著者
大村 節子 門司 和彦 竹本 泰一郎
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.349-356, 1994-10-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
18
被引用文献数
3 1

慢性便秘患者を対象にDF摂取状況およびDF摂取に影響を与える要因について, 食事形態を1. 主食・主菜・副菜の料理の組合せ, 2. 欠食, 3. 外食, 4. 間食, 5. 摂取時間の五つに分類検討し, 以下の結果を得た。1) 栄養素等摂取量は栄養所要量に対して不足の傾向にあり, とくにDFはその傾向が顕著であった。2) 食品総摂取重量は低く, 個人における食品総摂取重量とDF摂取量との間には強い相関が認められた (γ=0.797, ρ<0.001)。3) 食事形態別摂取量は「完全食」群が栄養素等摂取量, 充足率, 食品群別摂取量, 食品群別DF摂取量において他の食事形態と比べ顕著に優良な結果が認められた。4) DF摂取量と五つの食事形態との問は「料理の組合せ」がもっとも高い寄与率を示し, DF摂取量と食物摂取量および五つの食事形態との間では, 「食物摂取量」次いで「料理の組合せ」が高い寄与率を示した。
著者
佐藤 駿 永田 龍次 福間 直希 島田 謙一郎 田宮 大雅 中山 保典 韓 圭鎬 福島 道広
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.81-91, 2020 (Released:2020-06-18)
参考文献数
38
被引用文献数
1

大麦品種BARLEYmax (BM) は一般品種の大麦より食物繊維やレジスタントスターチを豊富に含む。本研究では一般大麦品種であるハインドマーシュならびに対照区であるセルロースと比較してBMのin vitroにおける腸内発酵特性を検討した。実験1では2種の大麦を同等に使用し, 実験2ではBMに難消化性画分が多く含まれることを考慮して検討した。大麦試料を消化酵素により加水分解してその残渣物をin vitro培養槽に供試し, 48時間の培養試験を行った。実験1において, BM添加区はハインドマーシュ添加区より培養後期での高い短鎖脂肪酸産生を示した。実験2ではそれに加えて, BM添加区は培養期間を通して短鎖脂肪酸産生の増加およびアンモニア態窒素の低下を示した。以上の結果から, BMは短鎖脂肪酸を持続的に産生し, さらにその多量な難消化性成分により, 有効な腸内発酵特性を示す可能性が示唆された。
著者
田中 充樹 津嘉山 泉 山本 登志子 中村 孝文
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.93-101, 2020 (Released:2020-06-18)
参考文献数
40
被引用文献数
2

食品の嚥下しやすさ評価への嚥下音と筋電図の応用性を検討するために, 嚥下のしやすさの異なる食品を嚥下した際の嚥下音信号と筋電図のパワーと発生時間を解析した。食品にはポタージュ, ヨーグルト, プリン, 及びヨーグルトと同程度のとろみに調整したジュースと自然薯粉末溶液を用いた。健康な成人男性13名について, 3 gの試料を一度に嚥下した際の嚥下音信号を小型コンデンサーマイクで甲状軟骨部から, 筋電図を右側顎二腹筋表面から記録した。テクスチャー解析で得た食品のかたさは嚥下しやすさが増すと増加した。嚥下音信号のパワーはかたさの対数と有意に逆相関したが (r = -0.435, p < 0.01) , 発生時間は有意な相関を示さなかった (r = -0.151) 。筋電図については, パワー及び発生時間のかたさの対数についての相関係数はそれぞれ0.261と0.176であり, 有意な相関はみられなかった。かたさは嚥下しやすさに関係することから, 嚥下音信号のパワーはゾル状食品の嚥下しやすさの評価に応用できる可能性の一端が示された。
著者
木村 恵子 西村 弘行 木村 いづみ 岩田 伊平 水谷 純也
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.343-347, 1984-08-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5 4

