著者
久木田 水生 大澤 博隆 藤原 広臨 林 秀弥 平 和博 伊藤 孝行 大谷 卓史 笹原 和俊 中村 登志哉 村上 祐子 唐沢 穣
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、第一に、インターネット上の悪質な情報の流通とそれに起因する現代の諸問題の根本的な要因・メカニズム・影響を明らかにする。第二に、そのような問題に対処するための新しい情報リテラシーの概念を探求し、その基礎になる技術哲学理論を構築する。第三にその概念と理論に則した情報リテラシー向上のための方法を探求する。このことによって本研究は情報技術と社会が互いに調和しながら発展していくことに貢献する。
著者
林 秀弥
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.9-34, 2017

<p>近年、諸外国の移動通信事業を中心に、「ゼロレーティング」(zero-rating)と呼ばれる手法によるサービスが提供されている。わが国においても一部の格安スマホ事業者(MVNO)により、当該サービスの提供が開始されている。「ゼロレーティング」とは、「特定のコンテンツあるいはアプリケーションの利用に対して、使用データ通信量をカウントしない、したがって、その使用量によって生じる料金を発生させず、あるいはデータキャップがある場合にはデータキャップのための使用量計算から除外するサービス」のことであり、データ料金の一部をエンドユーザーに課金しないビジネスモデルのことである。これは、一種の顧客獲得のためのサービス提供であり、個々の企業の事業戦略に応じて様々な形態をもって行われる。「対象となる音楽・動画ストリーミング・サービスを利用する際、パケット量を月間のデータ通信量にカウントしない」というのがその典型である。本稿は、ゼロレーティングが今後本格化した場合、公正競争と利用者利便を確保する上で、競争政策上、留意すべき点は何かついて、欧米の議論の紹介を通して検討を行うものである。</p>
著者
林 秀弥
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.440-446, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)

2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震,2019年の台風19号等では,従来の行政主導・中央集権型のトップダウンの公助による災害対策の限界が強く指摘されている。また,戦後の災害対策は,ダムや堤防といったハードの整備に重点が置かれてきたが,公助の限界を踏まえ,住民自身による自助やコミュニティ内の助け合いである共助を組み合わせた災害対策が求められている。そこで,災害対策基本法で規定された地区防災計画制度によるICTを活用した住民主体の自助・共助によるコミュニティ防災の強化策について,法律学の観点から社会実装のための考察を行う。具体的には,過去の先行研究を踏まえつつ,ICTを活用した防災・減災の強化の在り方について提言を行う。
著者
林 秀弥
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.29-65, 2010

近時, 世界的に, 知的財産権を悪用した反競争的行為が問題となっている. 米国においては, Rambus事件やQualcomm事件, N-Data事件等において, 標準設定にからんだ特許権の不当な行使が問題となっている. また, 欧州では, Microsoft事件(2004年3月24日欧州委員会決定, 2007年9月17日第一審裁判所判決)において, Microsoft社が, ウィンドウズOSが搭載されたパソコンと, Microsoft製でないワークグループ・サーバーとの相互運用性(interoperability, なおこれに関する情報は知的財産権として保護されている)を意図的に制限することにより, また, 競争に直面していたウィンドウズ・メディア・プレイヤーをほとんどのパソコンに搭載されているウィンドウズOSにバンドル販売することにより, 同社はEUにおけるパソコンOSの独占的地位を「てこ」として用いることで市場支配的地位を濫用したとされた. その結果, 同社には, 技術情報の開示, AV再生ソフト未搭載版のWindowsの供給等, 厳しい是正措置が課されたほか, 4億9720万ユーロにも上る巨額の制裁金が課せられるに至った. 本稿は, この欧州Microsoft事件に特に焦点を当てることにより, 知的財産権を利用した市場支配力の濫用と競争法(独占禁止法)の関係について検討するものである.The European Court of First Instance ruled in 2007 (Case T-201/04) that the Commission's 2004 Decision (Commission Decision of 21/04/2004, Case no COMP/C-3/37.792) against Microsoft under Article 82 of the EC Treaty should be upheld on all substantive grounds of appeal (namely, the disclosure of interoperability information and the bundling of the Windows Media Player with the Windows PC operating system), and that the record fine of 497 Million Euros imposed on Microsoft should also stand. "Dominant companies have a special responsibility to ensure that the way they do business doesn't prevent competition on the merits and does not harm consumers and innovation" said the former European Competition Commissioner Mario Monti. "Today's decision (i.e., CFI decision on September 17 of 2007 - note by the author) restores the conditions for fair competition in the markets concerned and establishes clear principles for the future conduct of a company with such a strong dominant position," he added. Why do dominant companies have the "special responsibility"? What is "fair competition" in a rapidly changing IT industry? Focusing on the Microsoft Case in EU, this article undertakes a comparative study on anticompetitive exclusion among the United States, Japan, and EU competition law. And then, this article is trying to tackle these difficult questions above mentioned.
著者
林 秀弥
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社会科学研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.29-65, 2010

