著者
野村 誠 中島 泰子 阿部 裕
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.21-25, 1992-02-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
11
被引用文献数
4 17

難消化性デキストリンを実験動物ならびに高脂血症を伴った非インスリン依存型糖尿病患者にて長期間にわたり投与し, 血中脂質ならびに糖代謝に及ぼす影響について検討した。SD系ラットにおいては9週間にわたり5%の濃度で飼料中に混合し, 一方, 高脂血症症例においては各食事ごとに20gを内服し (1日量60g), それぞれ9週ならびに12週にわたり血中脂質ならびに空腹時血糖値の変動を追跡した。その結果, SD系ラットにおいては食物繊維投与後, 空腹時血糖値, 血中コレステロールならびに中性脂肪レベルの有意な低下を認めた。同時に非インスリン依存型糖尿病症例においても血中コレステロール値と空腹時血糖値の著明な低下を認めた。
著者
谷 由美子 水野 さやか 住岡 美由貴 古市 幸生 大島 芳文 伏見 宗士 垣沼 淳司
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.255-263, 2006-10-10
被引用文献数
1

ラットを用いて, コレステロール添加高脂肪食を飼料として与えた対照群, 対照群の飼料の53% (w/w) を納豆の凍結乾燥品で置換して組成を対照群の飼料とそろえた納豆群, およびおのおのにサーファクチン0.3%を添加した飼料を与えたサーファクチン群, サーファクチン・納豆群の3試験群, 計4群について脂質代謝を調べ, サーファクチン含量の高い納豆開発の可能性を検討した。その結果, 1) 血清総コレステロール, 動脈硬化指数, トリグリセリドとも三つの試験群で有意に低下または低下の傾向がみられ, 総コレステロールではサーファクチンと納豆の相乗効果が認められた。2) 肝臓の総脂質はサーファクチン・納豆群で, コンステロールはサーファクチン群とサーファクチン・納豆群で, トリグリセリドはいずれの試験群でも低値を示した。3) 糞中コレステロール排泄率はサーファクチン・納豆群で, 胆汁酸排泄量はすべての試験群で増加し, 肝臓の脂肪酸合成系は納豆群とサーファクチン・納豆群で低下した。以上の結果から, コレステロール添加高脂肪食飼育ラットにおいて, サーファクチンと納豆が, 血清総コレステロール, 肝臓トリグリセリドの低下および糞中コレステロール排泄率の増加に相乗作用を示すことがわかった。
著者
新井 千加子 宮田 学 吉實 知代 小出 一広 溝手 晶子 新井 紀恵 花谷 利春 新井 成之 福田 惠温
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.17-24, 2013 (Released:2013-02-22)
参考文献数
28
被引用文献数
4

高脂肪食負荷マウスに2.5%トレハロース(Tre)飲水を8週間行うと他の糖質[グルコース(Glc),マルトース(Mal), 異性化糖(HFCS), フラクトース(Fru)]に比べ,有意な腸間膜脂肪細胞の肥大化抑制,インスリン抵抗性改善が認められたため,今回はランゲルハンス氏島(ラ氏島)への作用を調べた。同試験マウスのラ氏島,α細胞領域,β細胞領域の平均面積を免疫染色を用いて形態計測した。Treは水,Mal,Fruに比べ,有意にラ氏島肥大を抑制した。また,Treは,他の糖質や水投与群に比べて有意にα細胞領域の増加を抑制した。糖質の飲水15週後の糖負荷試験では糖負荷30分後の血中グルカゴン値がMal群に比べ,Tre群で有意に低かった。これらの結果からトレハロースはラ氏島の代償性肥大やα細胞増加による過剰なグルカゴン分泌を抑制するため,メタボリックシンドロームにおいてラ氏島を保護する優れた食品となる可能性が示唆された。
著者
千葉 剛 佐藤 陽子 鈴木 祥菜 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.147-155, 2015 (Released:2015-08-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1 5

