- 著者
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高橋 吉文
- 出版者
- 北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院
- 雑誌
- メディア・コミュニケーション研究 (ISSN:18825303)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, pp.57-122, 2010-05-25
隠喩と変態との関係をドイツの思想家ブルーメンベルク等の隠喩観を対象として論じた『隠喩論III』と、ブルーメンベルクの思考の表舞台となっている基底隠喩間の(すなわち著作間の)配列に秘められていた「V字プロセス」(高橋)構想を明らかにした『隠喩論IV』を承けて、本論考『隠喩論V』では、ブルーメンベルクが概念体系の最終的根拠として設定した「絶対的隠喩」の実態を、『世界の読解可能性』において考察する。そこにおいて絶対的隠喩として明示される回数はわずかしかないが、それらが絶対的隠喩とされ、他のケースが隠喩や隠喩態、修辞と表現される基準の曖昧さ、絶対的隠喩の恣意性等、絶対的隠喩概念の不可解な非一貫性が確認される。しかし、それに続いてなされる絶対的隠喩言及箇所の具体的な分析から、著作全体の底にブルーメンベルクが設定した全体構想の描きだす思考の母型回路(「V字プロセス」)と、非-人間的「洞察」Einsichtenを志向するその著作の最終的目的、そしてブルーメンベルクによる絶対的隠喩の不可解な投入に隠されている「西洋文学の象徴体系」(高橋)に即した暗号的機能が明らかにされる。