- 著者
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田中 悟志
- 出版者
- バイオメカニズム学会
- 雑誌
- バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.2, pp.87-92, 2015 (Released:2016-04-15)
- 参考文献数
- 34
- 被引用文献数
-
2
経頭蓋直流電気刺激法(transcranial Direct Current Stimulation:tDCS)は,頭蓋の外に置いた電極から直流電流を与え,電極直下の脳活動を修飾する手法である.従来から使用されている経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)に比べ,装置が小型で扱いやすく,また重篤な副作用の報告がないことから神経・精神疾患,脳血管障害に伴う機能障害に対する新たな電気生理学的治療法として脚光を浴びている.本稿では,tDCS による手の感覚機能の向上とその臨床応用に関して,触覚,痛覚,痒みを具体例として最新の研究についてまとめた.運動機能を対象とした研究と異なり,手の感覚を対象としたtDCS 研究は報告の数もまだ少なく,萌芽的段階にある.しかし,臨床疾患を対象とした研究では,触覚弁別能力の向上や痛覚抑制などが報告されている.今後研究成果を積み上げることで,tDCS による手の感覚の制御が可能になり,手の感覚障害を改善するための新たな機能的治療法として応用できる可能性がある.