以前に実施した調査において, 特定保健用食品 (特保) を治療目的で用い, 服用している医薬品と同様の保健機能を謳った特保の利用者がいることが示された。本調査では特保と医薬品との併用の実態を明らかとするためアンケート調査を行った。特保を疾病治療目的に利用している人の割合は利用者の年代が上がるにつれて増え, また, 受診なしに比較し受診あり (通院中・入院中) で有意に高かった。また, 医薬品を併用し, 中には服用医薬品と同じ用途で特保を利用しているにもかかわらず, 医師・薬剤師に相談している利用者は, 14.6%と低かった。この時, 特保と医薬品の併用者において体調不良 (下痢・便秘等) を感じている人は10.3%であった。多くの特保製品は通常の食品形態をしていることから, 適切に使用していれば医薬品と相互作用を起こす可能性は低いと思われるが, 医薬品を服用している際には, 医師・薬剤師に相談することが好ましいと考えられる。
著者
中埜 拓 島谷 雅治 村上 雄二 佐藤 則文 井戸田 正
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.195-201, 1994-06-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
13
被引用文献数
5 9

WPPの消化吸収性について, 消化酵素を用いた人工消化試験ラットを用いた消化性および腸管から血中へのアミノ酸移行速度等を素材であるWPCと比較した。ペプシン・パンクレアチン連続処理では, 両者ともほぼ同様な分子量分布に分解された。しかし, ペプシンまたはパンクレアチンのどちらか一方の酵素で処理した場合には, WPCは高分子画分の分解が不完全であった。胃ゾンデを用いたラットによる消化吸収試験では, WPP群は, 投与7分後で胃内容物が大きく減少し, これに対応して血漿遊離アミノ酸濃度も有意に上昇した。一方, WPC群の血漿遊離アミノ酸濃度は30分後にピークが現れた。このため, WPPは生体内での消化吸収性が優れていると考えられた。また, WPP投与時の血漿遊離アミノ酸濃度は, 投与後7分以降急激に減少することから, 吸収された遊離アミノ酸は血液から各組織へ速やかに移行し, 組織で利用されていると考えられた。
著者
平田 昌弘
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.291-293, 2002-10-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
8

家畜の乳利用を発見することにより一つの生業形態である牧畜が成立し, ユーラシア大陸全体に広まっていった。本稿では, ユーラシア大陸の乾燥地帯における乳文化圏を乳加工体系の視座から類型分類することを試みる。約50の民族の乳加工体系の事例研究の結果, 次の仮説が導きだせる。それは, 搾乳・乳利用は西南アジアに起原する。そして, 乳加工が未だ乳を酸乳にする, それを乾燥保存させるという段階で周辺に伝播してゆく。その後, 乳加工体系は大きく二つの地域, つまり, 北緯約40°, 年間平均気温約15℃を境に, 北方域と南方域とでは別々に乳加工体系が発達する。北方域の乳文化圏では, クリーム分離, 凝固剤として酸乳を用い, 乳酒つくりが発達する。一方, 南方域の乳文化圏では, 酸乳のチャーニングによる乳脂肪分の抽出, 凝固剤としてレンネットを用いる乳加工が発達したことが示唆される。以上が, ユーラシア大陸の乳加工体系を類型分類し, 類推され得る乳文化圏二元論である。
著者
中村 強 林 直樹 吉原 大二 柳井 稔 川西 悟生
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.377-383, 1991
被引用文献数
1 1

従来, 消化吸収障害モデルとして使用されてきた膵管結紮ラットは, 比較的短期の飼育でも膵臓が萎縮することが知られている。そこで, 本実験では膵機能は正常であるが消化吸収能が障害されたラット (MWラット) を栄養実験に使用することとし, このラットのモデルとしての有用性について検討するとともに, 中鎖脂肪酸トリグリセリド (MCT) を摂取させた場合の栄養状態に及ぼす影響について, サフラワー油 (LCT) を対照として比較検討した。<BR>その結果, LCTを摂取させたMWラットの脂肪および窒素の吸収率は, 健常ラットに比較して有意に低下し, とくに脂肪の吸収障害は顕著であった。また, MWラットは体タンパクの異化も亢進し, また低栄養状態下にあることが認められ, 術後の消化吸収障害モデルとして有用であった。<BR>一方, MWラットにMCTを摂取させた場合, LCTに比較し吸収性が顕著に優れていた。さらに, MCTは体タンパクの異化亢進を緩和させ, 栄養状態を改善させることが認められた。<BR>以上の結果から, 胆汁・膵液が欠損した消化管術後の消化吸収障害下にあっても, MCTは吸収性のみならず栄養学的にも十分な有効性を示し, 脂肪源素材としてきわめて有用であると判断された。
著者
伊藤 智広 伊藤 裕子 樋廻 博重 勝崎 裕隆 今井 邦雄 古市 幸生 小宮 孝志
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.281-287, 2005-10-10
被引用文献数
1 6

