著者
出雲 孝
雑誌
情報学研究 = Studies in Information Science (ISSN:24322172)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-19, 2018-03-31

本稿は、カント『法論』における著作権の概念、とりわけ出版権を巡る議論を概観し、現在検討されている違法アップロードサイトのブロッキングの是非等に、法思想史上の知見を提供する試みである。情報は、有体物とは異なり、一度流出・拡散すると原状回復が非常に困難になるという性質を有する。違法アップロードの削除やブロッキングは、有体物の取戻しと同様に、できる限りの原状回復を目指す手法であるが、ここには情報法を何らかのかたちで物権法と対応させるアナロジーが働いている。しかし、17・18世紀に活躍した近世自然法論者のクリスティアン・トマジウス(1655-1728年)および彼の私法論から影響を受けた哲学者のイマニュエル・カント(1724-1804年)は、情報等の有体的コントロールが効かないものについては、金銭的解決を行う方が適切であると考えていた。本稿では、この洞察が法学的・哲学的にどのような裏付けを有していたのかを解明し、情報法の客体が情報そのものではなく、情報を巡る当事者の利害であることを明らかにする。

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[Immanuel Kant][著作権]

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“カント『法論』における著作権の萌芽:「出版権(Verlagsrecht)」を巡る議論を中心に - 朝日大学機関リポジトリ” https://t.co/yYms9NcaQf

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