著者
田中 悟 林 秀弥
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.135-162, 2010-01-27

本稿では, わが国のパテントプールに対して競争政策上問題とされたリーディングケースである「パチンコ機特許プール事件」(平成9年8月6日公正取引委員会勧告審決)についての法と経済学的接近が行われる. そこでは, この事件に対する公正取引委員会勧告審決が認定した事実そのものに遡って, パテントプールがもたらした競争上の効果についての検討が加えられる. 本パテントプールが形成された歴史的経過とその変遷が吟味された後, パテントプールに集積された特許権をめぐる特許引用関係を用いたネットワーク分析を通じて, これらの特許権の性格が検討される. こうした分析を通じて, パテントプールに集積された特許権がパチンコ機製造にとって必要不可欠なものであり, 公取委審決で問題とされたパテントプールを通じた参入排除が実効性を有していたことが明らかとされる.これらの帰結をベースにして, 本パテントプールに関して行われた審決の独占禁止法および競争政策上の意味についての考察が行われる.

言及状況

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知的財産権は、独禁法と相反する、私的独占を認める権利です。従って、知的財産をからめて独占しようとする場合は、知財権を不当に使った私的独占として解釈することが自然であると感じます。 公正取引委員会のパテントプールに係る独禁法の考え方においては、「特段の合理的な理由なく、特定の事業者にのみ①ライセンスすることを拒絶する、②他のライセンシーと比べてライセンス料を著しく高くする、③規格の利用範囲を制 ...
あります。パチンコ機メーカーの団体が、その特許を使わないとパチンコ台が作れないという標準特許のパテントをプールして、新規業者を参入させなかったことが、独禁法にあたるとした例があります。 http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/bitstream/2261/43897/1/shk061002008.pdf http://www.jftc.go. ...

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