これまでに我々は, アズキ熱水抽出物がヒト胃がん細胞にアポトーシス誘導を誘発させることやベンゾピレンにより化学発がんさせたマウスに本抽出物を摂取させることで, がんの増殖を抑制することを報告した。本研究では, さらにこの抽出物を水-メタノール系ODSカラムクロマトグラフィーに供し, その後, アポトーシス誘導物質を分取HPLCにより分離・精製した。アポトーシス誘導物質は質量分析, <sup>1</sup>H-, <sup>13</sup>C-NMRなどから, カテキン-<i>O</i>-7-β-グルコピラノシド (C7G) と同定された。C7Gは培養ヒト胃がんKATO III細胞だけでなく, ヒト白血病細胞HL-60にもアポトーシス誘導を誘発したが, 正常細胞には影響がなかった。このC7GによるDNAの断片化は, <i>N</i>-Acetyl-L-cysteine により抑えられた。以上の結果から, C7Gによるアポトーシス誘導には活性酸素が関与しているのではないかと推測される。
著者
川口 真規子 丸山 剛平 山田 真
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.75-79, 2016

日本国内で流通しているバナナであるキャベンディッシュ種 (CA) , ラカタン種 (LA) およびセニョリータ種 (SE) の成熟果の糖度, 滴定酸度, クエン酸量およびカロテン量を測定した。LAおよびSEの糖度の平均±標準偏差はそれぞれ23.7±1.2, 25.4±0.7 Brix %であり, CA (20.3±1.1 Brix %) に対して有意に高値を示した。滴定酸度およびクエン酸量はCAに対してLAが有意に高値を示した。α-カロテン量はCAが26±8, LAが167±62, SEが108±10 μg/100 gであった。β-カロテン量はCAが26±6, LAが236±53, SEが205±22 μg/100 gであった。α-, β-カロテン共LA, SEはCAに対し有意に高値を示した。LAのα-およびβ-カロテン量は, 4月と6月に低く, 8, 9月に高値を示す傾向が見られたが, 月間における値の違いに有意差は認められなかった。
著者
川口 真規子 丸山 剛平 山田 真
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.75-79, 2016 (Released:2016-04-15)
参考文献数
9

日本国内で流通しているバナナであるキャベンディッシュ種 (CA) , ラカタン種 (LA) およびセニョリータ種 (SE) の成熟果の糖度, 滴定酸度, クエン酸量およびカロテン量を測定した。LAおよびSEの糖度の平均±標準偏差はそれぞれ23.7±1.2, 25.4±0.7 Brix %であり, CA (20.3±1.1 Brix %) に対して有意に高値を示した。滴定酸度およびクエン酸量はCAに対してLAが有意に高値を示した。α-カロテン量はCAが26±8, LAが167±62, SEが108±10 μg/100 gであった。β-カロテン量はCAが26±6, LAが236±53, SEが205±22 μg/100 gであった。α-, β-カロテン共LA, SEはCAに対し有意に高値を示した。LAのα-およびβ-カロテン量は, 4月と6月に低く, 8, 9月に高値を示す傾向が見られたが, 月間における値の違いに有意差は認められなかった。
著者
脊山 洋右
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.321-328, 1999-10-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
35