タマネギを油で炒めると非常に香ばしい風味を生じるが, タマネギをシリコーンオイルで炒めることによっても, よい香りが生じた。そこで, 種々の夾雑物を避けるために, タマネギをシリコーンオイルで炒め, 生じた香気成分をGC-MSによって同定した。そして, 生タマネギの香気成分と比較した。さらに, 炒めたタマネギの香気成分をカラムクロマトグラフィーで分画し, よい香りがどのフラクションに溶出されるかを検討した。1) シリコーンオイルを入れ, 140℃に調節した電気鍋の中に, みじん切りにしたタマネギを加え, 25分間炒めた。急冷後, エーテルを加え, ナイロンゴースで搾った。搾り汁はエーテルを除去し, 4時間水蒸気蒸留して, 炒めたタマネギの香気成分を調製した。収率は, シリコーンオイルの熱分解物も含めて4mg%であった。2) GC-MSから, 炒めたタマネギの主成分は, 2, 4-dimethylthiophene, methyl propyl trisulfide, propylpropenyl trisulfide (cisおよびtrans) であったが, これらの化合物はネギ臭がし, 香ばしい匂いではなかった。3) 生タマネギの香気成分 (エーテル抽出物) では, 2, 3-dimethylthiophene, propyl propenyl disulfide (cisおよびtrans), dipropyl disulfide, dipropyltrisulfideが主成分であった。生タマネギに比べると, 炒めた場合は, より安定なtrisulfide類が増加した。4) 炒めたタマネギの香気成分を, カラムクロマトグラフィーによって分画すると, 単独では香ばしい匂いのするフラクションは見あたらなかった。しかし, いくつかのフラクションを混ぜ合わせると, 香ばしい匂いに近づいた。
著者
村田 卓士 久野 友子 穂積 正俊 玉井 浩 高木 雅博 上脇 達也 伊東 禧男
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.165-171, 1998-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
23
被引用文献数
4 7

卵殻カルシウムを添加したチョコレートおよび卵殻カルシウムを含まないチョコレートをヒトに投与し, 糞便中総脂質, 脂肪酸, カルシウムを測定するとともに, その安全性について検討を行った。1) 卵殻カルシウムを添加したチョコレート摂取群(Ca添加群) は, 卵殻カルシウムを含まないチョコレート摂取群 (コントロール群) に比して糞便中総脂質が有意に高値であった。2) 糞便中カルシウム濃度と糞便中総脂質濃度は, 有意な正の相関関係にあった。3) 脂肪酸分析の結果, Ca添加群は, コントロール群に比してパルミチン酸およびステアリン酸の吸収率が有意に低値であった。4) 試験期間中, 2群間で血清中各種脂質, カルシウム, リン, 脂溶性ビタミンに有意な変動はなかった。5) いずれのチョコレートの摂取期間中も重篤な副作用は認めなかった。以上より, ヒトにおいて卵殻カルシウムはチョコレート中に含まれる脂質の吸収抑制効果を示すことが示唆された。
著者
梶本 五郎 村上 智嘉子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.209-218, 1999-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
49
被引用文献数
10 11

緑茶, 麦茶を含めいわゆる健康茶として市販されている15種について, これらの熱水抽出物量, 抽出物の抗酸化性およびバナバ茶中の抗酸化成分をTLCとHPLCの組み合わせで検索を試みた。1) 熱水抽出量の最も多いものはローズヒップ茶で, ついで, キダチアロエ茶, 麦茶, ギムネマ茶, 緑茶, 甘茶の順であった。抽出量の少ないものは, ハブ茶, バナバ茶, 柿の葉茶であった。2) ランシマット法による油脂の酸化に対する防止効果は, イチョウ茶, ルイボス茶, 緑茶などで高く, ついで, ヨモギ茶, 麦茶, バナバ茶, 甘茶, 柿の葉茶, びわ茶の順であった。一方, キダチァロエ茶, ローズヒップ茶では抗酸化性は認められなかった。3) 緑茶, 麦茶, イチョウ茶, バナバ茶およびびわ茶は, いずれも添加量が増すにしたがい油脂の酸化防止効果は高くなった。しかしながら, 柿の葉茶やびわ茶は0.1%添加濃度以下では防止効果はみられなかった。4) DPPHラジカル消去能は, 緑茶, バナバ茶ともに認められたが, バナバ茶は緑茶に比べてやや弱いものであった。5) 緑茶, バナバ茶にスーパーオキシド消去能が認められた。消去能は緑茶で高く, バナバ茶でやや低い。6) バナバ茶中に没食子酸, ゲンチシン酸, カテコール, レゾルシノールの存在とプロトカテキュ酸, アピゲニン, ルテオリン, シリンガ酸, バニリン酸, t-シナミン酸などの存在が推測された。7) バナバ茶中には没食子酸が最も多く含まれ, ついで, ゲンチシン酸, カテコール, レゾルシノールの順であった。これらのうち, ゲンチシン酸が最も抗酸化活性が高く, ついで, 没食子酸レゾルシノール, カテコールの順で, ルテオリン, ケルセチンにも認められた。
著者
細野 崇
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.9-13, 2020 (Released:2020-02-17)
参考文献数
15

