著者
張 帆
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.113-130, 2021-10-29

近年、学界では「グローバル国際政治学」(Global IR)に関する議論が高まり、日本の国際政治学の再考は重要な課題となった。とりわけ、高坂正堯、永井陽之助ら「現実主義者」の国際政治思想は大きく注目され、いわゆる「日本的現実主義」に関する研究が進んできた。しかし、既存の研究の多くが冷戦前期に焦点を当てるため、冷戦後期の日本的現実主義の展開は十分検討されていない。他方、同時期の安全保障・防衛政策に関する研究において「防衛計画の大綱」や総合安全保障戦略、防衛費「GNP 1%枠」の撤廃に対する「現実主義者」の関与がしばしば言及されるが、日本的現実主義の動向が議論の中心ではない。 以上を踏まえ、本稿では冷戦後期の日本的現実主義の展開を考察対象とする。同時期の日本的現実主義に関する重要な手がかりとされた「モチヅキ=永井説」は、「政治的リアリスト」対「軍事的リアリスト」という日本的現実主義の内部対立を示唆した。しかし、同説が必ずしも当時の日本的現実主義の全体像を示したわけではなく、その妥当性について議論の余地がある。これに対して、本稿では冷戦後期の防衛論争を顧みながら、同時期の日本的現実主義を再検討することを試みる。 本稿の構成は以下の通りである。第一節では、冷戦前期の日本的現実主義の展開を概観しながら、いわゆる「政治的リアリスト」の主張が七〇年代に体系化され、日本の安全保障・防衛政策と一体化する過程を分析する。第二節では、高坂、永井、猪木正道、岡崎久彦、中川八洋、佐藤誠三郎らの議論を中心に、冷戦後期の防衛論争を詳細に検討する。第三節では、防衛論争における主な争点をまとめ、「モチヅキ=永井説」の問題点を指摘したうえで、冷戦後期の日本的現実主義が「総合安全保障論」対「伝統的安全保障論」を軸に変容したことを解明する。

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ぱっと見では、80年代の日本の「現実主義者」による防衛論争がまとめられていて、良い感じです。 これからよく読むつもりです 国際日本文化研究センター学術リポジトリ-日文研オープンアクセス https://t.co/igeURulSwE

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