Cholestanol resembles cholesterol, but its significance has remained unclear because of its low concentration in the body. However, in cerebrotendinous xanthomatosis, a genetic disorder of cholesterol metabolism, deposition of cholestanol produces several pathological conditions such as tendon xanthomas, cerebellar ataxia, pyramidal signs, cataracts and dementia. We have been investigating this disease for 23 years from the viewpoint of biochemical diagnosis. We established a procedure for quantification of cholestanol by HPLC, and also an assay method for sterol 27-hydroxylase. We also found several mutations of the CYP 27 gene in 10 CTX families. Furthermore, we established experimental animals with CTX by feeding then a cholestanol diet, and produced corneal dystrophy and gallstones in mice, and apoptosis of cerebellar neuronal cells from rats. CTX can be treated with chenodeoxycholic acid, which reduces the cholestanol concentration in serum. These findings suggest that cholestanol has a toxic effect. It will be necessary to determine the cholestanol content of food for the treatment of CTX patients and to prevent the clinical manifestations produced by cholestanol administration.
著者
河崎 祐樹 鈴木 直子 和泉 達也
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.157-163, 2015

【目的】本試験は, シスチン・システインペプチド酵母エキス混合物含有サプリメントの12週間摂取が女性の肌に及ぼす影響を検証した。【方法】二重盲検ランダム化比較試験。日本人女性にシスチン・システインペプチド酵母エキス混合物含有サプリメントもしくはプラセボ食品を12週間摂取させ, 4週間ごとに肌環境を評価した。【結果】シスチン・システインペプチド酵母エキス混合物群 (CC群) とプラセボ群を比較した結果, 摂取4週後に赤味評価 (面積Lv3) に有意差が認められ, CC群の方が低い測定値を示した (<i>p</i>=0.021) 。【結論】シスチン・システインペプチド酵母エキス混合物含有サプリメントの摂取は, 摂取4週後に肌の赤みに前向きな影響を与えたといえる。本試験は, 倫理委員会の承認後, 臨床試験登録システムUMIN-CTRに登録し実施した (UMIN000013167) 。
著者
豊田 正武 伊藤 誉志男 一色 賢司 大西 和夫 加藤 丈夫 神蔵 美枝子 白石 美子 原田 行雄 深澤 喜延 横山 剛 米田 孟弘 平山 佳伸 山本 芳子 藤井 正美 慶田 雅洋
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.489-497, 1983 (Released:2009-11-16)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

1) 1982年11月上旬~中旬に, 厚生省の食品添加物1日摂取量調査方式 (マーケットバスケット方式) に従い, 各種食品を, 東京で大手スーパーより, 東京, 大阪で中堅スーパーより, 仙台, 和歌山, 北九州で中小スーパーより, 札幌, 山梨, 長野, 島根で地元小売店より購入し, 1人1日喫食量に相当する試料量を採取し, 8食品群ごとに集め, 各種食品添加物含量を分析し, 1日摂取量を求めた。2) 48品目の各種食品添加物の10機関の平均1日総摂取量は119.8mgであり, 個々の食品添加物の平均1日摂取量は, プロピレングリコール43mg, ソルビン酸36.3mg, 硝酸35.5mg, 安息香酸1.44mg, グリチルリチン酸1.39mg, サッカリンナトリウム0.91mg, プロピオン酸0.60mg, パラオキシ安息香酸エステル類0.23mg, デヒドロ酢酸0.19mg, 合成着色料0.096mg, 亜硫酸0.073mg, BHT0.023mg, 亜硝酸0.018mg, BHA0.001mgであった。3) 各種食品添加物の1日摂取量のADIに対する割合は, 天然由来も含む硝酸以外0~3%の範囲内にあり, 購入先の規模別では, 地元小売店の食品で保存料, 甘味料が多く, 中堅スーパーでは添加物含量が若干低い傾向が見られた。
著者
山路 加津代 長野 正信 丸山 征郎
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.89-93, 2001-04-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1

くろずは鹿児島県に伝わる独特の製法による米酢であり, 健康食品として長期間用いられてきた。本研究においてわれわれはくろずのDPPHラジカル消去活性と, ヒトLDLにおける抗酸化作用について検討した。われわれはくろずがDPPHラジカルを直接消去することを明らかにし, また, 銅イオン惹起LDL酸化反応を濃度依存的に抑制することを明らかにした。これらの結果ば, くろずの摂取が生体内酸化を抑制し, 動脈硬化の発症を抑制しうることを示唆していると考えられる。
著者
梶本 五郎 嘉ノ海 有紀 川上 英之 濱谷 美穂 前田 裕一
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.291-295, 1992 (Released:2010-02-22)
参考文献数
10
被引用文献数
4 6

