著者
愛敬 浩二
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5/6, pp.3-26, 2005-03-30

英語圏の法哲学やイギリスの憲法理論においては一般に,「法の支配」の多義性・論争性が強調されるので,「法の支配」を「善き法の支配rule of good law」と混交する考え方は消極的に評価される.他方,日本の司法制度改革を理論的に主導した佐藤幸治の議論の特徴は,「法の支配」それ自体が本来的に「善きもの」であるかのように語る点にある.この語り口を可能にするのが,「法の支配」と「法治主義」の法秩序形成観における差異を強調し,前者の優位を論ずる佐藤の独特な「法の支配」論である.本稿は,戦後公法学の論争上に佐藤の「法の支配」論を位置づけた上で,現代イギリス憲法学の理論動向を参考にしながら,佐藤の憲法学説を批判的に検討する.そして,佐藤の議論のように,政治道徳哲学への越境を禁欲し,法理論の枠内で「法の支配」を厳密に概念構成する学説が孕む問題性を明らかにする.

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愛敬浩二「「法の支配」再考-憲法学の観点から」東京大学社会科学研究所・社會科學研究第56巻第5/6(2005年)https://t.co/ALUnv6eILg 佐藤幸治教授の「法の支配」理解(の周辺)および司法制度改革審議会意見書についての批判的検討。佐藤・法の支配観念の特異性。
愛敬浩二 法の支配再考 PDF http://t.co/QzMxLbsytm

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