2018年の日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は28.1%であり, 2040年には35.3%になると推計されている。加齢は糖尿病, 運動機能障害, 動脈硬化, 骨粗鬆症, がん, 認知症などの様々な老化関連疾患の危険因子であること, これらの病気は発症までに長い年月がかかることから, 病気の予防法の確立が重要である。これまでに我々は, 食品因子を用いてがんと認知症の予防に関する研究を行ってきた。がん予防に関する研究では, ガーリック香気成分のジアリルトリスルフィドが大腸がん細胞の細胞周期の停止を介して細胞増殖を抑制することや, 肝臓の薬物代謝酵素の活性調節を介して発がん物質などの代謝を促進することを見出してきた。一方, 認知症予防に関する研究では, 加齢に伴って減少する多価不飽和脂肪酸の摂取が, アルツハイマー病モデルマウスの認知機能を改善することを報告した。以上の成績から, 食品因子の利用はがんやアルツハイマー病などの老化関連疾患を予防することが可能であることを示唆しており, 健康寿命の延伸への応用が期待される。
著者
木元 幸一 林 あつみ 草間 正夫 菅原 龍幸 青柳 康夫
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-48, 1994
被引用文献数
1 4

茶碗蒸しを作るときにキノコなどを入れる場合が多いが, そのときにマイタケを入れた場合, 茶碗蒸しが固まらなくなってしまうことにより, マイタケ中に存在するプロテアーゼに着目した。マイタケ中より数種のプロテアーゼを同定し, 卵白の加熱凝固阻止や, 卵白アルブミンの加熱分解への作用を調べ, 酵素的性質も明らかにした。<BR>オボアルブミンは, 卵白中に50%以上を占める加熱凝固に関わるタンパク質である。SDS-電気泳動により, オボアルブミンの分解パターンを調べたところ, 中性域と酸性域でよく分解されることが観察され, 中性プロテアーゼと酸性プロテアーゼの存在が示唆された。マイタケ抽出液のDEAE-セルロースとSephadex-G75によるゲル濾過によりプロテアーゼA, B, Cと酸性プロテアーゼが同定された。プロテアーゼAは分子量約20,000と推定され, すでに橋本らに報告されているメタルプロテアーゼと良く似た性質を示した。プロテアーゼBについては, 分子量がプロテアーゼAのおよそ2倍の約45,000と推定された。この点は, 橋本らが報告したものとは異なっており, 至適pHも7と中性的であったが, やはりメタルプロテアーゼと思われる。プロテアーゼCについては, Bと同じ分子量であったが, 至適pHは6付近であった。酸性プロテアーゼはペプスタチンで阻害される典型的なカルボキシルプロテアーゼで, 分子量は約45,000と推定された。<BR>プロテアーゼA, B, Cは, いずれもオボアルブミンを分解したが, 卵白に対しては単独では凝固阻止は見られなかった。しかし, 三種のプロテアーゼを混合すると, 凝固が妨げられた。以上, マイタケ中に未知の新たなプロテアーゼが存在することを見出し, また, 卵白の加熱凝固阻止作用についてはマイタケ中のプロテアーゼが共同で関わっていることが明らかにされた。
著者
河崎 祐樹 八木(田村) 香奈子 後藤 純平 清水 邦義 大貫 宏一郎
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.109-115, 2017 (Released:2017-06-23)
参考文献数
21
被引用文献数
2

目的: 健常な日本人が黒ニンニク含有サプリメントを摂取することによる肝機能への有効性を検証すること。試験デザイン: プラセボ対照・二重盲検・ランダム化比較試験。方法: 40名をランダムに2群に割付, 黒ニンニクまたはプラセボを12週間, 摂取させた。摂取前, 6週間後, 12週間後に血液検査 (肝機能, 腎機能, 血糖, 脂質) , 身体測定などを行った。結果: 12週間後の変化量において, 肝機能マーカーであるアラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT) は黒ニンニク群のほうが有意に小さい値を示し (p=0.049) , アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST) も黒ニンニク群のほうが小さい傾向を示した (p=0.099) 。結論: 黒ニンニクを12週間摂取することで, 健常日本人に対して肝機能保護作用を示すことが示唆された。本試験はUMINへ登録されている (UMIN000024771) 。
著者
小柳 達男 千葉 茂 鷹觜 テル 及川 桂子 赤沢 典子 常松 澪子 木村 武 小山 寛
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.65-70, 1984-02-10 (Released:2009-11-16)
参考文献数
16