油脂中のトコフェロール (Toc) の熱分解および油脂の熱酸化に及ぼす各種の抗酸化剤の作用, ならびにアスコルビルパルミテート (As. P) との併用による効果について検討した。1) 使用した抗酸化剤の内では, TBHQが最も油脂中のTocの熱分解を防止し, ついで, セサモール, オイゲノールの順で, ケルセチンおよびBHAは効果少なく, フラボンやβ-カロチンは防止効果が認められなかった。2) TBHQは添加量を増すにしたがい, Tocの熱分解防止効果は高められた。3) Tocの熱分解防止効果の高いTBHQやセサモールは, 油脂の熱酸化も抑制したが, β-カロチンおよびフラボン添加では油脂の熱酸化を促進した。4) BHA, セサモールおよびケルセチンのそれぞれの単独添加の場合ょりもAs. Pの併用によりTocの熱分解防止効果は高められた。5) Tocの熱分解防止効果のないフラボンでは, As. Pとの併用によりTocの熱分解防止効果が現れた。一方, β-カロチンにはAs. Pの併用による効果は認められなかった。
著者
梶本 五郎 嘉ノ海 有紀 川上 英之 濱谷 美穂 前田 裕一
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.291-295, 1992
被引用文献数
6

油脂中のトコフェロール (Toc) の熱分解および油脂の熱酸化に及ぼす各種の抗酸化剤の作用, ならびにアスコルビルパルミテート (As. P) との併用による効果について検討した。<BR>1) 使用した抗酸化剤の内では, TBHQが最も油脂中のTocの熱分解を防止し, ついで, セサモール, オイゲノールの順で, ケルセチンおよびBHAは効果少なく, フラボンやβ-カロチンは防止効果が認められなかった。<BR>2) TBHQは添加量を増すにしたがい, Tocの熱分解防止効果は高められた。<BR>3) Tocの熱分解防止効果の高いTBHQやセサモールは, 油脂の熱酸化も抑制したが, β-カロチンおよびフラボン添加では油脂の熱酸化を促進した。<BR>4) BHA, セサモールおよびケルセチンのそれぞれの単独添加の場合ょりもAs. Pの併用によりTocの熱分解防止効果は高められた。<BR>5) Tocの熱分解防止効果のないフラボンでは, As. Pとの併用によりTocの熱分解防止効果が現れた。一方, β-カロチンにはAs. Pの併用による効果は認められなかった。
著者
早渕 仁美 久野 真奈見 松永 泰子 吉池 信男
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.189-198, 2007-08-10
被引用文献数
4 5

女子大生とその両親544人分の食事記録に基づき, 2,877日に摂取された42,508品目の料理を用いてデータベースを整備した。まず, 料理名と使用食品重量, あるいは各料理の栄養価を用いて分析を行った。クラスター分析に使用する栄養価と食品群別重量を絞り込み, タンパク質・脂質・炭水化物と野菜・果物・飲用乳重量を変数として用い, 料理を11パターンに分類した。大きく三つの異なるグループ, 「複合的料理群」と「単独料理群」, その他が存在した。「複合的料理群」は, カレーライスのような「複合主食型」 (<i>n</i>=1,364), すき焼きのような「複合主菜型」 (<i>n</i>=448), おでんのような「複合副菜型」 (<i>n</i>=695) の三つに分類された。「単独料理群」は, 炭水化物を平均60.0g含む「主食型」 (<i>n</i>=5,916), タンパク質を平均20.3g含む「主菜型」 (<i>n</i>=1,789), 野菜重量が平均70gの「副菜型」 (<i>n</i>=4,226), 飲用乳重量が平均187gの「牛乳・乳製品型」 (<i>n</i>=1,362), 果物重量が平均100g (<i>n</i>=1,582) と230g (<i>n</i>=343) の「果物型」の六つに分類された。なお, 料理の過半数はこれら九つには分類されず, 弁当や小鉢で供されるような「小主菜型」 (<i>n</i>=5,865) と, 「飲物・小食物型」 (<i>n</i>=18,918) に分類された。これら11の料理型は, 含まれる食品の種類や栄養価の点から, 食事評価や栄養教育上重要な特性をもっていると考える。
著者
吉田 企世子 森 敏 長谷川 和久 西沢 直子 熊沢 喜久雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.123-127, 1984-04-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5 4

