著者
伊藤 毅志 松原 仁 ライエル グリンベルゲン
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.1481-1492, 2004-05-15

人間の問題解決の認知過程については数多くの研究が行われてきた.ゲームやゲーム理論は昔から人間の問題解決行動の研究において重要な役割を果たしてきた.なかでもチェスを題材にした認知科学的研究では,エキスパートのプレーヤは,記憶課題において非常に卓越した認識能力を示した.Simon とChase は,このエキスパートの優れた記憶能力をチャンクという概念を用いて説明した.本論文では,将棋を題材に次の一手問題を様々な棋力の被験者に提示して,指し手を決定するまでの思考過程を発話プロトコルとアイカメラデータとして記録する実験を行った.その結果,将棋の上級者以上のプレーヤでは,単に局面に対する駒の配置に関する知識が形成されるだけでなく,局面をその前後関係からとらえられる知識が獲得されることが分かってきた.また,従来の研究から,チェスの上級者では,必ずしも強くなるにつれて量において多く先読みをしないことが知られていたが,将棋では上級者になるにつれ,深く大量に先読みすることが分かった.これらの結果は,従来のチェスの研究で見られたような「空間的チャンク」だけでなく,時間的な前後関係を含んだ「時間的チャンク」の存在の可能性を示唆している.

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@ametrine628 https://t.co/4ZBBz8XFqs 将棋の認知科学的研究(2)-次の一手実験からの考察 次の一手問題での思考を言語化してもらった研究がありました。よろしければ
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伊藤毅志 and 松原仁, 2004. 将棋の認知科学的研究 (2)-次の一手実験からの考察. 情報処理学会論文誌, 45(5), pp.1481-1492. https://t.co/9Bp9quErYB
この論文に示されているのは発話しながらの思考なので実戦ならもっと速いだろうけど、それにしても人間のNPSって相当小さいなと https://t.co/XzPWhogwrt https://t.co/8dWNflDk0n
メモ 将棋の認知科学的研究(2 )-次の一手実験からの考察 https://t.co/LQxwm31ktJ
将棋の「チャンク」の考え方にご興味のある方は 将棋の認知科学的研究(1)-記憶実験からの考察 https://t.co/KIAXx0g0Vc 将棋の認知科学的研究(2)-次の一手実験からの考察 https://t.co/bUyYqjiMvp もご覧ください(オープンアクセス)

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