近時, 世界的に, 知的財産権を悪用した反競争的行為が問題となっている. 米国においては, Rambus事件やQualcomm事件, N-Data事件等において, 標準設定にからんだ特許権の不当な行使が問題となっている. また, 欧州では, Microsoft事件(2004年3月24日欧州委員会決定, 2007年9月17日第一審裁判所判決)において, Microsoft社が, ウィンドウズOSが搭載されたパソコンと, Microsoft製でないワークグループ・サーバーとの相互運用性(interoperability, なおこれに関する情報は知的財産権として保護されている)を意図的に制限することにより, また, 競争に直面していたウィンドウズ・メディア・プレイヤーをほとんどのパソコンに搭載されているウィンドウズOSにバンドル販売することにより, 同社はEUにおけるパソコンOSの独占的地位を「てこ」として用いることで市場支配的地位を濫用したとされた. その結果, 同社には, 技術情報の開示, AV再生ソフト未搭載版のWindowsの供給等, 厳しい是正措置が課されたほか, 4億9720万ユーロにも上る巨額の制裁金が課せられるに至った. 本稿は, この欧州Microsoft事件に特に焦点を当てることにより, 知的財産権を利用した市場支配力の濫用と競争法(独占禁止法)の関係について検討するものである.
著者
林 秀弥
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、米国における放送・通信分野に関する企業結合規制及び反トラスト法に基づく企業結合規制の内容と両者の競合関係、これまでに多数行われてきた大型合併案件に関する競争当局と規制当局の判断等に着目し、競争当局による競争の実質的減殺要件や問題解消措置、規制当局による公共の利益や視聴者・利用者保護の観点からの問題解消措置など二元規制の要件や運用上の課題を明らかにすることにより、放送と通信の融合・連携が進展していく渦中にある我が国の放送・通信分野の企業結合規制の新たな枠組みのモデルや在り方について検討を行った。
著者
林 秀弥
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.157-185, 2004-03-18

本稿は,独占禁止法上の企業結合規制における「有効な牽制力ある競争者」概念の再構成を目的とするものである.「有効な牽制力ある競争者」概念は,八幡・富士合併事件同意審決以来,実務上重要な問題であるとされながら,型どおりの批判が多く,理論的な分析が本格的になされることはあまりなかったように思われる.そこで,本稿は,「有効な牽制力ある競争者」概念について,立法史,判審決,経済理論および比較法という4つの観点から多角的に理論的研究を試みようとする.そもそも,競い合いは一人でできるものではなく,競争者がいてはじめて行われるものである以上,競争者の存在とその行動様式に関する評価は,競争効果分析において本来無視できないはずである.問題は,いかなる基本的考え方の下に,いかなる要件を立てて,どのように評価するか,であると考えられる.本稿は,独禁法の素人が抱くであろうこのような素朴な疑問に立ち返って,「有効な牽制力ある競争者」の概念に関して上記4つの視点から総合的に法学的検討を行うものである.
著者
田中 悟 林 秀弥
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.135-162, 2010-01-27