サイアミン, リボフラビン, ビタミンB6, ナイアシン, PA, トコフェロール, カルシウム, 鉄を玄米に含まれる量に似せて強化した新強化米を岩手県農村の高齢者に与え, 血圧, 血色素, 副腎皮質ホルモン代謝物の排泄量, 暗順応能力などに及ぼす影響について調べた。それまでサイアミンだけを強化した米を食べていた人々がこの新強化米を1年間摂取した結果, 1) 最低血圧が81±3から76±3mmHgに低下し, 2) 血色素が13.2±0.2から14.8±0.3g/100mlに増加し, 3) 尿中17-OHコルチコイドが2.4±0.1から1.1±0.1mg/8hrに減少し, 4) 尿中パントテン酸は0.31±0.08が1.11±0.34mg/8hrに増した。これらの変化は従来の強化米に比べ新強化米にとくに多いパントテン酸による効果ではないかと考えられる。とくに血圧を降下させた効果について著者らは, パントテン酸の不足によって低下していた神経組織のアセチルコリン濃度がパントテン酸の供給増加によって改善され, 血圧上昇作用をもつアドレナリン系ホルモンの作用に拮抗したものと考えている。暗順応は新強化米だけでは9か月間の摂取でも暗順応の閾 (いき) 値は8.6±0.8が7.7±1.1mmへとわずかに改善されただけであるが, ビタミンAを補うと著しく改善されて4.5±0,6mm (やや不良) にまで改善された。これは被験者たちは栄養調査ではビタミンAを十分に摂取していることになっているがビタミンAの補給前はその不足があったものと考えられる。
著者
五十嵐 脩 大関 静枝 仁保 喜之 安藤 寛 毛利 佳世 糸川 嘉則
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.145-150, 1984-04-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
9

A new type enriched rice, “Shingen, ” which contains vitamin B1, B2, B6, E, niacin and panthotenic acid as vitamins and calcium and iron as minerals, was developed and sold first in Fukuoka Prefecture in 1981. When it is mixed with polished rice at the ratio of 1: 200, the levels of those vitamins and minerals in mixture become to be the same levels as those of unpolished raw rice.We examined the nutritional effect of this new enriched rice on young female students of 20 years old living in Fukuoka City and its suburb. At first they were inquired into the intake of the enriched rice for the last six months and then divided into two groups: 1) intake group was consisted of students who ate the enriched rice at least twice a day as staple food (n=26). 2) no intake group of the enriched rice (control group) ate white rice at least twice a day (n=35). After one month survey of food intake their blood was taken in the morning following overnight fasting. The blood was analysed for its biochemical status as follows: 1) general characteristics of blood (counts of erythrocyte and leucocyte, level of hemoglobin, hematocrit, MCV, MCH and MCHC etc.), 2) vitamin B1level, 3) TPP effect in blood and transketolase activity in erythrocyte, 4) α-tocopherol and triglyceride levels in serum. Also, during this survey, we calculated the daily nutrients intakes of subjects on typical three days.The intake of nutrients of two groups was not different significantly except for vitamin B1 and C of which intakes were higher in intake group than control, but vitamin E intake was not calculated. Blood characteristics were normal in both groups. Vitamin B1 level in blood and transketolase activity in erythrocyte of intake group was significantly higher than that of control group (Figs. 3 a and 4). Similarly, in control group TPP effect was higher than that in intake group showing lower B1level in erythrocyte of contol group. The subjects to be marginal vitamin B1 deficiency was found in high frequency in control group (the number of subjects; less than 30ng/ml were 9, 30-40ng/ml 10, 40-50ng/ml 7 subjects), comparing to two subjects in intake group, whose erythrocyte showed less TPP effect, suggesting no marginal deficiency. From these results it is suggested that vitamin B1 intake should be kept higher level in diet for example by the intake of enriched rice.α-Tocopherol level in serum was not significantly different between both groups. But in control group three subjects showed low α-tocopherol level of less than 5.00μg/ml. Also, F distribution ratio was different significantly in both groups for serum α-tocopherol. This shows thatnew enriched rice intake minimizes the individual variation of serum α-tocopherol level. Triglyceride level in serum was not different in both groups.
著者
木下 かほり 佐竹 昭介 松井 康素 荒井 秀典
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.221-229, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
38
被引用文献数
1

