著者
坂井 弘紀
出版者
和光大学表現学部
雑誌
表現学部紀要 = The bulletin of the Faculty of Representational Studies (ISSN:13463470)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.13-32, 2023-03-17

ロシアの歴史や文化にはテュルクの要素が少なくない。長い歴史の中で、ロシアと中央ユーラシアのテュルクとの関係は密接なものであった。現在のロシアにおいてもそれは同様である。テュルクの人々は古来、豊かな口頭伝承の伝統を発展させてきたが、英雄叙事詩や伝説などの口碑にもロシアは現れる。16 世紀後半にはじまる、ロシアの領土拡張と異民族支配を反映し、テュルクの伝承にはロシアとの戦いが描かれてきた。ロシアの征服の様子や敵ロシアと戦う勇者の姿が歌われてきたのである。「帝国」への第一歩となるカザン征服は英雄叙事詩『チョラ・バトゥル』に描かれ、カザン・ハン国やアストラハン・ハン国、シビル・ハン国を併合する経緯は共通する「罠」によって印象的に伝えられる。プガチョフの反乱をはじめとする反ロシア闘争や第一次世界大戦時の強制徴用についても詩人たちは語ってきた。それらは、中央ユーラシア・テュルクの人々の側から見たロシア史でもある。

言及状況

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[トルコ系民族][ロシア] "ロシアと戦った勇者は多い。今もロシアと戦っている人たちがいる。今後、本稿で取り上げたチョラ・バトゥルやケネサルらが、再び同じ文脈で象徴的なヒーローとして現実世界に蘇ることのないよう望むばかりである。"

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テュルクの伝承の中から見えてくるロシアという視点で書かれた、和光大の坂井先生の論文めっちゃ面白いですね。テュルクとロシアの歴史的関係は現在の情勢を理解する為にももっと知られてほしい 「敵はロシア」── 中央ユーラシア・テュルクの伝承に現れるロシア 坂井弘紀 https://t.co/5sFyhPGT4L
"ロシアと戦った勇者は多い。今もロシアと戦っている人たちがいる。今後、本稿で取り上げたチョラ・バトゥルやケネサルらが、再び同じ文脈で象徴的なヒーローとして現実世界に蘇ることのないよう望むばかりである。" / “和光大学リポジトリ” https://t.co/QonlctHGLD

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