本稿では, わが国のパテントプールに対して競争政策上問題とされたリーディングケースである「パチンコ機特許プール事件」(平成9年8月6日公正取引委員会勧告審決)についての法と経済学的接近が行われる. そこでは, この事件に対する公正取引委員会勧告審決が認定した事実そのものに遡って, パテントプールがもたらした競争上の効果についての検討が加えられる. 本パテントプールが形成された歴史的経過とその変遷が吟味された後, パテントプールに集積された特許権をめぐる特許引用関係を用いたネットワーク分析を通じて, これらの特許権の性格が検討される. こうした分析を通じて, パテントプールに集積された特許権がパチンコ機製造にとって必要不可欠なものであり, 公取委審決で問題とされたパテントプールを通じた参入排除が実効性を有していたことが明らかとされる.これらの帰結をベースにして, 本パテントプールに関して行われた審決の独占禁止法および競争政策上の意味についての考察が行われる.
著者
岡田 羊祐 林 秀弥 大橋 弘 岡室 博之 松島 法明 武田 邦宣 中川 晶比兒
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、独禁法違反事件に係る審判決を素材として、日本の判例法的展開を、経済学の一分野である産業組織論の視点から分析・評価したものである。日本では、米国・EUと比較して、独禁法の判例研究が経済分析を刺激するプロセスが十分に機能してこなかった。そのため、経済合理性の視点からみて特異な判断が採用されてきたこともあった。この空隙を埋めるべく、経済学者と法学者が共同して独禁法の審判決の違法性判断基準を理論的・実証的に分析した。その結果、近年、日本の独禁法審判決は、一部の行為類型、特にカルテル・談合、企業合併などの分野において、徐々に経済学的にみて合理的な判断基準が採用されつつあることが明らかとなった。
著者
田中 悟 林 秀弥
出版者
神戸市外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、企業間コーディネーションとしてのM&A行動や戦略的提携行動に対するインセンティブを明らかにした上で、これらの企業行動が経済社会にどのような効果を持つかを経済学・法学の両視点から検証することを目的として行われた。研究はまず、M&Aや戦略的提携行動に対して企業間の垂直的関係がどのような意味を持つかに焦点を当てて行われた。その結果、M&Aや戦略的提携行動に対するインセンティブが垂直的関係下で生じる買い手独占力と上流・下流両市場における市場競争の態様に大きく依存することが明らかとなった。次に、この種の垂直的関係を意識した企業間コーディネーションが流通分野や情報通信分野において多く見られることに着目して、この2分野に焦点を当てた検討を行った。情報通信分野においては、主に法学的視点からの検討が行われた。従来のM&A規制の問題点の精査を行った上で、この分野においては、企業のM&A行動を考慮したときにプラットフォーム規制のあり方が経済社会の成果に大きな影響を及ぼすことが示された。他方、流通分野においては、M&Aや戦略的提携行動が-チェーン展開を通じて-地域的に独立な複数の市場に対して行われるという顕著な特徴を持っている。こうしたときには、買い手独占力を背景としてチェーン企業が享受する投入物価格の低下が、買い手独占力を持たない企業の投入物価格の上昇をもたらす"Waterbed Effect"が生じる。この種の効果は、小売り企業の買い手独占力が水平的位置にあるライバル企業に外部効果を与えることを意味し、極めて大きな競争政策上の含意を持つことになる。そこで、この種の効果を考慮した法と経済分析を行い、買い手独占力をめぐる競争政策の運用に当たっては、買い手独占力が水平的な競争関係にもたらす外部効果をより詳細に検討することが必要となる点を明らかにした。
著者
紙野 健二 市橋 克哉 下山 健二 高田 清恵 高橋 祐介 豊島 明子 大沢 光 山田 健吾 前田 定孝 大河内 美紀 林 秀弥 藤枝 律子 稲葉 一将 岡本 裕樹 宮澤 俊昭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

グローバルな規模で展開再編する市民社会は、少子化、大規模災害や自然環境の破壊が典型的であるように、自らの存続にとっての数多くの脅威に直面して、国家に解決すべき、しかし困難な多くの課題を突きつけている。このような国家と市民社会のそれぞれの運動に対抗するものとして、双方性を有する行為である契約が観念される。それは、国民生活に必要な役務の交換が国家から市場へと転化した結果一方的に提供される役務の「選択」の法制度に対して、またこのような法制度に対する多数の国民意思を正確に反映できなくなっている民主主義の機能不全に対して、ますます強く観念せざるをえない。このような意義を有する契約が、いかなる行政領域の法を反映して、どのような実体法手続法的な形態となって表現しているのかを論証するべき必要を明らかにしたことが、本研究の成果である。研究成果の一書による公表が、計画されている。