著者
崎山 理 Osamu Sakiyama
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.353-393, 2012-02-27

日本語は,北方のツングース諸語および南方のオーストロネシア語族の両文法要素を継承する混合言語である。日本語の系統もこの視点から見直そうとする動きがすでに始まっている。これまでに発表したいくつかの拙稿では日本語におけるオーストロネシア系語源の結論部分だけを述べたものが多かったが,本稿では音法則を中心とした記述に重点を置き,意味変化についても民俗知識に基づいた説明を行った。引用語例は筆者がすでに述べたものも含まれるが,多くは本稿で初めて提示するものである。他者によって言及されている語源説についてはその妥当性を検討した。また,論述の過程において,日本語音韻史でこれまで隔靴掻痒の感が否めなかったハ行・ワ行歴史的仮名遣いの表記上の問題点を摘出した。
著者
崎山 理 Osamu Sakiyama
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.465-485, 2001-03-30

本論は,筆者が手掛けてきたオーストロネシア語比較言語学のわくを,日本語の系統論にまで拡大しようとするものである。日本語の系統は,現在も,南イソドあたりまでルーツを求めにゆくなど,けっして安定した研究期にはいったとは言えない側面がある。筆者は,このような異常な状況を生み出してきたのは,縄文時代以降,日本語が形成されるにさいして経過した長い歴史,またそれと関連するが,日本列島に居住していた異なる民族間で発生した言語混合による結果であるととらえ,すでに幾本かの論文を発表してきた。さいわい,昨秋,日本言語学会におけるシソポジウムで,これまでの論拠を集大成する機会が与えられたのを機に,会の限られた時間内で十分報告できなかったこと,またそのときのコメントにも答える形で,本論を仕上げている。