- 著者
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竹下 昌志
- 出版者
- 北海道大学大学院文学研究院応用倫理・応用哲学研究教育センター
- 雑誌
- 応用倫理 (ISSN:18830110)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.3-20, 2023-03-31
近年、私たちがより道徳的になる方法の1つとして、道徳的エンハンスメントが提案されている。道徳的エンハンスメントとは、ある道徳的主体の道徳的能力の改善や道徳的能力の獲得・選択を目的にした何らかの処置や介入のことである。道徳的エンハンスメントの方法として多く議論されているのはバイオエンハンスメントであるが、これは個人の自由や自律性を損なうという懸念がある。そこで、近年のAIの発展を受け、道徳的AIエンハンスメントが提案されている。提案されている道徳的AIエンハンスメントには、道徳的判断を下しユーザーに伝えるAI、ユーザーに助言するAI、ユーザーと議論するAIがある。しかし、道徳的AIエンハンスメントには、道徳的エンハンスメントに成功しないのではないか、AIの助言にしたがうことは問題があるのではないか、などの指摘がなされている。そこで本稿では、道徳的AIエンハンスメントの種類や、道徳的AIエンハンスメントが何を改善するのかについて整理した後、六つの批判を取り上げ、それらに対して反論することで道徳的AIエンハンスメントを擁護する。また既存研究でほとんど擁護されていない、質問を受けて答えるだけのAIによる道徳的AIエンハンスメントも擁護する。