著者
有田 豊 GORBUNOV Oleg G. MOHAMED Maryati
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.131-142, 2003-03-30

ボルネオ島サバ州のマリアウベースン保護地域で第一著者の有田は2001年5月6-12日の短期間にスカシバガ科の調査を行った.スカシバガ科の調査は合成性フェロモンを用いて行ったが少数の個体が得られたのみであった.そのうちの2新属2新種と1新種を記載した.Bidentotinthia Arita&Gorbunov gen.nov.ヒメスカシバガ亜科のTinthiini族のTinthia Walker,1865,Microsphecia Bartel,1912,Zenodoxus Grote&Robinson,1868,Sophona Walker,1856諸属に外形が似ているが,♂ゲニタリアが異なるので新属を設けた.Bidentotinthia borneana Arita&Gorbunov sp.nov.(Figs 1,4,6a-d)Trichocerota brachythyra Hampson,1919にいくぶん似ているが,ラビアル・パルプス,脚,腹部などの色彩が異なることで区別される.合成性フェロモンに1雄のみ飛来した.Tarsotinthia Arita&Gorbunov gen.nov.V字型の横脈や長い後脚,♂ゲニタリアなどによってOsminiini族のAschistophleps Hampson,1893,Pyrophleps Arita&Gorbunov,2000両属と区別される.Tarsotinthia albogastra Arita&Gorbunov sp.nov.(Figs 2,5,7a-d)長い後脚と腹部裏面が白いことで他の種類と分離できる.合成性フェロモンに1雄のみ飛来したScoliokona hyalina Arita&Gorbunov sp.nov.(Figs 3,8a-d)S.tetrapora(Diakonoff,1968),S.heptapora Kallies&Arita,1998と似ているが,これら2種とは後翅に幅広い外縁帯がないことや♂ゲニタリアで区別される.合成性フェロモンに3雄のみ飛来した.
著者
秋山 弘之 山口 富美夫 Mohamed Maryati
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.135-141, 1999-02-28

マレーシア,サバ州キナバル山の登山道沿い,標高3300mの周辺から蘚類スギゴケ科Polytrichadelphus属の新変種P. archboldii var. kinabaluensisを報告した。この植物は,雌包葉の先端が朔に届くほど著しく短い朔柄を有していることで基本変種から区別される。1997年1月および12月の2回現地で観察したが,両シーズンとも多くの群落で胞子体を旺盛につけていた。本属はおもに南米を中心に分布しており,アジア・太平洋地域ではニュージランドとニューギニアからそれぞれ1種が報告されているのみである。北半球からは初めての産地であり,すでにキナバル山から見つかっているナンジャモンジャゴケなどともに植物地理学的に興味深い分布を示す蘚類の一例である。