著者
出口 博則 山口 富美夫 坪田 博美 嶋村 正樹 榊原 恵子 倉林 敦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

7種のセン類,2種のタイ類,1種のツノゴケ類を含む,10種類のコケ植物について,葉緑体ゲノムの全塩基配列を新たに決定した.これまで,セン類は,タイ類やツノゴケ類と比べ,葉緑体ゲノムの構造が大きく異なっていると考えられていたが,セン類の系統基部に位置する分類群では,タイ類やツノゴケ類と非常によく似た葉緑体ゲノム構造をもつことが分かった.進化を通じておきたいくつかの遺伝子の欠失イベントは,セン類の主要分類群の分岐順序を考える上で有効な系統マーカーとなることが示唆された。高等植物の葉緑体で知られる,線状ゲノム分子,多量体ゲノム分子がコケ植物にも存在することを初めて明らかにした.
著者
横山 勇人 山口 富美夫 西村 直樹 古木 達郎 秋山 弘之
出版者
日本蘚苔類学会
雑誌
蘚苔類研究 (ISSN:13430254)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.159-197, 2007-10
被引用文献数
1

2007年6月までに学術印刷物や蘚苔類標本集によって屋久島から報告されたすべての蘚苔類,ならびに著者らによる調査で屋久島での生育を新たに確認した蘚苔類についてまとめ目録とした.その結果,蘚類44科160属355種1亜種18変種2品種,苔類37科87属304種2亜種2変種,ツノゴケ類1科5属6種がこれまでに知られていることになる.この数字には屋久島からの報告が疑われる13種は含まれていない.また屋久島で採集された標本に基づいて新分類群として記載発表されたものについては,現在の取り扱いついての情報を別記した.この報告で新たに屋久島から報告する種については,種名の頭に星印(*)を付加し,証拠標本を列挙した.なお多数の証拠標本がある場合は,主要なもののみを記載した.
著者
秋山 弘之 山口 富美夫 Mohamed Maryati
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.135-141, 1999-02-28

マレーシア,サバ州キナバル山の登山道沿い,標高3300mの周辺から蘚類スギゴケ科Polytrichadelphus属の新変種P. archboldii var. kinabaluensisを報告した。この植物は,雌包葉の先端が朔に届くほど著しく短い朔柄を有していることで基本変種から区別される。1997年1月および12月の2回現地で観察したが,両シーズンとも多くの群落で胞子体を旺盛につけていた。本属はおもに南米を中心に分布しており,アジア・太平洋地域ではニュージランドとニューギニアからそれぞれ1種が報告されているのみである。北半球からは初めての産地であり,すでにキナバル山から見つかっているナンジャモンジャゴケなどともに植物地理学的に興味深い分布を示す蘚類の一例である。
著者
秋山 弘之 山口 富美夫
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

(1) 屋久島の蘚苔類相については, 新種2種を含む, 蘚類44科160属, 355種1亜種18変種2品種, 苔類37科87属304種2亜種2変種, ツノゴケ類1科5属6種が屋久島から報告されていることを確認した.我々の調査手法により, 68年ぶりに生育を確認されたフウチョウゴケに代表されるように, 多数の絶滅危惧植物の屋久島における分布状況が把握された. その一方, 20年前には豊富に産していた葉上着生苔類の減少が著しいことが明らかと成った.(2) 屋久島における蘚苔類の種多様性は, 淀川小屋周辺の林内にあることがわかった. 一方, 屋久島低地亜熱帯林から報告されている種については, 今回の調査でも確認することができない種が少なくなく, この地域での保全活動が緊急であることが示された.(3) 屋久島産ケゼニゴケには, 2倍体と3倍体の集団があり, それぞれ低地と高地にすみわけを行っていた.また, 屋久島3倍体は本州の3倍体集団に較べ, 琉球地域の2倍体集団に遺伝的により近いことがわかった.