フレイル高齢者でエネルギー摂取とは独立して偏りやすい栄養素を横断的に解析することを目的とした。当院フレイル外来を受診した独歩可能な高齢者270名 (年齢中央値79歳) を対象とし, 中等度以上の認知機能低下やタンパク質制限を要する者は除外した。フレイルはJ-CHS基準で評価した。食事摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票で評価し, 推定エネルギー必要量を摂取したと仮定した栄養素・食品摂取量を算出後, 22の栄養素摂取量が日本人の食事摂取基準の推奨量または目安量を満たすかどうか評価した。フレイル有無において基準を満たしていない者の割合をχ2検定で性別に比較し, 差を認めた栄養素を従属変数, フレイルを独立変数, 年齢, BMIを共変量としたロジスティック回帰分析を性別に行った。その結果, 女性でのみ有意な関連を認め, フレイルの亜鉛摂取基準値未満に対するオッズ比 (95%信頼区間) は2.50 (1.23‐5.06) であった。フレイルな高齢女性では亜鉛の不足に留意した栄養指導が必要である。
著者
立花 宏文
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.205-210, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
32

緑茶の多彩な生理作用 (抗がん作用, 抗アレルギー作用, 血圧降下作用, 脳血管障害予防作用, コレステロール低下作用など) にはエピガロカテキンガレート (EGCG), エピカテキンガレート, エピガロカテキン, エピカテキンなどのカテキン類が関与している。特にEGCGは緑茶に特有な成分であり, 緑茶の生理作用に深く関係していると考えられている。著者らはEGCGの細胞膜受容体として67-kDaラミニンレセプター (67LR) を同定した。また, EGCGの抗がん作用, 抗アレルギー作用, 抗炎症作用などの生理作用は67LR依存的であること, EGCGの67LRを介した生理作用の発現過程 (EGCGセンシング) にMYPT1, eEF1A, PP2A, Akt, eNOS, sGC, PKCδ, 酸性スフィンゴミエリナーゼ, スフィンゴシンキナーゼ1, cGMPといった分子が関与することを明らかにした。一方, 緑茶と併用摂取する食品因子がEGCGセンシングに作用することでEGCGの生理作用に影響を及ぼすことを示した。
著者
谷澤 久之 佐塚 泰之 小松-芹田 明子 滝野 吉雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.283-289, 1983 (Released:2010-02-22)
参考文献数
12
被引用文献数
8 5

米酢は米よりつくる醸造酢の一種であり, 単なる食用酢としてではなく, 東洋では民間薬として健康維持に役立ってきた歴史を持っている。著者らは, マウスを用い急性毒性と脂質代謝に及ぼす影響を検討した。その結果, 1) マウスでの急性毒性は21.5ml/kg (p. o.) でその死因は含有する酢酸による上部消化管に対する障害作用に基づくことが認められた。2) 通常食および高コレステロール食で飼育したマウスの血清コレステロール値を米酢は 2.5ml/kg (p. o.) 以上で低下させた。また, 4%酢酸水溶液でも, ほぼ同様の効果が認められた。3) 抗生物質アドリアマイシソによる心臓中の過酸化脂質 (LPO) 上昇に対し, 米酢は2.5ml/kg (p. o.) で抑制した。また, 正常マウス心臓中のLPOも5ml/kg (p. o.) 以上で低下させた。一方, 4%酢酸水溶液のこれらLPOに対する作用は弱いものだった。
著者
永井 成美 菱川 美由紀 三谷 信 中西 類子 脇坂 しおり 山本 百希奈 池田 雅子 小橋 理代 坂根 直樹 森谷 敏夫
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.263-270, 2010-12-10
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 若年女性の肌状態に栄養, 生理学的要因が関与するかどうかを検討することである。横断的研究として, 肌状態, 生理学的検査, 2日間の食事調査, 精神状態, ライフスタイルに関するデータを皮膚疾患のない54名 (2022歳) の女子学生より得た。肌状態と生理学的検査項目 (体温, エネルギー消費量, 自律神経活動) は非侵襲的手法により測定した。統計解析の結果, 角層細胞面積とエネルギー代謝, 角層水分量とビタミンA・B<sub>1</sub>摂取量, 交感神経活動指標に関連が認められた。バリア機能の指標である経皮水分蒸散量と炭水化物, ビタミンB<sub>1</sub>, 野菜摂取量にも関連が認められた。また, 肌状態はメンタルな面や自宅での冷暖房使用とも関連していた。以上の結果から, 若年女性の肌状態には栄養的な因子とともに活発な代謝と自律神経活動が関与することが示唆された。
著者
中岡 加奈絵 田辺 里枝子 奥 裕乃 山田 麻子 野田 聖子 星野 亜由美 祓川 摩有 五関‐曽根 正江
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.57-63, 2016 (Released:2016-04-15)
参考文献数
37
被引用文献数
3 6

