著者
原田 理恵 田口 靖希 浦島 浩司 佐藤 三佳子 大森 丘 森松 文毅
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.73-78, 2002-04-10
被引用文献数
7 16

トリ胸肉より, ヒスチジン含有ジペプチドであるアンセリン・カルノシンを豊富に含むチキンエキスを調製し, マウスに投与した場合の体内動態および運動能力への影響について検討した。チキンエキスをマウスに経口投与すると, アンセリン・カルノシンは分解されずにジペプチドのまま吸収されて血流に乗り, その血中濃度は投与約30分後に最大に達した。また, チキンエキスを10% (固形分換算) 配合した飼料を継続投与することにより, 大腿四頭筋内にアンセリン・カルノシンの有意な濃度増加がみられた。このチキンエキスを投与したマウスは, 投与開始6日目以降, 速い水流 (10L/min) のあるプールにおける疲労困憊までの遊泳持久時間が対照群に比べて有意に向上していた。この持久運動能力向上効果の一因として, チキンエキスの経口摂取により, 生体緩衝能力をもつアンセリン・カルノシンが血流を介して骨格筋内に蓄積されることによって, 骨格筋内の緩衝能が高まったことが推察された。
著者
坂井 堅太郎 小川 路恵 高嶋 治子 水沼 俊美 真鍋 祐之
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.147-152, 1997-04-10
被引用文献数
1 1

加熱殺菌方法の異なる3種類の市販牛乳 (低温殺菌, 高温短時間殺菌および超高温殺菌牛乳) に含まれるタンパク質成分のペプシンに対する消化性を, SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法と, 牛カゼイン, 牛α-ラクトアルブミンおよび牛β-ラクトグロブリンに対する特異抗体を用いたウエスタンブロット法により検討した。カゼインは牛乳の加熱殺菌方法の違いに拘らず, ペプシンにより速やかに分解された。低温殺菌および高温短時間殺菌牛乳中のα-ラクトアルブミンはペプシン消化に対して抵抗性が認められた。超高温殺菌牛乳では, α-ラクトアルブミンのペプシン消化に対する抵抗性はやや減少したものの, 十分に維持されていた。低温殺菌と高温短時間殺菌牛乳中のβ-ラクトグロブリンは, α-ラクトアルブミンと同様に, ペプシン消化に対して抵抗性を示したが, 超高温殺菌牛乳では, ペプシン消化に対する抵抗性はほとんど消失し, カゼインでみられるペプシン消化のパターンに類似していた。ラットに低温殺菌または超高温殺菌牛乳を強制的に経口投与し, 胃内容物中のβ-ラクトグロブリンの消化を調べたところ, 超高温殺菌牛乳投与ラットの消化度は低温殺菌牛乳投与ラットに比べて明らかに高かった。これらの結果から, 市販牛乳中の各タンパク質成分のペプシンに対する消化パターンは異なることが示された。また, 超高温殺菌処理によって, β-ラクトグロブリンのペプシン消化に対する抵抗性が著しく消失することから, 超高温殺菌牛乳はβ-ラクトグロブリンのアレルゲン性が緩和された牛乳としての有用性が示唆された。