有機質肥料で肥培された露地トマト (品種サターン) の水分, 還元糖, 有機酸およびビタミンCなどの含有量について無機質肥料で肥培されたものとの比較において検討した。1) 1980年度は, OF区のほうが水分含量が少なく, 還元糖が多く, 糖酸比が10以上であった。また, ビタミンC含量が多かった。2) 1981年度は, OF区は水分が少なく, 有機酸およびビタミンC含量が多かったが, 還元糖はあまり差がみられかった。3) 1982年度は, 3果房は80年度と同じ傾向であったが, 他の果房では傾向が一貫していなかった。4) 果房が上位に進むにつれて, 全体的に水分は減少し, ビタミンCは増加し, 還元糖は増加する傾向がみられた。また有機酸の変動が激しかった。5) IF区は果房から果房への成分変動が大きく, 不安定な動きがみられたが, OF区は比較的安定な動きを示した。
著者
下田 博司 川守 秀輔 河原 有三
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.279-287, 1998-10-10
被引用文献数
11 25

スリランカに自生するニシキギ科の植物サラシア・レティキュラータ (<i>Salacia reticulate</i>) より得た水抽出物 (SRE) の, 食後の過血糖に及ぼす作用を, ラットおよびヒトボランティアで検討した。SREはショ糖, 麦芽糖およびα化デンプン負荷によるラットの血糖値の上昇を用量依存的に抑制した。しかしながら, ブドウ糖や乳糖による血糖上昇に対しては, 抑制作用を示さなかった。ショ糖に対する血糖上昇抑制作用は, 他の麦芽糖やα化デンプンより強く, ショ糖負荷直前の投与で奏効し, 投与量の増加に伴い作用の持続時間も延長した。<br>次に, 各種グルコシダーゼおよびα-アミラーゼに対する阻害活性について検討を行ったところ, SREは酵母およびラット空腸由来のα-グルコシダーゼに対して強い阻害作用を示すとともに, α-アミラーゼに対しても阻害作用を示した。一方, β-グルコシダーゼの活性には影響を及ぼさなかった。SREのラット空腸由来各種α-グルコシダーゼに対する阻害活性の強度は, スクラーゼ=イソマルターゼ>マルターゼの順であった。さらに, 健常人ボランティアにショ糖 (50g) を負荷した耐糖能試験において, SREはショ糖負荷5分前200mgの服用で, 30分後の血糖値を有意に抑制した。<br>以上の結果より, SREはα-グルコシダーゼおよびα-アミラーゼ阻害作用に基づく過血糖抑制作用を有し, ヒトにおいても少量で食後の過血糖を抑制することが明らかとなり, 糖尿病患者の食事療法に応用できる有望な食品素材であると考えられる。
著者
岸本 正実 幣 憲一郎 田中 真理子 和田 啓子 福田 美由紀 姫野 雅子 桑原 晶子 小川 蓉子 木戸 詔子 稲垣 暢也 田中 清
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.253-258, 2009 (Released:2009-10-29)
参考文献数
13
被引用文献数
4

肥満は通常body mass index (BMI) によって判定されるが, 本来肥満は脂肪細胞過多である。そこで本研究では生活習慣病患者166名を対象に, BMIとbioimpedance analysis (BIA) 法による体組成の関係を検討した。BMIは体脂肪量と, 相関係数0.914と強く相関したが, 除脂肪量とは相関係数0.434と中等度にとどまり, BMIと除脂肪量の相関係数は, BMI≧25 kg/m2群ではBMI<25 kg/m2群より低かった。BMIによる肥満 (≧25 kg/m2) と, 体脂肪率による肥満 (男性≧20%, 女性≧30%) の関係は, 後者の判定に対して前者の特異度は高いが, 感度は低く, BMI25 kg/m2以上では, ほぼ確実に体脂肪率による肥満が存在するが, 25 kg/m2未満でもその存在を否定できない。栄養アセスメントにおいて, BMIに加えて体組成評価の併用が必要であり, また感度・特異度などによる解析を考慮すべきである。