著者
藤澤 隆史 高見 和彰 Norman D. COOK
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.25-34, 2004-05-31 (Released:2010-10-28)
参考文献数
32

感情的発話のピッチ曲線に見られる“音楽性”,特に和音性の定量的評価のために,2つの新たな手法を開発した.1つ目はピッチ曲線の中で用いられた主要なピッチを抽出するための手法で,ピッチ曲線を時系列にかかわらずピッチ軸上へと射影し,1次元の散布データに変換する.その後,正規分布の合成モデル(cluster)を用いて,評価にかかわる主要なピッチ群を特定した.2つ目は得られた主要ピッチ群から,和音性を定量化するための手法で,音楽知覚の2つの定量化モデル(不協和度,緊張度とモダリティ)を用いて,発話のピッチに含まれる和音性の定量化を行った.次にこれら2つの手法の評価を行うために感情的発話に関する実験を行った.まず感情的な発話を収集し,次に得られた発話データのピッチ成分のみの情報で新たな被験者に評価させた.上記の手法で,全ての発話文について各指標を算出し,感情状態の評定値との関連性を検討した結果,ポジティブな感情状態であると評価された発話群は,ネガティブな発話群に比較して,長調的な成分が含まれること,またネガティブな発話群には,短調的な成分,不協和的な成分が相対的に多く含まれていることが明らかになった.