著者
西口 光一 Nishiguchi Koichi ニシグチ コウイチ
出版者
大阪大学留学生センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学留学生センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.21-31, 2010-03-31

【特集OUSカリキュラムの開発(3)】従来の漢字教育では教科書等の主教材での漢字学習と漢字教材での漢字学習は必ずしも十分に関連づけられていなかった。本稿では、従来の日本語能力試験2級漢字1023字を6段階に分けて、各漢字に最も基本的と考えられる漢字語を配当して漢字学習のシラバス(漢字学習ロードマップ)を作成し、それに基づいて開発された漢字教材とウェブでの漢字学習システムについて論じる。新たな漢字教材は、教科書等での漢字学習と併せて複線的な漢字学習システムを構成すること、同教材に準じて開発されたウェブでの漢字マスタリー学習システムとともに利用することで漢字知識を一定水準まで平準化するための補充学習を有効に行うことができること、及び漢字ロードマップにはそれを参考にしつつ中級以降の教材作成を合理的に行うことができるという利点があることを明らかにした。
著者
西口 光一 ニシグチ コウイチ Nishiguchi Koichi
出版者
ヴィゴツキー学協会
雑誌
ヴィゴツキー学 (ISSN:13454900)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.27-33, 2006-07

In recent years Vygotskian theory on the development of thinking and speech have been attracting attention of second language researchers and teachers. However,nobody has ever theorized second language acquisition or development in the spirit of Vygotskian theory. In this paper I first paves the ground by summarizing Vygotsky's theory on the development of verbal thinking and also his discussions on foreign language learning/acquisition. Then I propose a theory of second language development from Vygotskian perspective
著者
西口 光一 Nishiguchi Koichi ニシグチ コウイチ
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.15, pp.43-53, 2011

本稿では、基礎日本語教育のカリキュラム開発と教材作成において基礎とされた第二言語の習得と習得支援の原理について議論する。広く基礎となる言語観としてはバフチンの対話原理が採用された。そこでは、文ではなく発話と対話性の重要性が強調される。そして新カリキュラムの要件として、(1)文型・文法事項の系統的学習、(2)語いの体系的学習、(3)言語活動目標が設定されていること、が提示された。次に、新カリキュラムでは、学習者が本文を習得しさえすれば学習言語事項の習得はすべて達成されるマスターテクスト・アプローチを採用し、マスターテクストには、(1)言語事項の収用元、(2)ユニット学習の道じるべ、(3)言語事項の借用元、の役害」があることを論じた。さらに、学習方法として、受動的理解のフェイズ、模倣とローカルな対話のフェイズ、自己目的のための再構成のフェイズ、自己の言葉の再利用のフェイズが想定されていることを明らかにし、各々の方法を解説した。最後に、自己修正、差し替え、補い、代替語提示などを伴う、教師によって介助された各種の言語活動従事経験を通して学習者が有効に第二言語習得を進められることを論じた。
著者
西口 光一 Nishiguchi Koichi ニシグチ コウイチ
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-11, 2018-03-31

Based on the anthropological necessity entailing three moments of dialectics of the society, i.e. externalization, objectivation and internalization, the sociology of knowledge advocated by Berger and Luckmann (1966) and Berger (1967) offers language educators with important insights on humanity and its verbal behavior. The paper begins with the brief explication of the sociology of knowledge, and proceeds to the discussions on humanity and verbal behavior within the sociological theory. It also touches on the basic phenomenological perspective of the theory, which places language at the center of our world-building activities. While pointing out the three dimentional nature of utterance including situated action, situation-transcending historical aspect and aspect of code system, the paper concludes that language educators need to pay attention to the nature of language discussed in this paper in planning, designing and implementing language teaching.社会の弁証法の3つの契機である外在化と客体化と内在化を含む人間学的必然性を背景として、Berger and Luckmann(1966)とBerger(1967)により提唱された知識社会学は、人間観と言語観に関して言語教育者に重要な洞察を与えてくれる。本稿は、知識社会学とは何かという議論から始まり、知識社会学における人間観と言語観の議論に進む。さらに、知識社会学の現象学的な観点にも言及する。現象学的な観点では、言語がわたしたちの世界構築の営みの中心に置かれる。最後に、発話は状況的行為と超状況的な歴史的側面とコードのシステムとしての側面という3つの側面を有することを指摘し、教育や授業の企画・計画・実践において第二言語教育者は、発話のこのような成り立ちと特性を十分に考慮しなければならないと結論づける。
著者
西口 光一 ニシグチ コウイチ Nishiguchi Koichi
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.18, pp.41-54, 2014

本稿では引用等を手がかりとし文献を辿って、ヴィゴツキーとパフチンがマルクスから何を引き継ぎそれをどう発展させたかを検討した。その結果、ヴィゴツキーとパフチンは共にマルクスの人間観や意識観から意識の記号による被媒介性という見解を導いていること、そしてヴィゴツキーは一貫して発達研究に関心を寄せていることが明らかになった。それに対し、パフチンは意識の記号による被媒介性の見解をさらに推し進めて、イデオロギーと心理の関係、心理と記号の関係、言語活動における心理過程と記号の聞の往還運動、そして対話原理へとさせていることが明らかになった。パフチンのそのような議論は、人と人の接触・交流にこれまでにない新たな視点を提供するものとして、第二言語の習得と教育の研究の立場から大いに注目される。