Kim Hyeonjin Sungyong Han Hiroshi Sasaki Motokazu Ando 東京農業大学大学院農学研究科畜産学専攻 Korean Otter Research Center 筑紫女学園大学短期大学部幼児教育科 東京農業大学農学部バイオセラピー学科 Department of Animal Science Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Korean Otter Research Center Department of Early Childhood Education Chikushi Jogakuen University Junior College Department of Human and Animal-Plant Relationships Faculty of Agriculture Tokyo University of Agriculture
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.29-38,

ユーラシアカワウソLutra lutraが経済成長に伴う環境変化からどのような影響を受けるのか調べることを目的に,工業集積の進む韓国慶尚南道の海岸における本種の生息痕を1982年,1991-94年,2002年および2009年にわたってモニタリングした。慶尚南道馬山地域における糞密度は,1990年代には減少傾向を示したが,2000年代後半には回復傾向に転じた。回復傾向は釜山市などでも見られた。本種が安定的に生息する海域のCODは約4mg/L以下のレベルであった。糞が多く見られたのは,岬の湾口にある磯海岸,海岸近くの小島,河川の人工湖などであり,これらは餌資源の多いことや,隠れ場所として適していることが共通していた。本種は人工護岸のわずかな隙間や,沖合の水産養殖イカダの上をサインポストとして利用しており,人工環境への適応力も備えていた。調査期間中に調査地の陸域における各種経済指標は高い伸びを示したが,湾奥部におけるカワウソが生息しない地域が若干広がったことを除くと,陸域における経済発展や開発は本種の生息に直接的な影響は与えないことがわかった。
著者
中野 智紘 安藤 元一 池田 周平 祐森 誠司 栗原 良雄 Chihiro Nakano Ando Motokazu Ikeda Syuhei Sukemori Seizi Kurihara Yoshio 東京農業大学農学研究科畜産学 束京農業大学農学部畜産学科 束京農業大学農学部畜産学科 束京農業大学農学部畜産学科 束京農業大学農学部畜産学科 Department of Animal Science Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Animal Science Faculty of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Animal Science Faculty of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Animal Science Faculty of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Animal Science Faculty of Agriculture Tokyo University of Agriculture
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.150-155,

毎年,全国でムササビの幼獣や傷病獣が保護されている。しかしながら,これらの保護個体に対する飼育管理の基礎的知見は少ない。このため,飼育管理の状況を把握することを目的に全国の動物園施設に対しアンケート調査を行うと共に,飼料給与の基礎的な知見を得るために飼育下の個体を用いて樹葉の嗜好性を試験した。アンケートでは,対象動物をムササビと他のリス科動物とし,飼養実態,繁殖状況,疾病寄生虫について調査した。リス類は1施設の飼育頭数が多く群飼育していた。導入経路は,ムササビでは野生保護個体が半数であるのに対し,リス類は施設内での繁殖個体がほとんどであった。繁殖状況では,ムササビは13年間飼育していて1回だけ繁殖したといった例があげられた。リス類は年に1~2度出産するといった安定した成績がみられる施設が多かった。給与飼料は,ムササビでは樹葉を給与している施設が多く,他には果物,根菜,葉菜を給与し,リス類では果物類に加え動物質の飼料や種子,堅果などが給与されていた。これら飼料の栄養成分としてムササビは食物繊維含量が高く,リス類ではタンパク質,脂質含量,エネルギーが高い傾向にあった。ムササビ,リス類共に寄生虫は少なく,ムササビでは肺炎,リス類では外傷由来の死亡原因が多かった。飼育個体を対象とした樹葉の嗜好性について,厚木キャンパス内の16の樹種を用いて,カフェテリア方式で調査した。その結果,ニセアカシア,イヌシデ,コナラの順に嗜好性は高く,逆に,イチョウ,マツ,ツバキ,スギの順に嗜好性は低かった。この結果は,一般的な森林に棲息するムササビの食性調査のデータと同様の傾向と考えられた。