著者
中沢 志保
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.51-63, 2007-01-31

原爆投下をめぐる問題は,戦後60年余りが経過した現在においてもなお,歴史家や国際政治学者などの重要な研究対象となっている。また,アメリカ国内の状況に注目すると,この問題の理解において,アメリカ政府および一般世論と研究者との間に大きな隔たりが存在することが分かる。アメリカの政府や国民の多くは「原爆投下は戦争を早期に終結させるために導入された正当な手段だった」と主張する。これがいわゆる公式解釈と称される立場である。これに対して,それぞれの研究視点からこの公式解釈を批判し再検討するのが研究者の立場である。本稿は,公式解釈の形成に多大な貢献を果たしたと言われるヘンリー・スティムソン(原爆投下時の陸軍長官)の論文と回顧録の内容を考察するものである。公式解釈に対する批判から出発したはずの原爆投下決定に関するこれまでの研究を吟味すると,これらの先行研究がスティムソンの論文ないし回顧録を十分に考察しきれていないことに気づくからである。この論文と回顧録を再検討することにより,公式解釈の前提,およびその後の諸研究の基盤を検証しなおすことができると考える。

言及状況

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スティムソン論文(1947.02) しかし,アメリカが無期限にこの(核独占の)立場を保持できるわけではない。この分野の 基本的な情報は科学者の間では常識になっているからである。さらに,より容易で安価な生産 技術が開発されれば,小国や集団(組織)でさえこの開発は可能である https://t.co/rKLKLbdXDK
原爆投下について「原爆投下は戦争を早期に終結させるために導入された正当な手段だった」っていう解釈はもう異なってるんだけど、一般的に広がっているよね話は以下のごとく。 「原爆投下決定における「公式解釈」の形成とヘンリー・スティムソン」 https://t.co/0lgCdpJSZI https://t.co/pCkRMkGNBD

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