高脂肪食におけるビタミンD制限によるアルカリホスファターゼ (ALP) 活性への影響について検討した。11週齢SD系雄ラットをコントロール食 (C) 群, ビタミンD制限食 (DR) 群, 高脂肪食 (F) 群, 高脂肪食でビタミンDを制限した食餌を与えた (FDR) 群の計4群に分けた。実験食開始28日後に, 大腿骨のALP活性は, DR群がC群と比べて有意に低値を示し, FDR群もF群と比べて有意に低値を示した。また, 十二指腸のALP活性においては, FDR群がF群と比べて有意に低値を示した。小腸ALPは, 腸内細菌由来のリポ多糖 (LPS) などを脱リン酸化して解毒していることが示唆されており, 高脂肪食摂取時におけるビタミンD制限が小腸ALP活性を低下させることにより, 腸内ホメオスタシスに影響を及ぼしている可能性が考えられた。
著者
西村 直道
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.11-19, 2008 (Released:2008-12-19)
参考文献数
35
被引用文献数
2 2

高コレステロール血症を引き金とする動脈硬化症や心臓疾患が増加し,食品成分によるコレステロール代謝の正常化が重要視されている。著者は食物繊維およびタウリンによる血漿コレステロール濃度の低下機構を,それらの消化管内における作用に着目して調べた。その結果,発酵性の高い甜菜食物繊維(BF)で血漿コレステロール濃度低下作用が強く誘導されることを見出した。また,BFの作用発現に大腸の存在が必須で,大腸発酵が関与していることを明らかにした。有効な発酵産物の特定には至っていないが,発酵亢進だけでなく,糞中胆汁酸排泄の増加が同時に誘導されることが作用発現に重要であることを示唆した。タウリンの血漿コレステロール濃度低下作用には糞中胆汁酸排泄の増加が強く寄与していることを明確にした。この糞中胆汁酸排泄の増加がコレステロール7α-水酸化酵素の発現亢進ではなく,おもに回腸末端からの胆汁酸の吸収抑制に起因することを強く示唆した。以上より,血漿コレステロール濃度の低下が,食物繊維では消化管下部における発酵性に,タウリンでは回腸末端以降における胆汁酸吸収の抑制に起因することを示した。
著者
餅 康樹 角田 伸代 柴 祥子 村木 悦子 加園 恵三
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.69-77, 2010-04-10
参考文献数
27
被引用文献数
2

魚油のウェイトリバウンドに及ぼす影響について検討を行った。KK-<I>A<sup>y</sup></I>マウスを用い, 増量期・減量期・リバウンド期を再現した。脂質源として牛脂 (B食) または魚油 (F食) を含有した2種の高脂肪食を作成した。増量期はすべてB食を与え, B食で減量しB食でリバウンドした群をB-B群, 同様にB-F群, F-B群, F-F群およびB食をアドリブにて全期間摂取させた群 (Control群) を設けた。リバウンド後の体重は, B-B, F-B群に比べ, B-F, F-F群でそれぞれ減少した。肝臓重量および肝臓中脂質量は, Control群と比べ, B-B, F-B群では増加したが, B-F, F-F群では減少した。またB-B, F-B群と比べ, B-F, F-F群では肝臓のSREBP-1c, FAS mRNA量が低下し, PPAR-&alpha;, HSL mRNA量およびMTPタンパク質量が増加した。以上より, リバウンド期の魚油摂取は, 体重増加と肝臓への脂肪蓄積を抑制することが示唆された。肝臓での脂肪蓄積抑制の機序として, 肝臓での脂肪酸合成の抑制, 脂肪分解や脂肪酸酸化の亢進および肝臓からのリポタンパク質分泌の正常化が関与すると推察された。