著者
今井 長兵衛 池本 孝哉 高木 正洋 矢麦 寿雄 POHAN Wesly HASIBUAN Halomoan SIRAIT Halomoan PANJAITAN Willem
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.293-300, 1988
被引用文献数
2 12

インドネシア国北スマトラ州の1海岸村落に生息するマラリア媒介蚊Anopheles sundaicusの発生源を, 日本・インドネシア共同, 北スマトラ地域保健プロジェクトの一環として, 1980∿1985年に調べた。主要発生源は開放的な氾濫原, ココヤシ裁培用の灌漑水路, 自家消費用の小規模な養魚池, 道端の水たまりであり, これらはいずれも年間の最高潮位かそれと同等の高潮位のときにのみ。潮汐作用の影響を受ける高塩分濃度止水域に分布していた。他方, 毎日の潮の干満の影響を受ける感潮域低湿地, 自然植生に密に被覆された水域, 水田, および低塩分濃度(おおむね0.1%以下)の水域に位置する養魚池は発生源として不適であった。浮游藻類やウキクサ等は時に幼虫と共存していたが, それらの繁茂していない水域に, より多数の幼虫が生息していた。好適な発生源は年間最高に近い潮位が記録された直後の1985年5月においても, 感潮域低湿地に沿った地域や河口付近など, 比較的限られた地域にのみ分布していた。