著者
Kishinouye Fuyuhiko
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.377-380, 1957-09-25

建物の固有振動周期を知るのに遠心力を利用した起振機を用いる場合,起振機の車輪を速く回転させて放すとその回転が次第に遅くなり建物の振動は小さくなるが,起振機の回転が建物の固有周期と共振する所では振幅の極大が現われることはよく知られている.共振の場合には振幅ばかりでなく振動の位相も大きく変わる筈であるので,筆者は起振機と建物の振動との位相差を測定し固有周期を見出した.実例として東京都内の豪徳寺,経堂,千住の3個の大きさ,構造共に殆ど等しく,地盤の追うアパート建築について行つた実験結果を示した.
著者
Kishinouye Fuyuhiko
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.457-459, 1951-03-25

栃木縣上都賀郡落合村大字長畑の森東にある木曾山に今市地震によつて起された長さ50m巾40mの余り大きくない地辷りを,一端にらせんばねをつけた鋼線を二地點間にはりその線の動きと變えて記録した.その結果は第1圖の通りで,觀測したのは1950年3月17日から5月15日までで,途中故障が多かつたが4月10日頃までは辷りが進んでいたが,それ以後は止んだ.後の方で逆に動いているように見えるのは,地辷りの斷面は半圓形であると考えると當然のことゝ見做される.この測定の目的は地辷が其の後も大きくて災害を起す恐れがあるかないかを知るのであつた.終りにこの觀測には前記の土地の福田茂一郎氏の協力によるので,こゝに感謝する.
著者
Ikegami Ryohei Kishinouye Fuyuhiko
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.121-128, 1950-10

從來大地震の際の加速度推定の資料として顛倒した墓石等を用ひて,その巾と高さの比から推定する事がしばしば行なはれて來た.然し加速度の推定を唯單に墓石の巾と高さとの比のみから行ふ事は不十分であると考へる.即ち大地震後の現地調査にあたつて,我々は比の値が大でもその墓石自身の大きさが小さいために顛倒し,逆に比の値が小であるにも係らずその大きさが大であるために顛倒しなかつた例をしばしば發見するのである.昭和21年12月21日の南海地震の際にもこの例を海南市と木本市に於て發見し,これを解決する一つの方法を發表した.今回の今市地震に於ても今市町内の2ケ所(第2圖A,B)に於てこの例を見出し,前回の方法と同様な取扱ひによつて加速度を推定した.その結果として本震の週期を0.4秒とすると加速度は夫々2ケ所で912ガル及び949ガルとなつた.これらの値は被害程度から考へて一見過大のようであるが,然し次の理由から必ずしもそうでないと考へる.即ち加速度の値が大であつても,振幅が小(週期が短)であつて且っその加速度を持った振動が長く續かなければ,木造家屋のような建造物には大して被害はなくてすむと考へられる.事實野外調査の結果今回の地震は大振幅の振動は比較的早く減衰したらしい,又被害を受けた建造物は"大谷石"で積み上げたものや,又は石貼の石造建物が大多數であつて,木造家屋の被害は殆どなかつた事を考へ合せると以上の推定が甚しくは間違つてゐないと考へられる.以上の事から考へて將來大地震の加速度の推定にあたつては,墓石等の比のみから行ふ事は過小に推定する危險があるから,その墓石自身の大きさも考へに入れて行ふ必要があると考へる.又ある地點での加速度の大きさのみを問題とせず,その繼續時間とか,振幅(又は週期)の大きさ迄も考慮に入れるべきであると考へる.
著者
Kishinouye Fuyuhiko Kotaka Mieko
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.171-176, 1959-05-15

脈動と台風との関係について多くの研究があつたが,脈動の観測は1個所の場合が多かつた.気象庁から1956年の脈動観測報告が出版されたので,それを材料として日本を脈動がどのように伝わるかを調べた.台風の中心示度,台風の進行速度,観測所における風速と脈動の関係を見た.その関係はないようであつた.
著者
Kishinouye Fuyuhiko Shida Isamu
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.183-188, 1959-05-15

脈動が地盤によつてどのように違うかを見るために,前回は砂丘の上で測定したが今回は冲積地である酒田市街の南東端において同様の観測を行つた.気圧配置は「西高東低」で酒田においては少し雪を伴つた強風が吹いていた.観測結果は図に示した通りである.伝播速度は1000m/sで周期2.8秒で,前回は750m/sで4秒であつたので,これ等の値から波長を求めると殆ど等しい.このような結果から地盤の影響について結論を出すにはまだ早いと思う.伝播方向は,日本海が荒れていたにも拘らずその方をむかず,前回と同様脈動は北太平洋の波によつて起されるように見える.観測点CとDとは新井田川の両岸にあつた.以前に東京附近で多摩川の両岸で脈動の差異を認めたのでその点を調べたが,その差は認められなかつた,ここは地質の差がはつきりした所でないので脈動に差が表われなかつたのかも知れないが,この問題は更に他の場所で調べて見たい.
著者
Kishinouye Fuyuhiko
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.207-210, 1955-08-10

重い物体が落ちた時に起る地動を測定した結果を,医学又は生理学的の方から研究された正弦振動に対する人体感覚と比較し,更に地盤の異なる所で求められた震度階と地動加速度の関係とも比べた.その結果,衝撃性地動は正弦振動よりも人体には激しく感ずることと,震度階も土地の固有振動周期によつて加速度との関係は変はることを求め得た.